2020年06月18日
アイデアよもやま話 No.4672 ”7割経済”に商機あり その2 星野リゾートの前向きな取り組み

5月28日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「”7割経済”に商機あり」をテーマに取り上げていました。

そこで2回にわたってご紹介します。

2回目は星野リゾートの前向きな取り組みについてです。

 

新型コロナウイルスの影響で移動の制約で市場が大幅に縮んだのが観光業です。

星野リゾートは4月と5月の売り上げは昨年に比べて8〜9割減っています。

真っ先に取り組んでいるのは「3密」(密閉・密集・密接)を回避する対策です。

通常であればお迎えから部屋への案内まで一人の従業員が担当しますが、「3密」を防ぐためにエレベーターには一緒に乗りません。

フロアごとに配置された従業員がリレー形式で案内し、4人がかりで部屋まで誘導します。

更に星野リゾートが力を入れているものがあります。

星野 佳路社長は次のようにおっしゃっています。

「まず近場の観光に比率が高まると思っていますし、そこに私たちはアピールしていくことが大事だと思っています。」

「これは私、「マイクロツーリズム」と呼んでいるんですけども、・・・」

 

「マイクロツーリズム」とは、自家用車などで30分から1時間程度で行ける近場の旅行を意味します。

外国人観光客(インバウンド)の客足が完全に戻るには1年半はかかると見ているためです。

星野社長は次のようにおっしゃっています。

「国内にある、日本人による日本国内観光市場、これがどの程度戻ってくるかが本当の勝負どころと思っています。」

 

実は、国内の旅行消費額のうち約80%は日本人による国内旅行が占めています。

ちなみに、昨年の旅行消費額は27.9兆円で、そのうち日本人による国内宿泊・日帰り旅行は21.9兆円(78.5%)、インバウンドは4.8兆円(17.2%)、その他が1.2兆円(4.3%)といいます。(出所:観光庁)

星のや東京でも1泊2食付きで、これまでより格安なプランを用意し、首都圏のお客に訴えます。(2名1室で5万5176円〜)

更に「マイクロツーリズム」を活性化させるため、新しいプロジェクトも進めていました。

5月28日、訪ねて来たのは投資会社、株式会社リサ・パートナーズの社員です。

星野リゾートの金谷 隆行さんは打合せの場で次のようにおっしゃっています。

「お客様から、旅館とかホテルの再生支援など、いろいろなかたちで出来ないかと相談を沢山いただいております。」

リサ・パートナーズの松本 兼助執行役員は次のようにおっしゃっています。

「スピードも求められていると考えておりますので、そういったところでもまず100億円・・・」

 

5月29日、星野リゾートが発表する「ホテル旅館ファンド(仮称)」について、最終段階の打合せです。

夏までに100億円規模の資金を集め、経営難の宿泊施設を支援するファンドを立ち上げます。

経営が厳しくなった地方のホテルや旅館を支援していく考えです。

星野リゾートの星野社長は次のようにおっしゃっています。

「少しでも多くの観光事業者に生き延びてもらって、少しでもコロナ期が終わった後に早く復活し、その地域の観光が経済に再び貢献出来るような体制にしていくためのファンドにしていきたいと考えています。」

 

こうした状況に、番組コメンテーターで立教大学ビジネススクールの田中 道和教授は次のようにおっしゃっています。

「(緊急事態宣言が解除されても全力で企業活動を進めるわけにはいかないということで、“7割経済”という言葉も出て来ている状況について、)“7割経済”だと厳しいですよね。」

「“7割経済”というのは、需要、供給、稼働率、売り上げが7割ということを示唆している言葉だと思うんですけど、これは恐らく2つの意味がありまして、1つは当面の間、どうしても短期的に迫られるということ、それから中長期的にもこれを機会に強靭な企業経営体質に切り替えていくという、そういう2つの意味があるのかなと思っております。」

「(強靭な企業経営体質に切り替えていくために必要なものは何かという問いに対して、)簡単にまとめさせていただいたんですけども、これは“7割経済”のための企業経営ということで、事業構造、収益構造、財務構造、これはやっぱり三位一体でまとめるところだと思うんですけども、事業構造というとこでは単一ではなく多重的、多層的な事業構造に変革していく。」

「収益構造というとこでは、損益分岐点のハードルを下げていく。」

「財務構造というとこでは、自己資本を拡充の財務構造への変革を求めていくということで、リストラというよりはトランスフォーメーションですよね。」

「ですから、具体的に言うと、スタートアップ企業のような企業DNAが非常にスピーディなものに刷新していくと、そういったトランスフォーメーションが大企業にも求められてくるんじゃないかと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して見られる星野リゾートの「3密」(密閉・密集・密接)回避への徹底した対策は他の観光業者や業界においてもとても参考になると思います。

また、私の知り合いの会社では、「3密」対策として、仕事上の移動に際し、公共機関の使用は一切使用禁止としているといいます。

このような状況ですから、他にも同様の対応策を講じている企業は沢山あると思います。

また、先日、神奈川県の黒岩知事も「政府や自治体からのガイドラインにきちんと従っていれば、緊急事態宣言の解除後には、業界に関係なく営業を再開出来る」というようなことをおっしゃっていることが報じられていました。

 

また、インバウンドの客足が完全に戻るには1年半はかかると見られる中、インバウンド依存の割合の多い観光業に携わっている業者は、当面インバウンドに期待しないビジネスモデルを模索する必要に迫られます。

 

そうした中、星野リゾートが目指す、「3密」回避策を徹底したうえでの近場の観光を目指す「マイクロツーリズム」、および経営難の宿泊施設を支援する再生支援ファンドは宿泊業界全体の新型コロナウイルス対策として、とても理に適っていると思います。

 

いずれにして、新型コロナウイルスの影響が続いている今はまだ「3密」回避、あるいは不要不急の外出自粛が求められています。

そうした中、多くの国民には外出出来ない、あるいは満足な買い物が出来ない、旅行が出来ないなどといったストレスが溜まっていると思います。

一方、多くの業界は売り上げ激減で大変な状況に陥っています。

ですから今、あらゆる業界に「3密」回避の徹底対応、およびその上でこれまでにない新たな楽しみ方を消費者に提供することが求められているのです。

こうした有効な対策の実現こそがあらゆる企業の“生き残り戦略”と言えるのではないでしょうか。

更に、こうした“生き残り戦略”による強靭な体質強化は新型コロナウイルスの終息後にも競争力のある企業として力を発揮出来ると期待出来るのです。


 
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