2020年06月10日
アイデアよもやま話 No.4665 中高年会社員の厳しい現実!

3月4日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中高年会社員の厳しい現実について取り上げていたのでご紹介します。 

 

およそ20年前と比較しますと、40代、50代の中高年世代が時代の流れに翻弄されていることが分かってきました。

番組取材で仕事終わりに集まってくれたのは、40歳前後の中年サラリーマン、薬品メーカーや大手電機メーカーに勤める会社員4人です。

「終身雇用」や「希望退職」など、働き方にまつわるワードから気になるものを選んでもらいました。

まずは「年功序列」です。

電機メーカー勤務の男性(38歳)は次のようにおっしゃっています。

「年功序列で年齢の高い人の給料が良くて、仕事の内容が見合っていない。」

「若くてすごく働いている人が安い給料で。」

「で、将来的に上がれば納得するかもしれないですけど、若い方はそれが嫌で辞めてっちゃうとかあるんで。」

 

また通信業勤務の男性(42歳)は次のようにおっしゃっています。

「往々にして意欲がない人が多いというか。」

「で、その人の下にいるせいで意欲がなくなるっていうのが伝染するみたいなイメージが(あります)。」

「いない方がいいって言われますよね。」

「その人が職場にいない方が士気が上がるってあるますよね、いっそのこと。」

 

日本企業特有の「年功序列」、給料に見合った働きが見られないことに不満を感じているようです。

 

更に中年世代が感じている不満は「役職がない」です。

薬品メーカー勤務の男性(46歳)は次のようにおっしゃっています。

「限られた部署の中で、部長、課長、係長とかってあるんですけど、上がつまっているので役職が上がらないと給料も上がらない。」

「で、会社は苦肉の策で“副”とか“代理”とか。」

「で、結局給料も多少しか上がらない。」

 

また機械設計業勤務の男性(46歳)は次のようにおっしゃっています。

「役職はなくて良いと思うくらいなんですよね。」

「あっても名ばかりで、世の中には不必要なものだと思っているんです。」

 

役職に就けない一つの原因となっているのが“バブル世代”の存在です。

バブル世代が大量採用された一方、バブル崩壊後に企業が採用人数を絞ったことで企業の今の高齢化につながっているのです。

会社にいる40代以上の割合は2000年の39%から2018年には49%まで上昇しています。

電機メーカー勤務の男性(38歳)は次のようにおっしゃっています。

「ちょうど僕の年代は、次は課長になるかどうかっていう。」

「で、今はかなり上の世代が大きなピラミッドになってきちゃって、なかなか課長に上がれないっていう状況に。」

 

不満は「終身雇用」にもあります。

薬品メーカー勤務の男性(46歳)は次のようにおっしゃっています。

「若い子は多分これ(終身雇用)は信じてないと思う。」

 

また通信業勤務の男性(42歳)は次のようにおっしゃっています。

「バブル世代の人は終身雇用を信じているから、甘えて向上心がなくなって使えないバブル世代がいっぱい上に出てきちゃって。」

 

また機械設計業勤務の男性(46歳)は次のようにおっしゃっています。

「スポーツ選手と一緒で、年間通じて成績を見てダメな人は落とすっていうような。」

 

また通信業勤務の男性(42歳)は次のようにおっしゃっています。

「子どもが私立学校に行けなくなるかもしれない。」

「ローン返せなくなっちゃうから。」

「で、会社が考えてあげて、ボーナスだけちょっと低くなるだけなんですよ。」

「で、低くなってもローン返せれば良いやって、朝から新聞読んで帰っちゃう。」

 

そして、中高年の会社員が直面しているのが伸びない給料です。

月給を年齢別に示したグラフですが、高い方から10%を上位、全体の平均値を中位、低い方から10%を下位と表示しています。(厚生労働省賃金構造基本統計調査より(大卒男性の場合))

55歳で比較しますと、全体の平均値にあたる中位は、2000年の62万円から2018年では54万円へと大きく減少していて、40代以降の月給年齢が高くなるほど大きく減っているという結果が出ています。

その要因の一つが出世です。

会社員の昇進に関するデータですが、1990年には40代で54%が課長以上に昇進していましたが、2000年には42%に減少しています。

そして2018年には32%にまで落ち込んでいます。(厚生労働省賃金構造基本統計調査より(大卒))

 

役職に就けない中高年世代の増加が日本の労働市場に変化をもたらそうとしています。

東京・神田にあるITベンチャー企業、株式会社サン アスタリスクではITを活用した新たなサービスを行っていて、社員の平均年齢は33歳です。

番組取材の日、企画会議に参加していたのは、昨年大手機械メーカーから転職したAさん(45歳)です。

Aさん、以前の会社では上の世代に人が多く、課長などの役職に就くことは出来ませんでした。

しかし、こちらの会社ではその人脈や経験が買われ、ソフトウェア開発部の副本部長として50人近くの社員をまとめています。

Aさんは次のようにおっしゃっています。

「リスクとかではなくて、まずやってしまおうというスタイルで動いている人たちが多いので、そこはすごく面白くて刺激を受けています。」

 

