2020年04月11日
プロジェクト管理と日常生活 No.636 『気候クライシス その1 海水温、海面の上昇』

地球温暖化問題については、これまで何度となくこのブログで取り上げてきました。

そうした中、1月13日(月)放送の「BS1スペシャル」(NHK総合テレビ)で「気候クライシス」をテーマに取り上げ、地球温暖化問題の最新状況について伝えていました。

そこで4回にわたってご紹介します。

1回目は、海水温、および海面の上昇についてです。

 

数億年の歳月をかけ、人類を育んで来た地球、今その地球が気候変動で悲鳴を上げています。

2019年、アフリカでは南半球を歴史上最悪の暴風雨が襲い、185万人以上が被災、アメリカ・カリフォルニア州では年間7800件以上の山火事が発生、炎は民家にまで広がり、非常事態宣言が発令されました。

グリーンランドではわずか1日で125億トン、過去最大の量の氷が融解、ベネチアの町は過去50年で最悪の高潮に襲われました。

そして、日本でも巨大台風と豪雨が相次ぎ、甚大な被害をもたらしました。

 

一刻も早い温暖化対策を求め、世界各地で声を上げた若者たち、その中心となったのが、スウェーデン出身のグレタ・トゥーンベルさん(16歳)です。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?

グレタさんが信頼を寄せ、声を聴くべきだという科学者たちがいます。

彼らに送ったグレタさんの手紙には以下の文面が綴られています。

「IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change 気候変動に関する政府間パネル)の皆さん、あなたたちの“活動と結論”が私たちが立ち上がる“根拠と理由”となっているのです。」

 

IPCCは195の国と地域の科学者が参加する国連機関で、温暖化に関して最も信頼出来る情報を提供すると言われています。

2019年、IPCCは2700ページにも及ぶ特別報告書を発表、世界に衝撃を与えました。

 

このまま対策を打たなければ、海面上昇が加速し、世界の沿岸や湿地は最大で9割消失してしまうといいます。

IPCC共同議長の一人は次のようにおっしゃっています。

「もはや人類が地球に暮らせなくなる日が訪れるかもしれません。」

 

そして、干ばつや水不足による砂漠化で2億人以上が生存の危機にさらされると指摘しました。

IPCC副議長は次のようにおっしゃっています。

「気候変動は社会に大惨事を引き起こします。」

「この10年で行動しなければ、手遅れになってしまう。」

 

IPCCが警鐘を鳴らす人類の危機、その実態はどんものなのか、我々はどう向き合えばいいのでしょか。

番組では、世界の科学者たちの声、「IPCC特別報告書」から気候変動の危機に迫りました。

 

このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、今世紀末には産業革命前の19世紀より平均気温が4℃以上上昇すると見られていましたが、パリ協定では今世紀末までに上昇1.5℃未満に抑えるという努力目標を掲げました。

しかし、その後、温暖化は急速に進み、既に1℃まで上昇、早ければ2030年にも1.5℃に達してしまうことが判明しました。

パリ協定の目標を達成するには、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにする必要があることが分かりました。

IPCC共同議長のハンス・オットー・ポートナーさんは次のようにおっしゃっています。

「温暖化が進めば進むほど、地球は危険な状態に陥り、もはや人間の手に負えなくなってしまいます。」

「残された時間はわずかしかありません。」

「我々は一刻も早く行動を起こす必要があります。」

 

2019年9月、IPCCは「IPCC特別報告書」を発表、地球温暖化が海洋や南極など雪氷圏に与える影響を詳細に報告し、警鐘を鳴らしました。

その中で、ポートナーさんが特に危機感を示したのが海水温の上昇です。

1990年代以降、それまでの2倍のスピードで上昇しているのです。

これが台風などの気象災害を悪化させているというのです。

ポートナーさんは、このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、これまで100年に一度とされた大災害が2050年まで毎年のように起こるようになると警告しています。

また、ポートナーさんは次のようにおっしゃっています。

「海に囲まれた日本は、その影響を非常に受け易い地域です。」

「今後も気候変動に伴い、大型台風、豪雨や洪水などは更に激しいものとなる可能性があります。」

「だからこそ、日本の人々や政治家たちはもっと関心を持つ必要があります。」

 

温暖化により被害が拡大する気象災害、そのもう一つの要因は海面上昇です。

このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、今世紀末までに世界の海面水位は平均で最大1.1m上昇すると指摘しています。

海面上昇の大きな原因は、グリーンランドや南極の氷が溶け出していることです。

年間4000億トン以上の氷が融解しているのです。

海面上昇により、高潮などの被害がより甚大になるのです。

IPCCは、こうした海面上昇により今世紀末までに世界の沿岸湿地の最大9割が消失する恐れがあると見ています。

 

ポートナーさんは、このまま海面上昇が続いた場合、2050年までに2℃の海面上昇で10億人が影響を受け、そのうち2億8000万人が住む場所を奪われることになると警鐘を鳴らしています。

また、次のようにおっしゃっています。

「海面上昇に襲われた時、経済面からも全ての地域が乗り越えられるわけではありません。」

「そして、海面水位の上昇は予測を上回る可能性もあります。」

「人類は沿岸地域を手放すという決断に迫られる日が来るかもしれません。」

 

