2020年05月29日
アイデアよもやま話 No.4655 働き方改革法施行後も減らない残業!

2月17日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で働き方改革法施行後も減らない残業について取り上げていたのでご紹介します。 

 

残業を月に80時間以上しているという人の数が働き方改革法施行後もそれほど減っていないのです。(出所:総務省の労働力調査)

この背景には、働き方改革が叫ばれる中で、ある世代にしわ寄せが行っているという現状があると言われています。

 

2月14日(金)、終電で帰宅する一人の男性がいました。

社員数百人規模の中堅システム会社に勤務する中間管理職の50代のMさんは、毎日朝9時に出社して夜10時、11時まで仕事をするのが当たり前になっているといいます。

 

政府は昨年4月、改正労働基準法など、いわゆる働き方改革関連法を施行しました。

大企業は、社員の残業を最大6ヵ月の平均で月80時間以内にすることが義務付けられました。

違反した企業には罰金か懲役が科せられます。

社員の残業削減を積極的に進める企業が多い中、中間管理職がそのしわ寄せを受けるケースが増えています。

Mさんは次のようにおっしゃっています。

「働き方改革を推進しろということで、(若い人は)早く帰らせて、私みたいな中間管理職が後の仕上げをするようなかたちになってしまう。」

 

更にシステム業界特有の構造も業務量の増加に拍車をかけているといいます。

「(発注先の)お客様の方は上流工程というか、早く帰ることが推奨され、そちらで出来なかった仕事が下流の下請けに流れてきていて、仕事量は増えている。」

 

働き方改革が進んでいる企業の中間管理職にアンケート調査をしたところ、業務量が増えたという回答が6割以上に上りました。

働き方改革のしわ寄せを受ける中間管理職、若い人たちはどう見ているのでしょうか。

出世に否定的な若者が多くいました。

また、管理職になりたい男性(29歳)は次のようにおっしゃっています。

「下の人間にあまり残業させられないので、ある程度業務を管理職が引き取ることがあったりすることがある。」

「そうなった時に、自分の本来やるべき管理職としての仕事の部分が追いつかない。」

 

それでは、働き方改革はMさんの会社全体にとってはプラスだったのでしょうか。

Mさんは次のようにおっしゃっています。

「残業手当とか、物理的に払うコストは少なくなるという利点はあると思うんですけど、会社全体で見ると、仕事の品質が落ちたりとか、一部の人に高い負荷がかかったりということで、負の部分が多いのかなと。」

「(社内の雰囲気は)すごく暗くなりましたね。」

 

そんな中、管理職の負荷を減らす取り組みを行っている企業があります。

大手コンサルティング会社のアクセンチュア株式会社(東京・港区)では、AIを使った業務効率化のためのシステム「社内コンシェルジュ」を開発し、約2年前から導入しています。

アクセンチュアのマネジング・ディレクター、保科 学世さんは次のようにおっしゃっています。

「アクセンチュアはバーチャル社員が人間の社員をサポートしています。」

 

社内手続きなどの問い合せをサポートするコンシェルジュの役割をするシステムが導入されているのです。

例えば、法務の担当者に話を聴きたい時には、その旨をチャット画面に入力すると、わずか10秒ほどで適切なサイトに誘導してくれます。

また、インフルエンザにかかった部下の休みの取らせ方など、管理職社員が対処すべき様々な社内手続きに関して適切な方法を教えてくれます。

国内にいる1万3000人の社員が使うことが出来るこのシステム、1年間で社内手続きに係わる時間が2万7000時間分も削減されたといいます。

 

アクセンチュアは自社で開発したこのシステムを働き方改革に取り組む他の国内企業にも導入してもらいたい考えです。

保科さんは次のようにおっしゃっています。

「管理職の管理と呼ばれる部分は徹底的に自動化、省力化すべきだと思っています。」

「世の中の働き方改革を後押し出来ればいいなというふうに思います。」

 

番組コメンテーターで東京大学教授の渡辺 安虎さんは次のようにおっしゃっています。

「(働き方改革により中間管理職にしわ寄せがいっている状況は健全ではないという指摘に対して、」そうですね、早稲田大学の先生が「働き方改革は実は男性が重要だ」という話をしていて、どういうことかというと、そもそも働き方改革で想定されていたのは、男性の家事・育児への参加を増やすことが女性の働き易さにつながって、女性の働き易さが女性の労働市場への参加とか、出生率の上昇といったことにつながるのではないかと考えられていたわけですけども、今回のような話が本当だとすると、働き方改革で家事・育児で一番参画が求められている中間管理職の世代、30代、40代の家事・育児の参加が難しくなると、そもそもその先に進んでいかないという状態になりかねない。」

「一方、新型コロナウイルスのことで在達勤務が増えると思うんですけども、これを機会に働き方をもう一回見直すといういい機会になるんじゃないかと思います。」

「(若手社員のスキルが伸びないとすると、日本の将来はダブルでピンチではという指摘に対して、)そうですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

そもそも働き方改革の狙いは、男性の家事・育児への参加を増やすことが女性の働き易さにつながって、女性の労働市場への参加や出生率の上昇につなげるということです。

しかし、番組を通して言えることは、働き方改革法の施行後も、残業を月に80時間以上しているという人の数がそれほど減っていないということです。

そして、その背景には若い世代を中心に一般社員の残業時間の減少の一方で、そのしわ寄せが30代、40代の中間管理職に負荷がかかっていることがあると見られていることです。

こうした状態では、働き方改革が成果をあげているとは言えません。

 

本来であれば、残業削減を進めるために業務プロセス全般を見直し、不要な業務を無くしたり、組織の整理統合を図ったりし、そのうえで新たな業務プロセスを構築し、更に機械化を進めるというような取り組みがなされるべきなのです。

しかし、番組の内容からはこうした取り組みにより働き方改革を進めている企業は多くなさそうです。

そして、渡辺教授の指摘されているように、現状は中間管理職へのしわ寄せにより、中間管理職を疲弊させ、男性の家事・育児への参加を増やすどころか、その逆になってしまい、増々女性の労働市場への参加を遠ざけてしまう動きをもたらしているようです。

 

こうした中、アクセンチュアがAIを使った業務効率化のためのシステム「社内コンシェルジュ」を開発し、それを自社で導入し、更に他社でも利用出来るように市販化するという取り組みは、働き方改革を進めようとしている企業にとっては一つのきっかけになると思います。

また、こうした類の業務プロセス支援ツールは既に沢山市販化されているのです。

 

今は新型コロナウイルス問題で、どの企業も在宅勤務やテレワークを強いられていますが、特に経営者はこうした状況をチャンスと捉えて、業務の見直しやICT(情報通信技術)の活用に取り組むべきだと思います。

今は、まさに“コロナショックをチャンスに変える”絶好の時だと思うのです。

単純に考えても在宅勤務の継続により通勤ラッシュから解放され、通勤時間が不要になり、1日当たり2〜3時間くらいはフリータイムが生まれます。

ですから、男性の家事・育児への参加がし易くなるのです。

 

一方、狭い日本の住環境では自宅で落ち着いて仕事が出来るスペースがないという問題もあると思います。

ですから、こうした問題の解決が求められます。


 
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