2020年04月13日
アイデアよもやま話 No.4615 新型コロナウイルスの感染経路の把握の海外での取り組み!

世界的に新型コロナウイルス肺炎の感染が広がる中、収束に向けて各国によりいろいろな取り組みが進められています。

そうした中、少しでも感染の広がりを阻止する対応策として感染者の感染経路の把握はとても有効です。

そうした中、4月1日(水)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)でシンガポールなどによる取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

新型コロナウイルス肺炎の感染の拡大を防ぐうえで今問題になっているのが、感染経路が分からないという感染者の増加です。

3月31日、都内で確認された感染者78人のうち感染経路が分からない人は49人(約63%)にも上っています。

感染経路を追跡するために海外では個人の位置情報を国や警察が監視するという試みも始まっています。

小池 百合子都知事は次のようにおっしゃっています。

「(感染経路を)調査中というのがこれまでで一番多い49人、こういう調査をする方々も保健所の人数がかなり限られているために、こうやって次々に増えていくと増々感染源を追う作業が増えてしまっている。」

 

人手不足やプライバシーなどの問題があり、中々進まない感染経路の特定、そうした中、3月31日に政府は携帯電話会社やIT企業に対し、感染拡大防止に役立つデータの提供を要請しました。

地域ごとの人の流れを把握することで、クラスターと呼ばれる感染者の集団の早期発見につなげたいとしています。

 

実は今、世界では感染経路を追跡するためにより積極的な方法が取られています。

シンガポール政府が開発したスマホのアプリ「Trace Together」、使い方を説明する映像では、次のようにと伝えています。

 

「簡単な2つの手順であなたも新型コロナウイルスとの闘いで役割を果たそう!」

「Trace Together」では、あなたが新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触していた場合、そのことをより迅速にあなたに伝えることが出来ます。

 

シンガポールの感染者は3月27日現在、732人、このアプリは感染者と接触した人を自動的に記録するといいます。

5m以内に近づき、30分が経過するとお互いの情報を交換し、アプリの利用者が感染した場合、この情報を元に政府が濃厚接触者や感染経路を明らかにするといいます。

シンガポールの情報通信大臣は次のようにおっしゃっています。

「(感染経路を明らかにして、)感染危機にある人々を早く特定出来れば、必要な隔離を行い、(感染が)拡散する地域を限定することが出来ます。」

 

このアプリは先月20日に公開され、既に90万人以上がダウンロードしたといいます。

 

更に新型コロナウイルス感染の水際対策に力を入れる香港の食品・衛生局局長は次のようにおっしゃっています。

「香港を訪れた全ての人に(監視用リストバンドを)配っています。」

「強制検疫期間に指定した場所を離れた場合、私たちは厳しく調査し、法に基づいて取り締まります。」

 

感染防止のために配られているのは監視用リストバンドです。

香港では、渡航者に14日間の自主隔離(強制検疫)を義務付けています。

リストバンドはそれがきちんと行われているかを監視するためのものです。

スマホを通じて位置情報を確認し、指定された場所から移動したり、スマホから離れると警察に通報される仕組みになっているといいます。

 

一方、現在感染者が4831人(3月31日現在)を超えている中東のイスラエルでは、3月17日から携帯電話の位置情報にアクセスし、感染者の動向を追跡する措置を始めました。

ネタニヤフ首相は次のようにおっしゃっています。

「それはテロとの戦いに使ったことのある技術です。」

「私は今日までその手段を公に使うことを控えてきました。」

「しかし、他の選択はありません。」

「私たちは特別な手段を強いられる戦争の中で戦っているのです。」

 

感染者の増加が止まらないヨーロッパでもドイツやベルギーで通信会社が政府への情報提供に協力することを発表しています。

各国が取り組む感染経路の“追跡”は感染拡大の防止につながっていくのでしょうか。

 

日本国内でも感染経路が分からないという患者が増えて来ていますが、毎日新聞論説委員の元村 有希子さんは次のようにおっしゃっています。

「プライバシーと安全とのバランスって本当に難しいですよね。」

「これが終息した後の社会のあり方として、一つの選択肢は示していると思います。」

「ちょっと考えていただきたいのは防犯カメラですね。」

「一時期は防犯カメラはやだって言う人は多かったですけども10年、15年経つと、犯罪の抑止とか犯罪の捜査に活躍するという利点の方が注目されるようになっていますよね。」

「ですから長い目で見ると、ちょっとこういうのは検討に値するかなと思います。」

「ですが、大切なのは(資料を示して)こちらなんですね。」

「そのことによって「社会の安心」がどれぐらい具体的に明示されているか、もう一つは私権やプライバシーを侵害することもあり得る、その権利を行使する「政府への信頼」がきちんと国民の間にあるか、この二つがとても大切なポイントになると思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ちなみに、都内の感染者数の最新状況ですが、4月11日、都内で確認された感染者197人のうち感染経路不明は152人(約77%)にも上っています。

1日あたりの感染確認は4日連続で最多を更新し、都内の感染者は累計で1902人になりました。

更に感染経路不明の感染者数の割合も増加傾向にあるのです。

また、国内では新たに743人の新型コロナウイルス感染が確認され、1日に確認された感染者数の最多を4日連続で更新、初めて700人を超えました。

 

番組を通して、まず感じたことは、イスラエルのネタニヤフ首相もおっしゃっているように、今、人類は新型コロナウイルスとの戦争状態にあるという現実です。

大なり小なり、各国は新型コロナウイルスとの闘いに直面しており、平時とは異なり、非常事態にあるのです。

 

そして、日本でも4月7日、新型コロナウイルスの感染が都市部で急速に拡大している事態を受けて、安倍総理は東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を行いました。

そうした中、感染者の増加阻止に向けて、感染経路不明の感染者の感染経路の把握はとても重要です。

しかし、小池都知事のおっしゃっているように、人手不足やプライバシーなどの問題があり、感染経路の特定は中々進まないというのが現状です。

そうした中、3月31日にようやく政府は携帯電話会社やIT企業に対し、感染拡大防止に役立つデータの提供を要請しました。

今や、日本も新型コロナウイルスとの戦争状態という非常時なのですから、政府はこうした状況に対する国民の理解を早急に得ることがとても重要だと思います。

そのうえで、政府はシンガポールや香港などの事例を参考にして、関連企業の協力を仰ぎながらICT(情報通信技術)を駆使した、“感染者の感染経路把握アプリ”開発し、“感染経路の見える化”を図るべきだと思います。

どうも特に若い人たちの中には、未だに危機感を持たない人たちが相対的に多いように思えます。

しかし、このような“見える化”はこうした人たちにも危機感も持ってもらううえでもとても有効なツール(手段)になると思うのです。

 

ちなみに、先日のNHK総合テレビの報道番組で、感染経路不明の感染者の経路追跡にわずかな人数の担当者で対応している状況を報じていました。

感染者一人ひとりに担当者が電話で感染者の記憶をたどりながら感染経路を確認しているのです。

こうした人海戦術では、感染経路不明の感染者の大量の増加に十分に対応することは不可能です。

 

なお、元村さんの指摘されているように、携帯電話や防犯カメラの活用は、サイバーテロなどによる悪用のリスクが伴います。

しかし、平時においてもこうしたツールは防犯などにとても役立ちます。

ですから、常に「社会の安心」と「政府への信頼」、そして「メーカーやサービスプロバイダーへの信頼」が得られるようなシステムが求められるのです。


 
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