2020年06月02日
アイデアよもやま話 No.4658 注目の”K値”で第2波を察知可能!?

前回、不確実性指数から見た新型コロナウイルスについてご紹介しました。

そうした中、5月26日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”K値”という耳慣れない言葉について取り上げていたのでご紹介します。 

 

いつか来るかも知れない新型コロナウイルスの第2波が来た時に素早く察知するのに使えるのではないかと、今ある指標が注目されています。

それが”K値”と呼ばれるものです。

“K値”は、直近1週間の感染者数÷感染者数の累計で、言い換えると1週間ごとの感染者の増加率です。

西村経済再生担当大臣は、会見で”K値”は感染者数の傾向を見る指標になると発言しています。

実際に、この”K値”を使えば感染者数の20日〜1ヵ月先の傾向を予測出来るといいます。

解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「世界の主要国の”K値”を見てみると、一定の法則があることがだんだんわかって来たんですね。

「中国、韓国、ドイツ、アメリカという各国の“K値”は、順調に(新型コロナウイルスが)収束していく時には、直線的に下がっていくんですけども、直線的にゼロになるかというと、そうではなくて、だいたい(K値”が)0.25辺りでカーブを描いて緩やかに収束していくということが分かってきたんです。

「これを使えば、先々どういうふうに推移するかっていうのが一つの目安が分かるというわけなんですね。」

 

実際に確かめてみると、日本全体の4月1日から24日までの”K値”をグラフにし、25日以降の予想をしたグラフに表し、それに実際の”K値”を重ねてみると、見事にほぼ予想値と一致した結果になっていることが分かります。

このように感染者数の先行きをかなりの正確さで予想出来る”K値”、これを考案した大阪大学核物理研究センターの中野 貴志教授は次のようにおっしゃっています。

「(”K値”を思いついたのは)4月の緊急事態宣言が発令された前後です。」

「その頃、アメリカの感染が拡大して収束に向かうところで、アメリカの推移は非常によく直線上に乗っていましたから、これは何か簡単な法則に支配されていると思いました。」

「で、”K値”を見ていると、予想からずれるということで、(再拡大を)検知出来ますので、・・・

 

ということで、中野教授によると、”K値”は先を予測出来るだけではなくて、感染の再拡大、第2波まで検知出来るということなのです。

大阪の3月半ばまでの”K値”は直線的に落ちて来て、23日頃からはカーブに沿って収束していくだろうと予測が立ちます。

しかし、実際には3月20日頃から”K値”は増え始めており、感染の再拡大の可能性があると予感させていたのです。

確かに3月末頃から感染者数は急拡大していました。

つまり”K値”は先々の感染拡大を予想していたということになるのです。

この”K値”のずれを見れば、感染拡大がはっきりと数値として分かる前に第2波が来ていたことに気付けたかもしれないということなのです。

 

では、この”K値”を使うと、今後、感染者数はどうなっていくと予想出来るのか、中野教授は次のようにおっしゃっています。

「例えばドイツは(3月16日からロックダウンを開始し、)5月6日に(ロックダウンを解除し、)規制緩和して、その後(も収束に向かっており、)再拡大の兆候は”K値”を見る限り見えていません。

「(日本では)もう1日続くと、多分日本全体で0人がずっと続く、そういう状態になると思います。」

「そこまでちゃんと持っていければ、感染の再拡大は起こりにくいのではないかと思います。」

 

こうした状況について、山川さんは次のようにおっしゃっています。

「今のところ、ドイツも日本もうまくいっている状況なんですけども、一つだけいうと、ドイツも日本も今のところ閉じたかたち、つまり入国制限を厳しくかけた状態で、閉じた中でうまくいっているわけですね。」

「で、これからいずれの国もそこを経済の再開に合わせて段階的に外国人を受け入れていかなきゃいけない、その時にはまた状況が変わってくるかもしれないので、だからこそ余計にこの”K値”というのはその時のモニタリングに使えるのではないかと見られているわけなんですね。

「(私たちの行動の指標にもなるのではという指摘に対して、)そうですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

新型コロナウイルス関連の報道ニュースをテレビなどで見ていると、感染者数のこれまでの累計がグラフで表示されてきました。

しかし、これらの数字から具体的に今後の感染者数の今後の傾向を正確に予測することは出来ませんでした。

ところが、”K値”をグラフ表示することにより、感染の再拡大、あるいは第2波まで検知出来るようになるのです。

そして、西村経済再生担当大臣は、会見で”K値”は感染者数の傾向を見る指標になると発言しています。

 

ということで、今後政府が新型コロナウイルスの国内感染者数の推移を公開する際には”K値” のグラフ表示による説明を加えていただきたいと思います。

これによって、国民一人ひとりも今後について安心出来たり、逆に注意喚起を促されたりというメリットがあります。

また、各自治体ごとの”K値”も公開することによって、それぞれの自治体住民は自治体という枠内で感染者数の今後の傾向を把握出来るというメリットがあります。

ちなみに、5月28日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で東京都の”K値”(4月1日〜5月28日)について表示していました。

直近3日の”K値”は上昇に転じました。

この曲線の上側に行くと、感染の再拡大が起こる可能性が高まります。

”K値”を考案した大阪大学の中野教授は次のようにおっしゃっています。

「3日連続の上昇は嫌な動きですが、現時点では大騒ぎする段階ではありません。」

 

ということで、東京都に限っていえば、しばらくは特に”K値”の推移への注視が求められそうです。

ただし、一つ考慮点があります。
それは、より正確な感染者数の把握です。
いくら”K値”という優れた考え方であっても、元となるデータである感染者数の精度が悪ければ、正確な予測につながらないからです。
ですから、PCR検査(微量の検体を高感度で検出する手法)をより多くの人たちに受けてもらうことが求められるのです。


 
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