新型コロナウイルスは今やパンデミック(世界的な大流行)状態の真っただ中にあります。
そうした中、3月22日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)で「“パンデミック”との闘い」をテーマに取り上げていました。
そこで6回にわたってご紹介します。
5回目は、3つの闘い方についてです。
番組では、感染症との闘い方について以下の3つを上げました。
・ワクチン:開発に1年以上
・集団免疫:獲得前に多数の死者が出る恐れ
・行動変容:暮らしや経済に影響
このことについて、(新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する厚生労働省対策推進本部)クラスター対策班所属の東北大学教授、押谷
仁さんは、次のようにおっしゃっています。
「ワクチンは時間がかかりますし、本当にワクチンが出来るのかどうかということもよく分かっていません。」
「集団免疫という考え方は、結局多くの人が感染して、人口の7割くらいの人が感染して、多くの人が亡くならないと集団免疫は出来ないというものになります。」
「で、我々が今やっている行動変容を中心とする、しかも中国式ではなくて、社会活動の制限を最小限にして、しかも感染拡大のスピードを最大限に抑えていくと。」
「そういう日本方式の対策をやることによって、ある程度このウイルスを制御出来る見込みが出て来たと、そういう希望の光が見えて来たという段階にいるので。」
「ただ、第二波の流行は何度も言っているように更に厳しいものになるので、対策を徹底的にやるということが必要なんだというふうに思っています。」
ワクチンが出来るまでどう乗り切るのか、医療現場では既存の治療薬から新型コロナウイルスに効果があるものを探し出す作業が世界中で急ピッチで進められています。
国内でいち早く研究を進めた国立感染症研究所
村山庁舎(東京都武蔵村山)のウイルス第三部四室の室長、松山 州徳さんは次のようにおっしゃっています。
「初めて遭遇する事態なので、考えながら進んでいるかたちだと思っています。」
松山さんたちが調べたのは、医療現場で感染症の治療に使われている薬など約1200種類、その一つひとつをウイルスに感染した細胞に投与し、増殖を抑える効果を確かめました。
複数の候補が見つかった中で特に注目したのがオルベスコ(シクレソニド)という薬でした。
オルベスコは喘息の薬として長年使われ、副作用が少ないことが知られています。
既にこの薬を新型コロナウイルスの患者に投与する試みが神奈川県立足柄上病院で始まっています。
この病院では2月にクルーズ船の患者を次々と受け入れ、対応に追われました。
総合診療科の医長、岩淵
敬介さんは次のようにおっしゃっています。
「来られた患者さんがみんな肺炎を起こしてどんどん悪くなっていくというところで、これはとんでもない感染症を診ているんじゃないかと。」
「もう、とにかく必死に診療していた。」
以下はこれまでの治療の経過をまとめた報告です。
70歳台の男性の場合、入院後数日で肺炎が悪化、酸素吸入が必要な状態に陥りました。
男性の肺を捉えた画像では、一部に炎症を示す白い影が見られます。
しかし、薬の投与後、症状は治まり、白い影も無くなりました。
投与した3人については、症状の改善が見られました。
岩淵医長は次のようにおっしゃっています。
「それまでが本当に辛い闘いだったので、救われたと思いましたね。」
「本当にこの薬だけのせいか分からないんだけれども、驚きましたね。」
今後、治療薬の開発はどのように進んでいくのか、国内の治療薬研究を率いる愛知医科大学の森島
恒雄客員教授は次のようにおっしゃっています。
「今の時点では少なくとも4種類の薬が臨床試験(および研究)に入っていると思います。」
「そして、それぞれの結果がだいたい3月の末から4月の始めくらいの段階でそろってくるんじゃないかなと考えています。」
「その結果を見て、それを解析することによって患者さんのどの病状の時にはどの薬が良いだろう、進んだ時にはどういう薬がいいだろう、あるいは併用したらどうかというような結果が出てくると思う。」
「それを考えていくことによって、軽い肺炎からどんどん進行して集中治療が必要になってくる重い肺炎、そういうふうに防ぐことが出来ると考えています。」
現在、別の病気に使われている薬で、新型コロナウイルスに感染した患者への投与が行われているのは以下の薬です。
・アビガン
新型インフルエンザに使用
日本の患者に投与する
藤田医科大学病院(愛知県)などで臨床研究が開始
中国政府は診療指針に採用の方針
・オルベスコ
喘息に使用
日本感染症学会が全国の医療機関から報告を集めて効果の検証を進める
・カレトラ
HIVに使用
国立国際医療研究センターなどで投与の実績あり
・レムデシビル
エボラ出血熱に使用
日本国内で臨床研究開始の予定
ただし、こうした治療薬には注意が必要な点もあります。
オルベスコなどでは、感染症指定医療機関などで新型コロナウイルス感染症の診断が確定した方向けに投与されています。