収入は以前と比べてほぼ変わっていませんが、それでも転職を決意した理由について、次のようにおっしゃっています。

「皆さん、退職した後に「何して良いか分からない」、そうはなりたくないと思いますし、自分でやはり楽しいと思えること、自分がやりたいと思えることを常に取り組めるようにしておきたい。」

「そのためには、もっと自分を成長する機会に置いておかないと駄目だなと。」

 

Aさんのように41歳以上で転職を希望する人が増える中、企業側も即戦力を求めていて、41歳以上の転職紹介件数(大手3社)は、今年度初めて1万人を越える見通しです。

エン・ジャパン ミドルの転職の事業部長、天野 博文さんは次のようにおっしゃっています。

「今、短期間だと大手企業に留まっていた方が良いかもしれない。」

「ただ、今の方ってこれから何十年働くって考えないといけないので、そうすると今目先の収入だけではなく、将来的な収入だとか、これからの仕事のやりがいだとか、そういうことを考えて転職に踏み切るケースは多くなっていますし、これからも増えると思います。」

 

こうした状況について、番組コメンテーターでニッセイ基礎研究所の主任研究員、久我 尚子さんは次のようにおっしゃっています。

「バブル世代の下の40代半ばぐらいから下の世代はそもそも就職氷河期世代ですので、正社員の給与の問題以前に非正規の問題があると思うんですね。」

「35〜45歳男性の非正規雇用者の割合を見ると、(1999年から)グッと上がってきているんですね。(総務省「労働力白書」より)」

「10年前(2011年)は7.5%、20年前(1999年)は2.7%と、今の35〜44歳は(2019年は9.3%、)と3倍以上に膨らんでいるのです。」

で、正規か非正規によって、年収は年齢とともにどんどん差が開いて聞きますので。」

「で、男性の40代ともなると、正規雇用者の方の平均年収は非正規雇用者の方の2倍くらいになっていくんでうね。」

「で、そうなると結婚するのかとか、子どもを持つのかとか、家庭の持ち方にも影響が出てしまうという状況になっています。」

「そこで昨年、政府の骨太の方針では就職氷河期の救済に焦点が当てられたのですが、その背景にはこういった状況があるんです。」

「で、安倍政権で雇用の量は増えているわけですけども、今雇用の質の問題へと移っていると思います。」

「(質の問題はどうすれば解決出来るかという問いに対して、)まずは正規、非正規で同一労働同一賃金の部分をきっちりやっていくことが重要だと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

そもそも働く人たちを取り巻く環境は、終身雇用や年功序列という日本型経営の慣習以外にも以下のようにその時々で様々です。

・人手不足、あるいは人手過剰

・経済成長期、あるいは経済成熟期

・好景気、あるいは不景気

・バブル期、あるいはバブル崩壊

・成長産業と衰退産業の2極化

・国の政策(導入済の非正規雇用促進制度、あるいはベーシックインカム(参照:アイデアよもやま話 No.3401 ”仕事がない世界”がやってくる その3 新たな生活保障制度の必要性!の今後の導入可能性など)

 

現在の企業を取り巻く環境下においては既に以下のような状況が生じてきています。

・急速な技術革新、あるいはICT(情報通信技術)化の時流に伴う、求められるスキルの変化への対応遅れ

・国際経済競争の激化によるコスト削減圧力による従業員の賃金増加抑制、および非正規雇用の促進

・正社員と非正規社員との賃金格差

・スキルや能力により本来支払われるべき成果報酬と実際の年功序列による報酬とのミスマッチの発生

 

では、本来、働く人たちの労働環境はどうあるべきかですが、私の思うところを以下にまとめてみました。

・年齢や社内の在籍年数に関係ない、能力主義による成果報酬

・同一労働同一賃金

・新しい技術取得のための学習機会の確保

・テレワークの拡大(在宅勤務に限らず、どこでも好きな時間に労働可能)

・少子高齢化対策の充実(子ども手当や児童保育など)

・限りなくオープンな労働市場

・定年制の廃止(個人のスキルや能力に応じて、働きたい人は年齢に関係なく働くことが出来る)

・ベーシックインカムの導入による生活保障(参照:アイデアよもやま話 No.3401 ”仕事がない世界”がやってくる その3 新たな生活保障制度の必要性!

 

いずれにしても、より多くの人たちが自分の望む業種で労働環境に十分満足出来て、与えられた業務にまい進出来るようになって欲しいと願います。

同時に、働きたくても働く機会を与えられていない人たちに常にベーシックインカム制度が適用され、より多くの働く機会が与えられる社会であって欲しいと願います。


 
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