2020年05月25日
アイデアよもやま話 No.4651 今話題のマイクロインフルエンサー!

2月11日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で今話題のマイクロインフルエンサーについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

インフルエンサーというと、ツイッターやインスタグラムなどのSNSや動画共用サイトで大勢のフォロワーがいて、人々の消費行動などに大きな影響力を与える人たちのことです。(参照:アイデアよもやま話 No.4567 アリババの「独身の日」セールにみる、現在の商業ビジネス成功のカギ!

そして、マイクロインフルエンサーはフォロワー数は少なくても、消費者にピンポイントで情報を届けられる存在のことで、今大きな注目を集めています。

 

都内にあるレストラン「俺のグリル&ベーカリー 大手町」(東京・千代田区)、生演奏が楽しめるディナータイムは満席の人気ぶりです。

豪快なTボーンステーキ(900g)の価格は3980円(税別)です。

高級な食材を割安な価格で提供する「俺の」グループのステーキレストランです。

このお店に一人の男性がやってきました。

出されたのは、水迫牛(みずさこ牛)のステーキ(250g)、価格は2480円(税別)で、鹿児島県の畜産農家が、日本酒、獺祭(だっさい)の酒粕などで育てた希少なブランド牛です。

ステーキを食べた男性はおもむろにスマホを出し、何かを書き始めました。

実は、「東京肉レポート」というアカウント名で、和牛の情報を発信するインフルエンサーです。

「東京肉レポート」さんは次のようにおっしゃっています。

「メインはインスタグラムを使っていて、自分が行った焼き肉店や美味しいと思った店をアップしている、そんな感じです。」

 

牛肉を食べる回数は年間300回以上、8年ほど前から趣味で情報発信してきました。

今回、水迫牛のフェアを開催する「俺の」グループが牛肉グルメのスペシャリストとしてPRの仕事を依頼したのです。

投稿した記事には、美味しそうな写真とともに、「生産者にフォーカスが当たって欲しい」というコメントも添えられました。

「東京肉レポート」さんは次のようにおっしゃっています。

「ただ食べてるだけじゃなくて、牧場やお店の取り組みも大事だなと思っていますので・・・」

 

記事の後ろには“#PR”の文字を入れることでプライベートの投稿と区別しています。

 

「俺の」グループはなぜインフルエンサーにPRの依頼をしたのでしょうか。

2011年からイタリアンやフレンチを展開してきた「俺の」グループは、立ち食い形式でお客の回転率を高め、高級食材を割安価格で提供するビジネスモデルで成長しました。

現在は、全店着席形式になりましたが、食材の原価率を最大化するポリシーは健在です。

俺の株式会社の山田 真輔常務執行役員は次のようにおっしゃっています。

「ビジネスモデル上、食材に原価をかけているので、少ない金額でより効果の高いPRをやろうと考えた時に、マイクロインフルエンサーさんを起用してのマーケティングは非常に期待が持てるかなと。」

 

これまでのインフルエンサーと比べて、フォロワーの数が数千〜数万人と、それほど多くない一方で、特定のジャンルに強みを持つのがマイクロインフルエンサーなのです。

今回、「俺の」グループと結びつけたのがベンチャー企業、エニ―マインドグループ(東京・港区)です。

企業が訴えかけたい消費者層に対して最も効果のあるマイクロインフルエンサーを紹介するサービスを提供しています。

エニ―マインドグループの藤田翔大さんは次のようにおっしゃっています。

「今までだと芸能人の人たちに来てもらったら、とにかく認知度が上がって流行るというのがあるんですけども、今だと本当にいろんな消費者の方がそれぞれいろんなインフルエンサーさんをフォローして、そこから情報を収集して、実際の購買や旅行先などアクションにつなげていくのがどんどん増えている。」

 

そこで、様々な分野に多数存在するマイクロインフルエンサーを掘り起こし、企業と効率的にマッチング出来る独自のプラットフォームを開発しました。

例えば、グルメに強い人を探す時に、“美食”というキーワードを入れると、そのインフルエンサーを一覧で見ることが可能です。

そして、最大の強みは徹底したデータ分析です。

フォロワーの何人が「いいね」やコメントを入力したかを自動で収集、エンゲージメントと呼ぶ、インフルエンサーとフォロワーとのつながりの強さを数値で表示します。

更に、投稿を見たフォロワーのコメント内容もAIで分析、ポジティブなものが多いのか、ネガティブなものが多いのかを数値化しているのです。

山田さんは次のようにおっしゃっています。

「一人ひとりのインスタグラムのアカウントを見て選ぶよりも効率的に出来るのかなと思いますね。」

 

 

