2020年06月28日
No.4680 ちょっと一休み その727 『南米の小さな国の経済成長率が世界一!?』

3月14日(土)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で経済成長率が世界一の南米の小さな国について取り上げていたのでご紹介します。

 

ガイアナは本州ほどの面積で人口約80万人、かつてオランダやイギリスの植民地でした。

主な産業は酪農や農業などで、一人当たりGDP(国内総生産)は5000ドル程度と、南米ではボリビアに次いで貧しい国です。

中心部を離れると、電気も水道も通っていない住まいも少なくありません。

ある村の男性の住民は次のようにおっしゃっています。

「今の収入では生きていくのがやっとです。」

「お金はないし、定職もありません。」

 

国民の約半数が貧困層と言われるガイアナ、この国に今“大きな変化”が起きつつあります。

首都、ジョージタウンの中心部に昨年オープンした巨大なバーでは深夜になると羽振りのよい若者や外国人が次々と集まってきます。

飲み物や食べ物の値段は通常の倍以上しますが、お構いなしです。

朝まで客足が絶えることがありません。

 

ガイアナに変化をもたらしたもの、それは5年前に海底を3600m掘り進んだところから見つかった石油です。

昨年からは石油の産出も始まりました。

ここのところ原油価格は下がっていますが、政府は2025年までに日本円で5兆円以上の利益を見込んでいます。

これはガイアナの昨年のGDPを上回る額です。

ガイアナのマーク・パイノ エネルギー相は次のようにおっしゃっています。

「石油とガスによって、我々は経済を多用化出来るでしょう。」

 

首都、ジョージタウンでは、古い建物は壊され、新しい建物に建て替えられています。

町では建設ラッシュが起きています。

大規模なプロジェクトが相次ぎ、土地の価格が高騰、まさにバブルの様相です。

好景気に沸くガイアナに、国外に流出していた人材も戻ってくるようになりました。

弁護士のロデリック・エディンボロさんは、大学卒業後、2年前までは隣国で働いていました。

エディンボロさんは次のようにおっしゃっています。

「(10年前のガイアナには)大学を卒業した多くの人にとって希望通りの給料がもらえる仕事はあまりなく、見つけることがとても難しかったんです。」

 

その後、ガイアナで油田が見つかると、外資系の大手弁護士事務所が進出、エディンボロさんも母国に戻り、この弁護士事務所で働くことになりました。

今住んでいる家は、その時に日本円で約2000万円で購入しました。

エディンボロさんの年収は1500万円余り、食費などは会社側が全て負担し、税金もあまりかからないため、2年後にはローンを全額返済し終える予定です。

内装の豪華なインテリアなどが自慢です。

貴重な木材をふんだんに使い、家具もアメリカから輸入しました。

エディンボロさんは、経済成長に湧く母国に期待を膨らませています。

エディンボロさんは次のようにおっしゃっています。

「有能なガイアナ人の多くが戻ってくるでしょう。」

ガイアナには活躍出来るチャンスがあるからです。

 

南米の小国に突如やってきた石油バブル、その利益を国全体の成長につなげることが出来るのか、ガイアナは大きな節目を迎えています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通してまず思ったのは、どこの国においても油田など天然資源の大規模な発掘場所が新たに見つかると、それだけで国の財政状況が一変し、国民が豊かに暮らせるようになるということです。

ましてやガイアナのような人口80万人ほどの小さな国においては国民一人当たりのGDPは一気に跳ね上がることになります。

このように、特に石油のような天然資源を産出出来るかどうかによって、国の財政状況が大きく変わるというのはある意味で理不尽さを感じます。

ただ、こうした国にも懸念材料はあります。

それは、国の財政が天然資源に大きく依存することによる、国家としての他の産業の発展、そして国民の働く意欲、あるいは生きるうえでの貪欲さの弱まりです。

一方、日本のような資源小国はこうした天然資源に依存出来ないので、様々な技術力やスキルを身に付け、それらを生かすことでしか国を発展させることが出来ないのです。

そして、実際に高度成長期の日本の経済力はアメリカをも凌駕しかねないほどの勢いを持っていました。

しかし、バブル崩壊後の日本にはかつての勢いはなくなっています。

その根本原因は、一度は坂を登りつめ、新たな目的を失ってしまったからだと思います。

ですから、再び国家として国民と共有出来る新たな目的を持てば、新たな発展に向けて勢いを取り戻すことが出来ると思うのです。

いずれにしても、日本には国家としてのこうした潜在能力があるので、そのことについては自信を持っていいと思います。

 

ということで、石油のような天然資源に恵まれていないことが、それを補おうとしていろいろなアイデアや貪欲さを生み出し、それらが経済発展をもたらすという点では何が幸いするか分からないのです。

 

さて、以前No.2412 ちょっと一休み その377 『国民である前に地球の住民である意識が必要な時代』でもお伝えしたように、今回ご紹介したガイアナの例のみならず、アメリカのシェールオイルやシェールガスのような新たな発掘により可採年数が延びるということです。

一方、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の消費は大量のCO2を排出し、地球温暖化につながります。

ですから、ガイアナのような途上国も石油の産出に伴い、生活が豊かになるに従って今後CO2排出量も急激に増加していくと見込まれます。

一方、先進国を中心に“脱化石燃料”を目指して再生可能エネルギーへのシフトが進みつつありますが、トータルで世界各国の“脱化石燃料”が進まなければ地球温暖化はどんどん進んでしまいます。

 

とうことで、南米の小さな国、ガイアナの話から脱線してしまいましたが、人類共通の今後の大きな課題の一つは、“脱化石燃料”、および“脱原発”による“持続可能な社会”の実現を目指し、経済的な面からどの化石燃料や原発よりも低コストの再生可能エネルギーを開発し、それを世界展開することだと思うのです。


 
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