2月7日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でWHO(世界保健機関)のガバナンスに関する問題について取り上げていたのでご紹介します。
新型コロナウイルスへの対応を受けて、WHOのテドロス・アダノム事務局長の辞任を求める署名に32万人を超す人たちが賛同しているといいます。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「その動きを僕は本当に納得出来る動きだと思っています。」
「実はちょっと気になる写真が(WHOの)ホームページに載っていたわけですよね。」
「これはWHOが今回の新型肺炎について緊急事態を宣言した1月30日から載っていた写真なんですけども、これ中国の武漢の空港でもなければ、北京の空港でもないんですよね。」
「どこかで見た空港、成田国際空港なんです。」
「(ここ(写真の左端)に見覚えのある公衆電話があるという指摘に、)そうなんですよ。」
「そこで言いたいんですけども、実はこの写真については日本経済新聞でも指摘する記事が載っておりまして、さすがに批判がかなり出ていたと思います。」
「で、今日の今日(2月7日)になって、WHOはこの写真を差し替えているんです。」
「で、その辺のところの不透明さは一つあると思います。」
「いずれにしても背景には、中国は人とお金の面でWHOに相当強い影響を与えているという指摘が非常に強い。」
「で、今回の緊急事態宣言も遅れたという指摘もあるということで、ガバナンス改革ですね。」
「これは日本政府もかなり強く言っていいと思います。」
「今のままではWHOは病気にかかっています。」
「(WHOの内部からも改革を求める声が上がって欲しいという指摘に、)全くそう思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
滝田さんの“WHOは病気にかかっている”という指摘はとても重い言葉と思います。
私たちは一般的に国連などの国際機関は第三者的な立場で客観的にいろいろな物事に取り組まれていると思いがちですが、どうもそうではなさそうです。
所詮、国際機関といえども、資金援助などでより大きな支援を受けている国の意向に忖度して動く傾向があるという事実を私たちは受け入れる必要がありそうです。
特に、新コロナウイルスに対するこれまでのWHOによる中国に過度に配慮したと思われるテドロス事務局長の発言は看過すべきではありません。
4月10日(金)付けネットニュース(こちらを参照)では以下のように報じています。
・台湾は、中国と地理的に近く関係が深いにもかかわらず、新型コロナウイルスによる死者が5人にとどまっており、封じ込めに成功している
・陳建仁副総統によると、台湾は昨年12月31日、人から人への感染についてWHOに警告していた
・疫学者でもある陳氏は英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial
Times)に対し、台湾の医師らは中国・武漢の医師らが罹患していると把握していたが、WHOはその情報を確認しようとしなかったと述べた
・WHOは1月14日の声明で人から人への感染は確認されていないと発表した
・台湾は4月9日、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長が、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応をめぐり、自身に対する個人攻撃とWHOに対する批判を台湾政府が主導していると非難したことを受けて、テドロス氏に謝罪を要求した
以上、ネットニュースの要約でした。
台湾は昨年12月31日、人から人への感染についてWHOに警告していたにも係わらず、WHOはその情報を確認しようとせず、従って台湾からの情報を公表せず、1月14日の声明で人から人への感染は確認されていないと発表したのです。
そして、台湾による警告の1ヵ月後の1月30日にようやくWHOは今回の新型肺炎について緊急事態を宣言したのです。
しかも、その2日前の1月28日にテドロス事務局長は中国の習近平国家主席と会談しており、1月30日の記者会見で次のようにおっしゃっています。(2月8日(土)放送のテレビ番組「プライムニュースSUPER」(BSフジ)より)
「新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。」
「だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。」
「私は先日、中国に渡航し、習近平国家主席の指導力を目の当たりにした。」
「中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない。」
しかも、各国による中国への渡航制限の勧告は見送ったのです。
WHOの背後に中国の影があるかどうかに係わらず、また台湾がWHOの加盟国であるかどうかに係わらず、こうしたWHOの新型コロナウイルスに対する対応姿勢は本来のWHOの重要な役割の放棄に他なりません。
また、これまでのテドロス事務局長の発言に対しての、WHO内部からの批判が出てこないというのも納得出来ません。
こうしたことから、WHOがガバナンス改革の必要性を問われていること、そして滝田さんによる“WHOは病気にかかっている”という指摘もうなずけます。
WHOのような国際機関においてこうした不合理な現状があるのはとても納得しがたいことですが、国際社会の裏では国際機関への拠出金の多さなどを背景とした、自国に有利にことが進むように働きかけるという現実は改善の必要があります。
どの国際機関においても、また各国の拠出金の多さに係わらず、常に客観的に正しい判断や取り組みがなされるべきなのです。
そうでなければ、国際機関は世界各国から多く信頼を得ることは出来ず、その結果本来の役割を十分に果たすことが難しくなるのです。