2020年04月27日
アイデアよもやま話 No.4627 新型コロナウイルスとの闘い その6 社会への影響と対策 ― 台湾の事例!

新型コロナウイルスは今やパンデミック(世界的な大流行)状態の真っただ中にあります。

そうした中、3月22日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)で「“パンデミック”との闘い」をテーマに取り上げていました。

そこで6回にわたってご紹介します。

6回目は、社会への影響と対策 ― 台湾の事例についてです。

 

中々収束の見えない新型コロナウイルスですが、人体への影響だけではなくて、社会への影響も日に日に増しています。

感染拡大との闘いが長期化する中で、社会に広がる不安にどう対処していけばいいのか、独自の対応で注目を集めるのが、これまで感染者169人、そして死者2人に抑えている台湾です。(3月22日時点

 

台湾では当局の定めた厳格な予防対策のもと、通常の学校生活が続いています。

校門では体温計やサーモグラフィを使って体温を確認、37.5℃以上ある場合は帰宅させます。

授業が始まる前にももう1回、そして37.5℃以上ある生徒は一旦保健室に入ってもらいます。

また、熱が高かった場合は当局に報告するため、最近の行動を保護者から聞き取ります。

また、授業の一環として手の洗い方も指導します。

 

なぜ台湾ではこうした綿密な対策がいち早く始められたのか、当局は集団感染を防ぐために2月の新学期開始を2週間遅らせ、休校させていました。

実はその間に、学校再開に向けた準備を周到に進めていたのです。

再開後にもし子どもや教員に感染者が出た場合、1人なら学級閉鎖、2人なら休校という明確な基準をつくりました。

更に今後、再び休校した場合の備えまで考えてありました。

以前から準備を進めていたオンライン授業のシステム、当局がすぐに活用出来るように指示を出しました。

台湾のある学校の校長は次のようにおっしゃっています。

「台湾の新型コロナウイルス対策は成功しています。」

「当局は教育現場と連絡を取り合い、我々の要望に迅速に対応してくれます。」

 

こうした台湾の全ての対策の指揮を執っているのが中央感染症指揮センターの陳 時中指揮官です。

首相級の権限を与えられています。

今回初めてメディアの単独取材に応じました。

陳指揮官は次のようにおっしゃっています。

「ウイルスとの闘いで肝心なのは、市民の気持ちを一致団結させることです。」

「そのためには、徹底した情報公開が必要です。」

「そうすることで、市民に安心感が与えられるのです。」

 

情報公開の要は自ら毎日行う会見、内容は新たな感染者の発表から市民への注意喚起まで多岐にわたります。

トイレットペーパーなどの買い占めが起きた時には、陳指揮官は次のようにおっしゃっています。

「台湾の生活物資は絶対に不足していません。」

「考えてみて下さい。」

「今、我々は普通に暮らしているじゃないですか。」

「物資は確実にあります。」

「買い占めは全く必要ありません。」

 

市民の不安をぬぐうために2時間近くかけて全ての質問に答えました。

 

生活物資の不足にも独自の対策を取っています。

マスクは全ての在庫を当局が管理し、薬局などで販売、1週間に大人は3枚、子どもは5枚までと決められています。

購入に必要なのは健康保険カード、これまでの購買履歴が記録されています。

薬局などでマスクを購入時に健康保険カードを挿すと1週間以内に購入したか分かるので余計な購入や買い占めが防げるのです。

更に、仕事に追われ、薬局に足を運べない人向けにアプリも開発、ネットで予約が出来、コンビニで24時間受け取ることが出来ます。

陳指揮官は次のようにおっしゃっています。

「まずは細やかな政策で市民と信頼関係を築きます。」

「そうすれば、もっと強い政策を押し出した時にも協力が得られるのです。」

「ウイルスがやっかいなのは市民の体だけではなく、心にもダメージを与えることです。」

「情報を透明化し、市民と当局がともに闘わなければウイルスには勝てないのです。」

 

こうした台湾の取り組みについて、東北医科薬科大学特任教授の賀来 満夫さんは次のようにおっしゃっています。

「(台湾の事例から私たちはどんなことを学ぶべきかという問いに対して、)素晴らしい一つのモデルだと思うんですよね。」

「非常に細やかな対応、手洗いのことも含めて休校中に準備をしていくというように、一歩、二歩先を読んだような、非常にプランをしっかり立てて実行していく。」

「そのプランをしっかりと国民に説明して、コミュニケーションを取って、そういった体制をつくっていくということは非常に感染対策の重要なポイントだろうというふうに思います。」

「(情報公開の徹底について、)そこは重要なポイントですね。」

 