こうしたマイクロインフルエンサーにいち早く注目し、急成長した企業もあります。

5年前に登場した日本初のシャンプーブランド、ボタニスト トウキョウ(東京・渋谷区)は、1本1500円ほどと高価ですが、女性を中心に人気を集め、シェアを高めています。

この会社もエニーマインドで見つけたマイクロインフルエンサーを起用しています。

ボタニストを展開している株式会社I−ne(アイエヌイー) 広報部の梁 悠梨さんは次のようにおっしゃっています。

「10代から20代前半ぐらいを特にターゲットにした商品の時にお願いすることが多いかなと思います。」

 

4年前に会社を設立したエニーマインドグループの十河 宏輔CEOは次のようにおっしゃっています。

「いわゆるカテゴライズされたインフルエンサーがどんどん出てくるんじゃないかなと思っています。」

「具体的にいうと、フードだったらこの人だとか、コスメならこの人だとか、旅行だったらこの人、誰が一番最適なのかというのは、中々マニュアルの作業だと探しにくい。」

 

「個人がどんどん強くなる時代は変わらず続いていくかなと思っていますと。」

「誰もがソーシャルネットを使えば、インフルエンサーになれる時代になってくるのかなと思っています。」

 

インフルエンサー事業は主力の一つで、日本と東南アジアで展開、設立3年目で売り上げは50億円(2019年3月期)を突破しました。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して、あらためて思うのはテクノロジーの進歩、あるいは環境の変化に伴って新たなマーケティング手法が生まれてくるということです。

 

これまでは、マスマーケティング(Mass marketing)という、対象を特定せず、全ての消費者を対象にして、画一化された方法を用いて行うマーケティング手法が主流でした。

そして、これらは大手広告代理店により新聞や週刊誌、あるいはテレビなどの広告媒体を通して行われてきました。

確かにマスマーケティングは主に大手企業による大量生産と大量販売を狙った商品(マスプロダクト)用の手法としては有効ですが、消費者の価値観が多様化したマ−ケットにおいては、特定のニーズに応えきれないという問題があります。

 

一方、テレビショッピングでは特定の売れ筋商品について、視聴者の購買意欲を高めることを狙いとして、芸能人なども起用して、少し時間をかけて、そのメリットをとても分かり易く説明してくれます。

また、インフルエンサーは、マスプロダクトや隙間プロダクトに係わらず、個人の知名度をうまく生かしたマーケティング手法と言えます。

 

一方、今回ご紹介しているマイクロインフルエンサーは、一般的に趣味の延長線上で、例えばお酒や牛肉、あるいはラーメンなど、特定の飲食料品の枠内で、そうした飲食品を扱っている、お勧めの飲食店を含蓄のある表現で紹介しているのです。

ですから、限られた人数ではありますけど、こうした内容に興味を持っている、あるいは趣味としている方々がそのブログを訪れるというわけです。

ですから、特定の少数の人たちではあっても、こうした人たちの購買意欲はとても高いので、マイクロインフルエンサーは結果としてある程度の訪問者を紹介したお店に誘導しているわけです。

 

ちなみに、私の知人で、ヨーロッパのワインにとても詳しい方がいますが、その方は、かつて毎年のように実際にヨーロッパに実情視察に出かけていました。

そして、そうした結果をブログで発信していますから、マイクロインフルエンサーの一人と言えます。

しかし、ビジネスとしての働きかけを何度か受けていますが、なぜかそうした誘いを断り続けているといいます。

 

さて、インターネットというコミュニケーションインフラでビッグデータの宝庫、あるいはAIなどのテクノロジーの進歩により、ネット通販では、消費者による商品の参照履歴や購買履歴をもとに自動的にそうした商品の関連商品をユーザーに紹介するなどといったサービスが既に定着しつつあります。

一方で、インフルエンサー、あるいはマイクロインフルエンサーというビジネスが生まれてきました。

更に、自社製品やお店の宣伝をしたい企業とマイクロインフルエンサーとをつなぐベンチャー企業まで登場してきました。

ここで注目すべきは、こうした企業の一つ、エニ―マインドグループによるAIの活用です。

具体的には、様々な分野に多数存在するマイクロインフルエンサーを掘り起こし、企業と効率的にマッチング出来る独自のプラットフォームを開発したこと、および徹底したデータ分析です。

 

特に、こうしたAIの活用によるマーケティング手法がどんどん進化していくことによって、様々なマーケティング手法における投資対効果がかなりの精度で数値化されるようになり、更にビッグデータもデータ分析の対象に加えるようになると、大手広告代理店も巻き込んで、マーケティング業界全体はAI指向の新たなステージに突入していくと思われます。


 
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