加速する海面上昇、日本もまたその脅威に直面しています。

今回の特別報告書では、1000万人以上が暮らすコースタル メガシティ(沿岸巨大都市)も海面上昇の大きな被害を受けるとしています。

名前が挙げられたのは、ニューヨーク、ジャカルタ、ムンバイ、上海、カイロなど22の都市、その中には東京も含まれています。

特別報告書の主要執筆者でもある、東北大学で海洋理学を専門とする須賀 利雄教授は、

他のコースタル メガシティ以上に東京の被害が深刻になる可能性があると指摘しています。

東京の東部に広がる、海よりも低い海抜ゼロメートル地帯、山手線の約2倍の広さです。

この周辺は東京有数の人口密集地帯、会社や工場も数多く集まっています。

 

IPCCに協力するアメリカの研究機関が、気温が4℃上昇した場合の東京での海面上昇を予想したシミュレーションでは、東京湾の海面は8m以上上昇、東京の中心部の都市機能がマヒ、日比谷公園も水没、最も被害が大きいのは海抜0m地帯、墨田区周辺では多くのビルも沈んでしまいます。

東北大学の須賀教授は次のようにおっしゃっています。

「(日本は)世界の国と比べても非常に大きなリスクがあるという国。」

「今まで本当に経験したことのない、今までの物差し、今まではこうだったからという経験ではもう役に立たないというか、それでは対応出来ないような。」

「ですから、今後増々自分の住んでいる場所のリスクを十分認識して行動するということが各自に求められることになると思います。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきましたが、以下にその内容を要約しました。

・2019年には、世界各国で以下の事象が起きた

アフリカでは南半球の歴史上最悪の暴風雨が襲い、185万人以上が被災

アメリカ・カリフォルニア州では年間7800件以上の山火事が発生

グリーンランドではわずか1日で125億トン、過去最大の量の氷が融解

ベネチアの町に過去50年で最悪の高潮が襲来

日本でも巨大台風と豪雨が相次ぎ、甚大な被害

・このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、今世紀末には産業革命前の19世紀より平均気温が4℃以上上昇すると見られている

・パリ協定では今世紀末までに上昇1.5℃未満に抑えるという努力目標を掲げた

・しかし、その後、温暖化は急速に進み、既に1℃まで上昇、早ければ2030年にも1.5℃に達してしまうことが判明した

・パリ協定の目標を達成するには、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにする必要がある

・2019年9月、IPCCは「IPCC特別報告書」を発表、地球温暖化が海洋や南極など雪氷圏に与える影響を詳細に報告し、警鐘を鳴らした

・1990年代以降、海水温がそれまでの2倍のスピードで上昇しており、これが台風などの気象災害を悪化させている

・このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、これまで100年に一度とされた大災害が2050年まで毎年のように起こるようになる

・温暖化により被害が拡大する気象災害、そのもう一つの要因は海面上昇である

・このまま温室効果ガスの高排出を続ければ、今世紀末までに世界の海面水位は平均で最大1.1m上昇すると指摘している

・海面上昇の大きな原因は、グリーンランドや南極の氷が年間4000億トン以上融解していることにある

・海面上昇により、高潮などの被害がより甚大になり、今世紀末までに世界の沿岸湿地の最大9割が消失する恐れがある

・このまま海面上昇が続いた場合、2050年までに2℃の海面上昇で10億人が影響を受け、そのうち2億8000万人が住む場所を奪われることになる

・海面水位の上昇は予測を上回る可能性もあり、人類は沿岸地域を手放すという決断に迫られる日が来るかもしれない

・1000万人以上が暮らすコースタル メガシティ(沿岸巨大都市)も海面上昇の大きな被害を受ける

・中でも日本は世界の国と比べても非常に大きなリスクがある

・アメリカの研究機関が、気温が4℃上昇した場合の東京での海面上昇を予想したシミュレーションでは、東京湾の海面は8m以上上昇、東京の中心部の都市機能がマヒ、最も被害が大きいのは海抜0m地帯、墨田区周辺では多くのビルも沈んでしまう

 

以上、要約しましたが、海面上昇に限って言えば、島国である日本は非常に大きなリスクがあることを認識する必要があります。

気温が4℃上昇した場合には東京湾の海面は8m以上上昇するという予測による被害だけでも大変な事態になってしまいます。

ですから、日本政府のみならず国民一人ひとりはこうした状況に真摯に向き合うことが重要な時点にさしかかっているという認識を持つことが求められているのです。

 

地球温暖化リスクは既に様々なかたちで顕在化しており、このまま対応策が不十分なかたちで進めば、私たちが思っている以上の速さで被害は増大していくのです。

また、困ったことに、リスクを大きくしている国とリスクが発生した際により大きな被害を受ける国とが対応していないのです。

具体的には、中国、アメリカという2大CO2排出国がリスクを大きくしていますが、一方でCO2排出量の少ない太平洋上の島国は水没の危機にさらされているのです。

 

こうした状況において、日本はCO2排出量が世界第5位の国であり、一方で海面上昇による被害が大きい国でもあります。(CO2排出量の国際比較の詳細はこちらを参照)

また技術先進国でもあります。

ですから、日本はCO2排出量削減に寄与する関連技術を駆使して、世界的な地球温暖化阻止に貢献するよう積極的な取り組みをすべきだと思うのです。

ところが、今の日本政府にはこうした意気込みが感じられません。

とても残念に思います。


 
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