「(新型コロナウイルスに対して、私たちはどんなふうに立ち向かっていけばいいのかという問いに対して、)先ほどから押谷先生(東北大学大学院教授で政府の専門家会議のメンバーでもある押谷 仁さん)も言われていますように、私たちは個人個人で出来ることをしっかり守っていくこと、そしてそれを社会全体で、みんなでやっていくこと、台湾は一つのモデルだと思うんですけども、個人個人が守ることと社会、それも徹底してシステムをつくっていくこと、この2つが個人と社会がともに協力して対応していくということが、これ(新型コロナウイルス)に打ち勝つ一つの方法だと思いますね。」

 

また、押谷教授は次のようにおっしゃっています。

「(感染症封じ込めのスペシャリストとして、あらためて新型コロナウイルスと私たちはどんなふうに向き合っていくべきだと思うかという問いに対して、)非常に対策の難しいウイルスだと思います。」

「ただし、日本はこれまで踏み止まって来ました。」

「クルーズ船の問題とかPCR検査のキャパシティの問題とか、日本はいち早く世界の中でも流行を起こすんじゃないかということが懸念されていたんですけど、日本がここまで踏み止まっている。」

「で、そのことによって、世界が今日本の対策に非常に注目しています。」

「で、アメリカ、ヨーロッパが次々にオーバーシュート(爆発的な患者数の増加)していく中で、まだアジア、アフリカでは我々非常にそれを懸念してたんですが、オーバーシュートを起こしていると考えられる国はまだありません。」

「そうすると、日本の知見が世界のこのウイルスとの闘いに非常に重要になる可能性があります。」

「で、我々は世界の英知を結集して一人ひとりの人がこの問題にもっと真摯に向き合って、対策を日本に住む全ての人が考えてもらうことによって、この問題は克服出来るというふうに信じています。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

番組を通して、新型コロナウイルスとの闘いにおける台湾の対応の成功要因を以下にまとめてみました。

・首相級の権限を与えられた指揮責任者の任命

・徹底した情報公開による、当局と市民との一致団結、および市民への安心感の提供

・当局と現場との緊密なコミュニケーション

指揮責任者自らが毎日行う会見

新たな感染者の発表から市民への注意喚起まで多岐にわたる情報公開

長時間にわたる質疑応答

現場の要望の把握

一歩、二歩先を読んだ迅速な対応

・ICT(情報通信技術)の活用

生活物資不足の対策として、マスクは全ての在庫を当局が管理

1週間に大人は3枚、子どもは5枚までと決めて薬局などで販売

マスクの購入に必要なのは健康保険カード

購買履歴を記録し、過剰な購入や買い占めを防止

薬局に足を運べない人向けにアプリを開発

ネット予約、コンビニで24時間受け取ることが可能

 

なお、4月16日(木)付けネットニュース(こちらを参照)によれは、14日は3月9日以来、36日ぶりに新規感染者数ゼロを達成しています。

そして、15日は2人増え、感染者は累計395人、死者は6人に止まり、感染者の大半は海外由来といいます。

こうした状況は、官民一体の取り組みが功を奏し、政府対策本部は「喜ぶに値するが、警戒はこのまま続けてほしい」と手綱を引き締めているといいます。

 

こうして見てくると、加賀特任教授の指摘されているように、新型コロナウイルスに対する台湾の取り組みは素晴らしい一つのモデルだと思います。

 

ちなみに、中央感染症指揮センターの陳指揮官はどのような人物なのか興味が湧いて来たのでウィキペディアを参照したら、以下のような記述がありました。

 

台湾台北市出身の歯科医師、民主進歩党(民進党)の政治家。

2017年より現職の中華民国衛生福利部部長(保健相に相当)だが、立法委員や党中央の執行部を務めたことはなく、民間人として閣僚に登用されている。

議員歴はないが、長年民主進歩党のシンクタンクに所属し、蔡英文の医療政策草案でライターを務めた。

 

2019年末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症の流行が本格化すると、担当閣僚として衛生福利部に設置された中央流行疫情指揮中心(CECC)で指揮官となった。

陳は医師ではあるものの、公衆衛生分野を専門としない歯科医であるため、コロナウィルスでの防疫では政権内および外部有識者との対話と国民への積極的な情報公開という役割を担っている。

 

以上、ウィキペディアの内容の一部をご紹介してきました。

 

さて、肝心の日本政府の取り組みですが、押谷教授はこれまでの日本の取り組みを評価されています。

確かに、未だに日本はオーバーシュートにならずに踏み止まり続けています。

しかし、感染経路不明の感染者の数は増え続けています。

ですから、いつオーバーシュートが起きてもおかしくない状況なのです。

 

政府の新型コロナウイルス対策関係者は一生懸命に取り組まれているとは思いますが、僭越ながら言わせていただくと、台湾に比べて政府の取り組みは未だに現状追随型で、しかも逐次投入型のように思えてなりません。

ですから、台湾のように現場の要望に対する一歩、二歩先を読んだ迅速な対応をしていただきたいと思います。


 
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