新型コロナウイルスによる様々な影響はまだ収まらない状況ですが、前回は新型コロナウイルスの日本経済への影響についてご紹介しました。
そうした中、2月27日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で今後の日本経済の3つのシナリオについて取り上げていたのでご紹介します。
番組コメンテーターで日本総研 チェアマンエメリタスの高橋 進さんは次のようにおっしゃっています。
「まず1〜3月はほぼ間違いなくマイナス成長だと思います。」
「問題はその後回復するかどうかです。」
「結局、新型コロナウイルス肺炎がいつ収束するかによって、回復するか、それとも悪いまま、どっちかだと思うんですが、私は実は第3のシナリオがあるかなと思っています。」
「それは収束したとしても景気が良くならないというシナリオです。」
「そうなる理由は3つぐらい考えられます。」
「1つは、個人消費が悪くなって、それが戻ってこないと。」
「例えば、今、個人消費が蒸発しちゃっていますけど、良くなったとしても、皆さん2倍買うわけじゃないですよね。」
「だから、個人消費が戻ってこないケースが一つ。」
「それから2つ目が、今企業は新年度で設備投資計画を立てているんですけども、不透明感が強いので、設備投資計画を後ろ倒ししちゃうと。」
「それから3つ目が、中国です。」
「中国がもし収束したとしても、ヒトとモノの動きが戻っても、今、中国の企業は過剰債務なので、これからバタバタと倒産するかもしれないです。」
「そうすると、中国経済が2番底になって、日本の輸出がまた落ちるということなので、こういうシナリオもあるかもしれない。」
「で、どうしたらいいかということですが、私の同僚によると、春闘で賃上げをちゃんとやることだと。」
「だから個人消費のマインドを落とさないためには、賃金が上がること、そうすれば輸出が悪くても内需が持ちますから、そうすると景気後退にならないで済むということなんじゃないかと思いますね。」
「(この環境で賃上げするのは企業にとっても勇気が必要かもしれないが、)それが経済のためになるということですよね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
高橋さんの同僚による春闘の賃上げの勧めですが、新型コロナウイルスの影響で、今後の推移もどうなるか分からないような状況なので、結果にはあまり期待出来ないと思います。
次に4月16日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルスに対する取るべき対応策について取り上げていたのでご紹介します。
番組コメンテーターで経営共創基盤CEOの冨山
和彦さんは次のようにおっしゃっています。
「(新型コロナウイルスにおける緊急事態宣言が全国に拡大されて、経済の影響も増々大きくなっている状況について、)これ経済か感染抑制かって思われがちなんですが、実はこれそんなことはなくて、むしろ早く感染拡大が終わらないと経済的なダメージが長引いて、返って経済が悪化するんですよね。」
「そういう意味で言っちゃうと、ここはもう腹をくくって徹底的にいろんな活動を抑制して、全国的にちゃんとやって早めにV字回復した方がいいです。」
「で、これ企業の再建でも同じで、こういうピンチとか危機の時に一番まずいのはダラダラといっちゃうことが良くないんですよね。」
「そういう意味でいうと、休業なども含めて、思いっきり谷は深く短くつくって、そこからガッとV字回復していくって、これはもう企業再建の原理原則なんで、これは政府も経営もここは腹をくくって、とにかく“谷は深く、短く、狭くつくる”、そういう感じで対応していくというのは正しいと思うんで、今回の(緊急事態宣言を)全国に広げたというのは、私は正しいと思っています。」
「(実際に谷を深く、短くして回復した例はあるのかという問いに対して、)20年前の金融危機の時のりそな銀行がそうですね。」
「確か、2兆円をいっぺんに引き当てて再生しました。」
「10年前の日立なんかも8千億円近い、多分これは事業会社で最大の赤字だったんですけど、これいっぺんにやってガッと回復したので、とにかく“谷は深く、短く、狭く”です。」
「(まずは覚悟を持つことが必要ということかという問いに対して、)はい、腹をくくってやりましょう。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
冨山さんのご指摘は、まさにその通りだと思います。
しかし、国内のバブル崩壊後、あるいはリーマンショック後と新型コロナウイルス問題への対応には異なるところがあります。
