アイデアよもやま話 No.4631 神戸牛が680円で食べられるお店!では従来の飲食店の新たなビジネス戦略についてご紹介しました。
そうした中、1月29日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で急増するキッチンカーについて取り上げていたのでご紹介します。
外食産業が伸び悩む中で都心を中心に急速に増えているのがクルマで移動販売する、いわゆるキッチンカーです。
軽トラック1台から始めて、今や都心のビルに出店するまでに上り詰めたというキッチンカーもあります。
成功のカギは一体何なんでしょうか。
東京・千代田区にあるオフィス街のお昼時、ひと際賑わいを見せる黄色いキッチンカー、中で作っていたのは半熟たまごのオムライスです。
出来立てがお店で食べるより少し安い値段で楽しめるのが売りです。
ちなみに、チキントマトソース ハンバーグトッピングは800円です。
お客の評判も上々です。
こちらのキッチンカー、オムトラックは多い時で1日150食を売ります。
株式会社OmtRak(オムトラック)を立ち上げたのは島田 浩志社長(53歳)です。
島田社長は次のようにおっしゃっています。
「もともと銀行員でして、実は飲食の経験は全くなくて、一からキッチンカーからスタートしました。」
島田社長は、モノを作って直接お客に届ける仕事がしたいと、2008年にオムトラックを立ち上げました。
全くの素人でも成功した理由がキッチンカーに詰まっています。
島田社長は次のようにおっしゃっています。
「資金的な部分というのも、(初期費用の)資金はかかっても300万〜400万円、中古でクルマを見つけてくれば100万円ぐらいから始められるというところが大きい。」
固定の店舗の場合、開店の初期費用に1000万円はかかると言われるところ、キッチンカーだとその費用は3分の1ほどに、月々の家賃もかかりません。
駐車場はビルのオーナーと直接交渉します。
更にこのオムライスにも秘訣があり、島田社長は次のようにおっしゃっています。
「35秒で“ふわとろオムライス”というのを一つのキャッチフレーズとして行っております。」
調理時間を短くすることで、限られたランチタイムで提供出来る数を増やしているのです。
予めといてあるたまごを強火で素早く焼いて、ご飯の上へ乗せ、予め温めたソースをかけてトッピングを乗せて完成です。
提供まで最速で約35秒です。
たまごをその場で焼くという演出だけは残し、作業時間は最小限にしました。
スタッフは最大で二人、人件費も抑えられます。
オムトラック1台で、多い時には月に300万円近く売り上げるといいます。
今、外食産業が伸び悩む中、キッチンカーは急増中、都内だけでもこの10年で2倍に増えています。
深夜1時、東京・新宿区にあるキッチンカーの効率を高めるために欠かせないというセントラルキッチンを訪ねました。
オムライス1品だけでも飽きさせないよう、ソースは複数用意、トッピングのハンバーグやから揚げは全て手作り、たまごは腰が出るようよくかき混ぜます。
3ヵ月前に入社したばかりの成田 修斎さん(29歳)、もともとは全くの異業種、コールセンターの管理職をしていました。
しかし、この転職について、次のようにおっしゃっています。
「将来のことを考えた時に、まだ結婚もしていないですけど、いずれ結婚して子どもを看ながら、家族と一緒に仕事が出来たらいいなと思ってこの仕事に就きました。」
成田さん、家族と一緒に働き続けられるような仕事をしたいと一念発起してキッチンカーの世界へ入ったのです。
誰でもその場でオムライスが作れるような仕組みがあるので、入社してわずか2ヵ月後には店頭に立つことが出来ました。
ある日の現場は、東京・千代田区内にあるオフィス街の路地裏、彼女の広永 那(とも)さん(26歳)も手伝います。
デザインの仕事をしている那さんにレイアウトなどを手伝ってもらい、二人で店作りを工夫します。
島田社長は次のようにおっしゃっています。
「これからはキッチンカーをやりたい人間、あるいは働き方改革でジョブチェンジをした人間というのが増えてきているので、そこら辺を今私の経験を独立を支援していく中でお伝えしていきたいなと感じています。」
更にオムトラックは、キッチンカーだけでなく、都心のビルにまで出店を果たしています。
オムライスのトッピングを活用し、弁当も販売しています。
1台のキッチンカーから始まり、今では年商2億円まで成長しました。
島田社長は次のようにおっしゃっています。
「参入したい人が多くいるので、一つのビジネスモデルとして販売チャネルを多様化していくというのに教えていく機会があればなと思っております。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
キッチンカーの特徴を以下にまとめてみました。
・初期費用がせいぜい300万〜400万円で開始可能
・月々の家賃が不要
・短かい調理時間で限られたランチタイムに提供出来るメニューに特化
・それを可能にする事前の徹底した下ごしらえ
・様々なトッピングによるメニューの多様化
・弁当として既存の販売チャネルへの展開も可能
また、キッチンカーはランチタイムに短時間で食事を済ましたいと思っている、都心のビジネス街で働く人たちにとってとてもありがたい存在です。
そうした中、年商2億円にまで成長したオムトラックはキッチンカー業界の成功事例で、少なからず若者の職場として今後脚光を浴びるようになるのではないかと思います。
勿論、キッチンカー同士の競争も激しいと思いますが、そうした中で早くて安くて美味しいメニューの開発競争は利用者にとってメリットをもたらしてくれるのです。