2020年04月25日
プロジェクト管理と日常生活 No.638 『気候クライシス その3 地球温暖化問題の対策』

地球温暖化問題については、これまで何度となくこのブログで取り上げてきました。

そうした中、1月13日(月)放送の「BS1スペシャル」(NHK総合テレビ)で「気候クライシス」をテーマに取り上げ、地球温暖化問題の最新状況について伝えていました。

そこで4回にわたってご紹介します。

3回目は、地球温暖化問題の対策についてです。

 

これまで人類の経験したことのない地球温暖化の危機、今世紀末に気温上昇1.5℃未満に抑えるために何をすべきか、IPCCの副議長、アフリカ・マリ出身のヨウバ・ソコナさんが重要だと考えているのが世界のエネルギー構成を変えることです。

2019年9月、IPCCは「IPCC特別報告書」を発表しましたが、その報告書では2050年までに再生可能エネルギーを70〜85%に増やすことが望ましいとしています。

そして、CO2排出量の多い石炭火力発電をほぼゼロにすることを訴えています・

更にソコナさんは、もっと身近なところで出来る対策があるといいます。

それは我々の食生活を変えることです。

実は、人間が生み出す温室効果ガスのうち、食糧システムからの排出量は最大37%を占めています。

中でもとりわけ多くの排出量を生むのが肉中心の食生活です。

 

なぜ肉を食べることが(温室効果ガスの)高排出につながるのか、その仕組みは次のようになっています。

牧草地を作るには、森を切り開かなければなりません。

そのためCO2を吸収する森林が失われてしまいます。

また、牛を飼育するとその糞やゲップからCO2の25倍の温室効果があるメタンガスが放出されます。

そして、牛に食べさせる飼料の加工や輸送でも化石燃料を使ってエネルギーを使うと、温室効果ガスが排出されるのです。

一方、穀物など植物由来中心の食生活に改善することで、年間最大86億トン、日本の年間の排出量の6割以上の削減が出来ると期待されています。

 

こうしたIPCCの考え方を自ら実践し、食生活の改善で温暖化対策に取り組む人がいます。

「タイタニック」、「アバター」などで世界に名を派す巨匠、ジェームズ・キャメロン監督、「アバター」の舞台は地球の熱帯雨林を思わせる惑星で、惑星を侵略しようとする人間と先住民たちの戦いを描きました。

この映画製作を通じて、キャメロン監督は環境問題に関心を持つようになりました。

今、力を注いでいるのは人々の食事を肉中心から植物由来中心に転換する試みです。

2017年、肉の代わりに豆類などからタンパク質を摂取する食品の開発を始めました。

キャメロン監督は次のようにおっしゃっています。

「地球規模で我々が生存出来る環境を維持するためには、我々に一体何が出来るかを考えたんだ。」

「今世紀中に全て電気自動車(EV)に変えるなんて無理でしょう。」

「石炭を止め、化石燃料を止めるのも20〜30年では出来ない。」

「でも、食べるものは1日で変えられる。」

「必要なのは決断だけです。」

「心の力、人間の意志の力だけです。」

 

海を舞台にした温暖化対策でもIPCCが大きな効果を期待している方策があります。

特別報告書で挙げられているのがブルーカーボンを増やすことです。

ブルーカーボンは海藻などが水中で吸収するCO2のことです。

海藻に付いている小さな粒は酸素の泡、ブルーカーボンを増やすことで光合成による酸素も増やすことが出来ます。

IPCC共同議長のハンス・オットー・ポートナーさんは次のようにおっしゃっています。

「海岸線の長い日本は、ブルーカーボンの取り組みにとても適しています。」

「また、海藻の生息地を増やすことは台風や高潮の被害から沿岸部を守る効果も期待出来ます。」

 

このブルーカーボンの取り組みを日本でいち早く進めているのが横浜市です。

専門家を招いて2019年から本格的に取り組み始めました。

横浜市は、自治体として2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすると宣言、ブルーカーボンは有力な手段になると期待しています。

港湾空港技術研究所の桑江 朝比呂さんは次のようにおっしゃっています。

「吸収源の対策としては、森林とともに海も今後使っていかないと中々目標達成には届かないんじゃないかと思います。」

更に、横浜市では他の自治体とノウハウを共有し、ブルーカーボンの取り組みを全国に広げようとしています。

横浜市・温暖化対策統括本部のプロジェクト推進課長、岡崎 修司さんは次のようにおっしゃっています。

「今、横浜だけでやってもさすがに限界があると感じていて、他都市でもっと豊富にブルーカーボンの事業が出来るところは沢山あると我々も思っていて、そこの部分の方々と連携しながら、オフセットしながら地域間連携をしてCO2を削減出来たらいいなと。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきましたが、以下にその内容を要約しました。

・これまで人類の経験したことのない地球温暖化の危機には、エネルギー構成を変えることが重要である

・「IPCC特別報告書」(2019年9月に発表)では、2050年までに再生可能エネルギーを70〜85%に増やすことが望ましいとしている

・また、CO2排出量の多い石炭火力発電をほぼゼロにするが望ましいとしている

・人間が生み出す温室効果ガスのうち、食糧システムからの排出量は最大37%を占めている

・従って、更にもっと身近なところで出来る対策として、我々の食生活を変えることがある

・人々の食事の肉中心から植物由来中心への転換が温室効果ガス削減に有効である

・海を舞台にした温暖化対策として、ブルーカーボンを増やすことが有効である

・横浜市は、自治体として2050年までにブルーカーボンを有力な手段にCO2排出量を実質ゼロにすると宣言している

・更に、横浜市では他の自治体とノウハウを共有し、ブルーカーボンの取り組みを全国に広げようとしている

・海藻の生息地を増やすことは台風や高潮の被害から沿岸部を守る効果も期待出来る

 

以上、要約しましたが、今回の番組でこれまで知らなかったことが分かりました。

それは、人間が生み出す温室効果ガスのうち、食糧システムからの排出量は最大37%を占めているということです。

もう一つは、温暖化対策として、ブルーカーボンを増やすことが有効であるということです。

また、この対策は、海藻の生息地を増やすことが台風や高潮の被害から沿岸部を守る効果も期待出来るということです。

 

ということで、地球温暖化対策として、化石燃料を使用した火力発電所の削減など、発電所や企業の製造プロセスなどが対象であるだけでなく、食生活も含めた私たちの暮らし全般や自治体によるブルーカーボンなどの取り組みも有効なのです。

ですから、地球温暖化阻止の取り組みは国を挙げての総力戦と言えるのです。


 
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