2020年05月02日
プロジェクト管理と日常生活 No.639 『気候クライシス その4 迫りくる“ティッピングポイント”』

地球温暖化問題については、これまで何度となくこのブログで取り上げてきました。

そうした中、1月13日(月)放送の「BS1スペシャル」(NHK総合テレビ)で「気候クライシス」をテーマに取り上げ、地球温暖化問題の最新状況について伝えていました。

そこで4回にわたってご紹介します。

4回目は、迫りくる“ティッピングポイント”についてです。

 

予想を超えたスピードで進む地球の温暖化にどう立ち向かうのか、2019年9月、国連のグテーレス事務総長が温暖化対策サミットを開催、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを各国に求めました。

サミットの直前には世界で400万人を超える若者が対策を早急に進めるべきだと抗議の声を挙げました。

こうした声の発端となったのは、スウェーデン出身のグレタ・トゥーンベルさん(16歳)です。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?

IPCCの報告書を熟読し、気候変動の深刻さを知ったトゥーンベルさん、未来がないのに学校に行っても意味が無いと、ストライキを起こしました。

たった一人で始めた行動が世界の若者たちに広がり、大きなムーブメントにつながったのです。

グレタさんは、地球温暖化サミットの開会式で各国の代表に訴えました。

しかし、国際社会の足並みは揃いませんでした。

2050年までのCO2排出量実質ゼロの呼びかけに応えたのはヨーロッパ諸国を中心にした66の国と地域でした。

イギリスのジョンソン首相やドイツのメルケル首相は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすると発言しました。

その一方で、CO2排出量世界第1位の中国や世界第3位のインドなどはゼロ宣言に至りませんでした。

また、パリ協定の離脱を表明していたCO2排出量世界第2位のアメリカ、トランプ大統領はわずか15分で会場を退席しました。

そして、CO2排出量世界第5位の日本は新しい取り組みを示すことはありませんでした。

削減量の引き上げや具体的な対策、課題は、温暖化対策を話し合う国連会議、COP25に持ち越されることになりました。

 

さて、2019年11月中旬、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の本部(スイス・ジュネーブ)では、副議長のヨウバ・ソコナさん(アフリカ・マリ出身)が打合せに追われていました。

温暖化対策について話し合う国連会議、COP25の開催まで2週間あまり、ソコナさんはCOP25では各国に排出量削減の上積みを促したいと考えていました。

感謝の手紙を受け取って以来、親交を深めて来たトゥーンベルさんとともに特別報告書の内容をあらためて訴えることにしました。

ソコナさんは次のようにおっしゃっています。

「我々IPCCは科学的根拠を示しました。」

「決断をするのは各国の政府です。」

「その場しのぎではダメなのです。」

「根本的な改革なくして、温暖化を食い止めることは出来ません。」

 

2019年12月、スペイン・マドリードでCOP25が開催されました。

国連事務総長のアントニオ・グテーレスさんは次のようにおっしゃっています。

「今すぐ生活を変えなければ、命が危ない。」

「もう時間がない。」

「遅れは許されないのです。」

 

パリ協定の実施を翌年に控え、排出量削減目標の引き上げと具体的なルールづくりが出来るのか、太陽光発電のヨットで大西洋を20日間かけて横断し、グレタさんも到着しました。

この日、ソコナさんはグレタさんとともに公開討論会を開催し、温暖化対策に向け、行動の緊急性を訴えました。

グレタさんは次のようにおっしゃっています。

「科学が人々に届くことが大切です。」

「もう科学を無視して話を続ける時間はありません。」

 

また、ソコナさんは次のようにおっしゃっています。

「気候は既に変動しました。」

「目に見えます。」

「鼻にも臭いです。」

「その土地の上で暮らし、苦しんでいる人がいます。」

「最も脆弱な人々と社会に困難が及ぶのです。」

「科学的に見れば、それが明らかです。」

「1年1年が重要です。」

「どんな選択をするか、重要なのです。」

 

