2月4日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でイギリスにおける高齢者の孤独問題について取り上げていたのでご紹介します。
2016年6月、EUからの離脱を問う国民投票の1週間前、EU残留派の女性下院議員、ジョー・コックスさんが殺害されました。
彼女が職を賭して取り組んでいたのが孤独問題でした。
彼女の名を取った「ジョー・コックス孤独委員会レポート」、その衝撃の内容は、孤独は1日15本のタバコよりも害があり、イギリス全体で4兆5000億円もの経済損失を与えているとありました。
この報告書をもとに前のメイ政権は孤独問題の解決に動き出しました。
世界で初めて孤独担当大臣となったトレイシー・クラウチェ下院議員は次のようにおっしゃっています。
「新しく親になった人や移民、若い世代でも孤独と闘ってきた。」
「仕事で活躍し、忙しい人でも仕事がなくなると孤独だったりする。」
「孤独は精神的なもので、測定するのがとても難しかった。」
孤独とは英語のLoneliness、不安で寂しいという気持ちを指し、それが心身に大きなストレスを与え、健康にも大きく影響するとされているのです。
イギリスでは実に国民の1割以上(900万人以上)の人が孤独を感じているという結果になっています。
そしてイギリス政府はファンドをつくり、30億円ほどの資金を孤独解消に取り組む団体に配り始めました。
孤独を感じ易いという50歳以上の男性を集めたブローカルス、ここにその資金が入っています。
様々な体験会で横のつながりを作っているのです。
参加者のロバート・ホルトさん(75歳)は、家を訪ねると家族写真が並びますが、4年前に父親が亡くなりました。
こうした状況について、ロバートさんは次のようにおっしゃっています。
「今は一人暮らし、それでも個人的には全く孤独を感じていない。」
「幸運なことにいろいろ参加出来ているから。」
孤独解消の取り組みは他にもあります。
ロンドン近郊の町、ブライトンのカフェで行われている孤独対策があります。
会話をしている男女の席に女性がやってきました。
するとその席に座りました。
席には「SHARE THIS TABLE(テーブルを一緒に使いましょう)」と書かれた札が立てられています。
誰かとしゃべりたい人はこの札を置きます。
実は先ほど会話に入って来た女性、スー・イップスさんがこの発案者でした。
何週間も誰とも話していないという情報を聞き、この取り組みを思い付いたといいます。
今、ブライトンでは50件近くのカフェに広がっています。
スーさんは次のようにおっしゃっています。
「孤独をなくすためには、草の根で始まる取り組みが大事。」
「ブライトンの町のために始めた。」
更にロンドンの中心部の公園のベンチにも孤独問題対策があります。
このベンチの名前は「THE “HAPPY TO CHAT” BENCH(幸せにしゃべれるベンチ)」です。
「座っている自分に話しかけて」と書いた札をベンチに取り付けるのです。
そこでの会話はごく日常的なものです。
このベンチを考えたアシュリー・ジョーンズさんは次のようにおっしゃっています。
「人々と会話するために少し背中を押すだけ。」
「これが孤独をなくす。」
会話を生む“魔法のベンチ”、これがアメリカやオーストラリア、ウクライナなど世界中で孤独対策として広がっているのです。
孤独という、どこでも誰にでも起こり得る問題、解決への道はあるのでしょうか。
トレイシー下院議員は次のようにおっしゃっています。
「この問題は1年、5年とか短期間に解決出来る問題ではない。」
確かに長い時間がかかることかもしれませんが、イギリスは孤独対策に国を挙げて取り組むと覚悟を決めたわけですが、日本にとっても他人ごとではありません。
こうした状況について、番組コメンテーターで、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。
「独り暮らしの老人が既に660万人、そして高齢化が進み、生涯離婚率も上がっているので、これからどんどん独り暮らしの老人も増えていく。」
「それからもう一つの日本の特徴は、孤独死をしている人の8割はなんと男性なんですね。」
「普通、女性の方が長生きなので、孤独死は女性の方が多くても不思議ではないんだけれども、日本の場合は圧倒的に男性が多いと。」
「なので、イギリスで取り組まれているように趣味のコミュニティをつくるとか、あるいはちょっとした工夫で周囲に周囲の人とコミュニケーションを持つきっかけをつくるとか、そういう地道な作業の積み重ねが本当に必要なんですけど、日本人はコミュニケーションがあまり上手じゃない、特にシニアの男性は本当にコミュニケーションを閉じてる人が多いから、もっと手をかけて進めていかなければいけない、大変重たい課題だなというふうに思います。」
「(後は対策を待つだけでなく、誰かと係わろうとする小さな勇気みたいなものがその後の人生を変えることになるかもしれないのではという問いに対して、)大事ですね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通してまず驚いたのは、孤独は1日15本のタバコよりも害があるというイギリスの報告書の内容です。
それほど孤独が心身に大きなストレスを与え、健康にも大きく影響を与えているのです。
そしてイギリスでは実に国民の1割以上の人が孤独を感じているというのです。
しかもイギリス全体で4兆5000億円もの経済損失を与えているというのです。
更に、この報告書をもとにイギリス政府は世界で初めて孤独担当大臣まで新設し、ファンドまでつくり、30億円ほどの資金を孤独解消に取り組む団体に配り始めているというのです。
一方、日本の状況ですが、梅澤会長の指摘された内容を次のようにまとめてみました。
・独り暮らしの老人が既に660万人で、これからもこの数字は増えていく
・孤独死をしている人の8割は男性である
・イギリスで取り組まれているように地道な作業の積み重ねが必要である
・しかし、特にシニアの男性はコミュニケーションを閉じている人が多い
ここまで書いてきて、なぜ人は孤独になるのか、あるいはなぜ孤独が心身に大きなストレスを与えるのかという疑問が湧いてきました。
そもそも孤独が心身に大きなストレスを与えるということは、人は本来家族や友人、知人などとのコミュニケーションを必要としていることを意味しています。
では、なぜ人は本来こうしたコミュニケーションを必要としているにも係わらず、自ら孤独な暮らしを選んだり、あるいは孤独を感じてストレスを感じてしまうのでしょうか。
そこで、“孤独 ストレス”をキーワードにネット検索していみたら、沢山出てきました。
そうした中から、私がなるほどと思ったのは、孤独を感じる原因として、単に心を開いてコミュニケーション出来る人が周りにいないというだけでなく、自分の周りにSNSなどを通してコミュニケーションを取れる人は沢山いるが、自分と趣味や価値観の合う人がいない、あるいは自分に自信が持てない、など自分自身の心の持ち方に起因するという大きく2つの原因に大別出来るということです。
なお、孤独を感じる原因とつらい孤独を解消する方法についてはこちらを参照してみて下さい。
いずれにしても、孤独感が(2週間以上)続くと、高血圧に加え、うつ病や心疾患、またアルツハイマー病や脳卒中などといった病気のリスクが高まるとも言われています。(詳細はこちらを参照)
ですから、イギリスなど諸外国の事例を参考に、高齢化対策の一環として日本においても孤独対策に国を挙げて取り組むことが求められているのです。