一般の診療所や薬局に行っても処方されないので注意が必要です。
こうした既存の薬による治療効果について、東北医科薬科大学特任教授の賀来
満夫さんは次のようにおっしゃっています。
「私は非常に期待しているんですね。」
「治療薬については、ワクチンへのつなぎというような観点ではなくて、もし科学的に新型コロナウイルスに効果があるというデータが出てくれば、これは新型コロナウイルスとの闘いを一気にひっくり返すことが出来る、そういった切り札的な役割を果たしてくるんじゃないかと思うんですね。」
「先ほどの理事長の先生方がいろいろ苦労なさりながら、実際に薬を使って、この薬の効果かどうか分からないけれども実際に効果が出た。」
「それはとても良いグッドニュースなんですね。」
「しかし、今後はやはりもう少し臨床研究、あるいは治験などでもう少し多くの症例でしっかりとこの新型コロナウイルス感染症のウイルスに対する効果を科学的に立証していくことが出来れば、非常に大きいと思います。」
「(既存の薬の効果が科学的に確認出来れば切り札になるかもしれないというのは具体的にどういうことなのかという問いに対して、)例えば、そのことによって、患者さんの擁護が非常に画期的に良くなります。」
「いわゆる臨床症状が改善して、擁護、いわゆる亡くなることが無くなってくる、可能性が高い、そういう意味での切り札ということになります。」
「(こうした薬が実際に多くの人が使えるようになる時期はいつ頃になるのかという問いに対して、)これはこういった治験を主体的にやっている国立国際医療研究センターの先生方の報告によりますと、約半年くらいのうちにデータが出てくるというお話も聞いておりますので、少し時間はかかりますけど、確実にそういうデータが出てくるんじゃないかと期待しています。」
「(先ほど中国政府によるアビガンの臨床研究の話があったが、これについてはいかがかという問いに対して、)これ、私も非常に注目しています。」
「RNA(リボ核酸)ポリメラーゼという、ウイルスの持っている酵素を阻害するという意味では、非常にその他のウイルスにも効果があると。」
「特にSFTS(重症熱性血小板減少症候群)と言われている、日本で重症を起こす感染症にも効果があるということが認められていますので、私は非常に期待しています。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組では新型コロナウイルスとの闘い方について、ワクチン、集団免疫、行動変容の3つを上げています。
しかし、中でも集団免疫は最も原始的な闘い方で、被害が膨大で収束までの期間もかなりかかります。
次にワクチンですが、新規に開発するには時間がかかります。
そこで、ワクチンが出来るまで既存の治療薬から新型コロナウイルスに効果があるものを探し出す作業が世界中で急ピッチで進められているのです。
そして、既存の治療薬については、科学的に新型コロナウイルスに有効であることが確認出来れば、新型コロナウイルスとの闘いを一気にひっくり返すことが出来るといいます。
この方法は、約半年くらいのうちにデータが出てくるとも言われているので、期待出来ます。
次に行動変容ですが、この闘い方は世界各国の人たちの覚悟次第で最も確実な闘い方だと思います。
仮に1ヵ月ほど「3つの密」(密閉・密集・密接)を避けることを確実に実行すれば、新型コロナウイルスとの闘いを短期間にほぼ収束させることが出来るのです。
ただし、この闘い方は、1ヵ月間ほど多くの国民に経済面、あるいはストレス面で多大な影響を及ぼします。
ですから、国民が安心して暮らせるように経済面で国が全面的にバックアップすることが必須です。
もう1つ、戒厳令ではありませんが、この期間だけは強い要請に止まらず、罰則を設けてでも国民の行動を規制することが求められます。
あるいは、安倍総理が国民の心に深く届くような卓越した演説で国民の意識を変えることが出来れば、それに越したことはありません。
中途半端な対応では集団免疫に近い闘いになってしまうのです。
いずれにして今の日本の新型コロナウイルスとの闘い方は、実際の戦争で最もまずい戦い方と批判されている、現状後追いの「戦力の逐次投入」のような気がしてなりません。
そして、今回の新型コロナウイルスとの闘いは、以前にもお伝えしたように、“ウイルスとの戦争”なのです。
未だに感染経路不明の患者数の多い状況では、今のような日本の「戦力の逐次投入」型の新型コロナウイルスとの闘い方ではいつ収束するのか予測が出来ません。
ということで、このままずるずると中途半端なかたちで闘いを続けるよりも短期決戦で、しかも3つの闘い方の中で最も勝利が確実でしかも短期間で収束の可能性の高い“行動変容”を選択すべきではないかと最近思うようになってきました。
この闘い方は、安倍総理の“総理の椅子”を賭けた覚悟一つで決断するしかないのです。
このような状況においてこそ、一国の指導者は多くの国民の暮らしを一時的に厳しくしても納得させることが出来るような対策を提示し、強力なリーダーシップを発揮することが求められるのです。