今回の会議で焦点の一つとなったのが日本の姿勢です。

グテーレス事務総長が石炭火力発電の利用を止めるよう求めましたが、日本は新設する計画を打ち出していたため、小泉環境大臣の発言に注目が集まりました。

「石炭火力発電に関する新たな政権をこの場で共有することは残念ながら出来ません。」

「日本は脱炭素社会に向け、具体的な行動を取っており、結果を出していきます。」

 

日本は石炭火力発電を今後どうしていくのか、具体的に言及することはなく、削減目標の引き上げにも触れませんでした。

小泉環境大臣の演説を受けて、NGOのグループは温暖化対策に消極的な国に送る化石賞に日本を選びました。

この8日前の12月11日、梶山経済産業大臣が石炭火力発電を選択肢として残したいと発言した時に続いて、2度目の受賞でした。

 

閉幕予定を過ぎても会期は延長され、交渉は続きました。

排出量の削減目標を巡り、意見が対立していたのです。

水没の危機にあると訴えている国、マーシャル諸島の代表は次のようにおっしゃっています。

「来年(2020年)の削減目標を引き上げるとはっきりと打ち出すべきです。」

 

一方、世界第3位と排出量が多い国、インドの代表は次のようにおっしゃっています。

「目標の引き上げは各国が決めることです。」

 

各国の意見はまとまらず、異例の40時間の延長を経て、COP25は閉幕、ルールの一部が決まらないまま2020年からパリ協定が実施されることになりました。

閉会した直後、グテーレス事務総長のツイートには以下のような記述がありました。

「COP25には失望した。」

「国際社会は気候危機に立ち向かう強い野心を示す機会を失った。」

 

COP25を終え、IPCC共同議長のハンス・オットー・ポートナーさんは新たな報告書の作成に取り組んでいました。

今、ポートナーさんには気がかりなことがあります。

このまま1.5℃の上昇を超えた場合、どこかの時点で温暖化に歯止めが利かなくなる、二度と後戻りが出来ない“ティッピングポイント”が訪れるという不安です。

ポートナーさんがそのカギを握ると考えているのが南極、地球上の氷の9割を占めています。

その氷の溶ける速度が予想よりも早まっていることが判明しました。

中に閉じ込められた大量のCO2が放出すると、“ティッピングポイント”に達するリスクが高まると見られています。

ポートナーさんは次のようにおっしゃっています。

「いつ“ティッピングポイント”に達してもおかしくありません。」

「そうなれば、“灼熱地球”と呼ばれる状況に陥ります。」

「地球は高温になり、やがて人類は生息出来なくなります。」

「地球規模でドミノ倒しのように甚大な気候災害が発生するでしょう。」

「もはや気候変動が人間の手には負えなくなるかもしれないのです。」

 

人類が直面する待った無しの危機、しかし、最悪の事態を回避出来る希望はまだあるとIPCC副議長のヨウバ・ソコナさんは次のようにおっしゃっています。

「我々が直面している気候変動は人間が引き起こしたものです。」

「人間が作り出した問題に我々は対処することが出来るはずです。」

「私たちの未来は私たちの手の中にあります。」

「一人ひとりの行動が世界へとつながります。」

「今スタートを切らなければ、間に合わなくなるのです。」

 

無数の命が息づく地球、一度失われてしまうと二度と取り戻すことが出来ない、この豊かな環境、守ることが出来るのか、我々一人ひとりが今すぐに行動を起こさなければなりません。

IPCCの報告書はそう突き付けているのです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

耳慣れない言葉“ティッピングポイント”、番組で初めて知りました。

このまま1.5℃の上昇を超えた場合、いずれどこかの時点で温暖化に歯止めが利かなくなる、二度と後戻りが出来ない“ティッピングポイント”が訪れるというのです。

人類にとってとても恐ろしい言葉です。

 

しかし、IPCCがこの“ティッピングポイント”が迫りつつあるリスクの科学的根拠を示し、世界各国に根本的な改革を促しても世界各国の足並みは揃わないというのが現状なのです。

そこには先進国と途上国との間の利害関係が存在します。

そして、2019年12月に開催されたCOP25では各国の意見はまとまらず、ルールの一部が決まらないまま2020年からパリ協定が実施されることになりました。

 