それは、前者の問題は大枠では元の状態に回復すれば良かったのですが、後者の問題解決は単に元の状態に回復するというよりも「3密」(密閉・密集・密接)に象徴される“新しい生活様式”に対応したかたちにしなければ根本的な解決にはならないところです。
ですから、資金の大量投入も必要ですが、それだけではなく“新しい生活様式”に対応したビジネスモデルを創造するアイデア力が求められるのです。
最後に4月17日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルスによる『大封鎖』の経済的影響について取り上げていたのでご紹介します。
中国が1−3月期の実質GDP成長率(前年比)がマイナス6.8%と、四半期ベースで統計の公表を開始した1992年以来初のマイナス成長となりました。
ただ、3月の小売売上高や工業生産のマイナス幅は縮小しているため、長期的には成長は続くと中国国家統計局は主張しています。
一方、アメリカでは、経済再開の条件として、新規感染者数が14日間減少していることや医療態勢の確保などを条件に、再開レベルを以下のように3段階に分けました。
こうした中、新型コロナウイルスによる世界経済への影響について、解説キャスターで日本経済新聞
編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「世界経済は今、グレイトロックダウン、大封鎖という局面にあると思うんですね。」
「(下のデータを示しながら、)IMF(国際通貨基金)は、今年と来年の2年間で世界経済がそれまでの予想に比べて960兆円、これは日本とドイツを合わせた金額なんですが、そのぐらい落ち込んでしまう、収縮してしまうという予想を出しているんです。」
「今年がマイナス3%で、来年がプラス5.8%で、一見かなりのリカバー、回復に見えるんですけど、今年の落ち込みの反動に過ぎないと思うんですね。」
「しかも、予想の前提は今年の後半に新型コロナウイルスが収束することなんですけども、仮に封じ込めが失敗すると、今年、来年と2年間マイナス成長が続くという、とんでもないことになってしまうんです。」
「そうすると、失業率も相当上昇します。」
「そういう意味で、今は封じ込めに全力を尽くすべき時と言っていいんじゃないでしょうか。」
2020年 2021年
今年後半に収束 −3.0% +5.8%
封じ込め失敗 −5.8% −1.5%
以上、番組の内容をご紹介してきました。
新型コロナウイルスの経済への今後の影響見通しですが、それを左右する要件について、私の思うところを以下にまとめてみました。
・ワクチン、あるいは治療薬の開発、および世界各国への展開
・一定の集団感染の拡大
・政府によるかつてのニューディール政策に類する政策
・政府による国民、および企業などへの資金的な支援
・企業による“新しい生活様式”に対応したビジネスモデルの確立
こうしてまとめてみると、一定の集団感染の拡大まで待って収束を迎える対応策は期間もコストもかかる最悪の対応策と言えます。
他の要件については、全て同時並行的に進めるべきですが、中でも「企業による“新しい生活様式”に対応したビジネスモデルの確立」はとても重要だと思います。
その理由は、大きく以下の3つです。
・今後の新型ウイルス感染拡大、あるいはパンデミック(世界的な大流行)に際しても影響を最小限に食い止めることが可能
・テレワークなどの普及による生産性の向上
・ワークライフバランスの向上
ということで、企業は新型コロナウイルスにより“新しい生活様式”の時代に変わったという認識を持ち、積極的に新しい時代に対応した、あるいは更にその先を見越した戦略を練り、前向きに取り組むことが求められるのです。
同時に、まだまだ政府による国民や企業への資金的な支援対策が求められるのです。
こうした状況なのですから、政府は、かつてのアメリカでのニューディール政策のように政府主導の財政政策による大胆な需要創造が求められていると思います。
“幸いを転じて福と為す”という言葉がありますが、今は“これからの日本のあるべき姿”、あるいは今抱えている大きな課題に対応する絶好のチャンスだと思うのです。
具体的には以下のような取り組みが思い浮かびます。
・あらゆる分野におけるTX(デジタルトランスフォーメーション こちらを参照)の推進
・電柱の地中化など既存の老朽化した社会インフラの改築・改造への投資
・新型ウイルス対応のワクチンや治療薬の普遍的な短期開発メソッドの開発
なお、新型ウイルスは今後ともいつ発生するか分かりません。
そうした中、最も重要なことは根本的な対応策と言える、新型ウイルス対応のワクチンや治療薬の普遍的な短期開発メソッドの開発です。
とても難しいとは思いますが、AIや最新医療技術などを駆使することによりいずれ可能な時代を迎えることが出来ると期待しております。