そうした中、日本としてはIPCCから石炭火力発電の利用を止めるよう求められました。

しかし、日本は新設する計画を打ち出しており、石炭火力発電を今後どうしていくのか、具体的に言及することはなく、削減目標の引き上げにも触れませんでした。

 

結局、総じて先進国側は、地球温暖化の進行よりも化石燃料に依存する経済発展を優先しており、途上国側は地球温暖化による様々な弊害を取り除くことを先進国に要望し、双方の意見がまとまらないという構図なのです。

 

しかし、現実はこうした世界各国の動きとは全く関係なく、地球上の氷の9割を占めている南極の氷の溶ける速度が予想よりも早まっていることが判明しています。

他にも、これまで地球温暖化による弊害について、このブログで何度となくお伝えしてきました。

以下はその一部です。

 

No.3198 ちょっと一休み その509 『確実に進んでいる地球温暖化 溶け出すアルプス氷河』

アイデアよもやま話 No.4301 加速する地球温暖化にどう対応するか?

No.4392 ちょっと一休み その679 『世界各地で当たり前になっていく「異常気象」』

プロジェクト管理と日常生活 No.604 『アマゾンの森林破壊の与える世界的な影響』

プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?』

 

今、私たち人類は新型コロナウイルスとの闘いで、若者を中心に多くの人たちは以下のようにこれまで経験したことのない暮らしを強いられています。

・多くの企業の臨時休業、あるいは在宅勤務

・学校の臨時休校、あるいはオンライン学習

・医療崩壊の危機

・多くのレジャー施設の休業

・外出制限

 

しかし、コロナウイルスとの闘いは、人々が「3つの密」(密閉・密集・密接)を避けさえすれば短期間で収束出来ることは明らかになっています。

ところが国内においては、こうした対応に対する一部の人たちの危機意識不足、あるいは経済的な理由から「3つの密」回避の徹底が図れず、結果としてオーバーシュート(爆発的な患者数の増加)の危機にさらされています。

それでもこうしたウイルス感染症はいずれ収束に向かいます。

 

一方、地球温暖化については世界各国による抜本的な対策が打ち出されないまま“ティッピングポイント”が迫りつつあるのです。

そして、一旦“ティッピングポイント”を迎えてしまえば、取り返しはつかないのです。

ウイルス感染症と違い、1年、365日、ずうっと様々な地球温暖化による弊害と向き合う暮らしを強いられるようになるのです。

しかも、地球温暖化の進行により今回のようなウイルス感染症の発症リスクも高まるのです。

 

ではどうするかですが、よほど優れたリーダーシップを持った国の指導者が国民の意識改革を出来ない限り、抜本的な対策が打ち出すことは出来ません。

そしてこうした優れた指導者の到来はあまり当てには出来ません。

そこで対策のキーポイントは地球温暖化阻止と経済との両立です。

具体的には、アイデアよもやま話 No.2025 私のイメージする究極の発電装置とは・・・でお伝えした要件を満たすような発電装置の開発です。

そして、その要件のいくつかを満たす装置として、私が期待しているのがアイデアよもやま話 No.4589 ノーベル賞級の画期的な発明 ― 電気不要、水と触媒だけで水素を製造出来る!?でお伝えした装置です。

更に、こうした天候などに左右されない再生可能エネルギーを利用した発電装置は宇宙空間でも利用可能です。

ですから、将来何らかの原因で人類が地球上で暮らせなくなっても、こうした装置があれば、他の惑星に移住するようになっても少なくともエネルギーに関しては心配なくなるのです。

 

世界中を見渡せば、他にもこうしたいろいろな装置の開発が進行中だと思いますが、実用的で高品質、安全、かつ低価格の装置であれば、新型コロナウイルス収束後の経済復興対策の大きな柱としてのみならず、地球温暖化問題やエネルギー問題の解決策としてもとても有効だと思うのです。

 

さて、時代の変革をもたらしてきたのはこれまで特に若い人たちでした。

ですから、こうした問題意識を強く持った、ベンチャー精神旺盛な若い人にはこうした装置の開発にチャレンジしていただきたいと思います。

このチャレンジは世の中全体に良い意味でとてつもなく大きな影響を及ぼす、とてもやりがいに満ちたものだと思うのです。


 
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