2020年04月02日
アイデアよもやま話 No.4606 行政も注目する“フラワーカフェ”!

1月13日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“フラワーカフェ”について取り上げていたのでご紹介します。 

 

花を通じて社会全体を明るくする、そんな思いで全国初の試みに挑戦する若き女性社長を取材しました。

東京の真ん中に花とスイーツが人気のカフェがあります。

これを手掛けているのは30歳の女性社長です。

このお店、若い女性だけでなく、様々な企業や行政からも注目を集めています。

 

東京・千駄ヶ谷に今話題のお店「ローランズ」があります。

緑が溢れる店内、カフェのようですが、お客の目当てはオープンサンドです。

ライ麦パンの上には甘いイチゴがたっぷり、綺麗な花びらもあしらわれています。

いろどり豊かなオープンサンドの数々、インスタグラムで若い女性たちを引き付けています。

実は、このカフェを運営しているのは隣にあるお花屋さんです。

花をあしらったスイーツも花のプロだからこそ生み出せる作品だったのです。

花屋部門のリーダーを務める高橋 麻美さん、このお店で働いて2年半になります。

高橋さんは生まれつき身体に障害があり、身長は130cmに満たないほどです。

それでも職場で不自由を感じることはないといいます。

高橋さんは次のようにおっしゃっています。

「ここで働いていると障害のことを忘れる。」

「楽しく仕事をさせていただいております。」

 

「ローランズ」のスタッフの多くは、心や身体に障害や病気を持っています。

その数は60人のスタッフのうち45人にも上ります。

カフェスペースで働く山田 涼子さん(仮名)もその一人、精神障害系の疾患を抱えています。

こちらで働き始めて約1年が経ちました。

山田さんは次のようにおっしゃっています。

「ずっとここで働きたいなと思っています。」

 

このお店を立ち上げた若き女性社長が福寿 満希さん(30歳)です。

福寿さんは次のようにおっしゃっています。

「障害者雇用のイメージを変えていきたかったなというのはすごく・・・」

「仕事自体が楽しいものになって、人らしくみんなが働けることがすごく大切かなと思ったので、・・・」

 

このお店を訪れるお客のほとんどは障害者が働いていることに気が付かないといいます。

お店の別の階では別の仕事に従事するスタッフがおります。

作っているのは法人向けのフラワーアレンジメントです。

会社の安定収入につながるだけでなく、作業そのものがスタッフに安らぎを与えています。

そのスタッフの一人、パニック症状の経験を持つ遠藤 薫さん(仮名)は次のようにおっしゃっています。

「すごく癒されます。」

「(花に)触って、感覚と匂いと色とかたちとかで。」

 

作品の質の高さが評価されていて、契約するウェディング会場の数を伸ばしています。

こうした仕事がスタッフたちの生きがいになっていました。

遠藤さんは次のようにおっしゃっています。

「人生の中の幸せの絶頂のタイミングっていくつかあるけど、そのうちの一つのところに関われるのは、気分が良すぎて体調が悪いことなど全然忘れちゃうんですよね。」

 

障害者雇用のイメージを変えたいと会社を立ち上げ、奮闘して来た福寿さん、評判は海を渡り海外から視察に訪れるほどになりました。

大学時代に特別支援学級の教員免許を取得した福寿さん、教育実習をする中で、障害者たちの働く環境に関心を持ったといい、次のようにおっしゃっています。

「(障害者が)就職が出来たとしても、例えばシール貼り続けるとか、箱を折り畳み続けるとか、単調な作業の仕事の選択肢がほとんどで、もっと働きたいという夢を持っている子どもたちがその受け入れ先になるような会社を自分がいつか作れたらいいな・・・」

 

福寿さんは、2013年、23歳の時にたった一人で株式会社LORANS(ローランズ)を立ち上げたのです。

そして、とうとう行政をも動かすことになりました。

昨年12月13日、東京都の小池知事は新たな特例を発表しました。

会見の場で、次のようにおっしゃっています。

「障害者の雇用を促進するために、全国で初めて都がこの特例を活用すると。」

「で、障害者雇用のノウハウをお持ちの一般社団法人ローランズプラス(ローランズのグループ会社)という、こちらの出資をされて、「ウィズダイバーシティ有限責任事業組合」というLLP(有限責任事業組合)を設立したと。」

 

都が国の戦略特区制度を活用し、ローランズの新たな活動を後押しするというのです。

 

この翌週、福寿さんは東京都庁にやって来ました。

東京都の担当者との打ち合わせのためです。

小池知事の会見後、福寿さんのもとには問い合わせが相次いだといいます。

障害者雇用を巡っては、一定割合を法律で義務付けられているにも係わらず、手本になるべき国ですら1.22%で基準を満たしていませんでした。(2018年12月25日付け 日本経済新聞の夕刊記事より)

ちなみに、障害者法定雇用率は以下の通りです。

国・地方自治体 2.5%

民間企業    2.2%

 

こうした問題を解決するために、今回ローランズはLLPを設立しました。

中小企業はLLPに対し、フラワーアレンジメントなどを発注すると、中小企業はその分量に応じて障害者を雇用したと見なされます。

法定雇用率を達成したいという企業のニーズは高いと見られ、LLPでは受注が増えるのに応じて障害者雇用を増やしていく仕組みです。

 

番組取材のある日、福寿さんと何人かのスタッフは植栽メンテナンスのため東京・天王洲にやって来ました。

このエリアの植栽を一手に引き受けているのです、

そきに訪ねて来たのは、植栽を発注している寺田倉庫の役員、木村 哲章さんです。

実はローランズのLLPへの参画を検討しています。

木村さんは次のようにおっしゃっています。

「うちとしても出資参画出来るということがすごくうれしくて・・・」

「もともと天王洲エリアの緑をきれいにしていくことを企業として(ローランズに)発注していたんですけど、事業を進めていくうえでも、障害者の雇用につながっていくということでもプラスになるということで、今回(LLPへの参画を)検討しているところです。」

 

福寿さんの仲間がまた一人増えそうです。

 

障害者が生き生きと働ける場を増やしたい、福寿さんの想いは今大きく花開こうとしています。

 

福寿さんは次のようにおっしゃっています。

「様々な中小企業様と協力して、チームになって障害者雇用を推進していけたらいいなと思っています。」

「生き生きと働く人たち(障害者)が増えていくのかなと思うとすごくワクワクしますね。」

 

障害や病気を持つ方を75%雇用しているローランズですが、事業成功のポイントは以下の2つといいます。

・障害の重さに関係なく、個々の得意なことを伸ばす仕事を割り振る

・各事業ごとに5人前後のチームを組み、チーム内でアイデア出しなどコミュニケーションを散り易くする

 

しかし、全国の企業、約10万社のうち、半数以上は法定雇用率を満たしていないといいます。

解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「ここで何が問題なのかということなんですけども、要するに障害者の方を雇用しなきゃいけない、その基準を満たさない不足一人当たりについて、原則60万円/年を国に納めるという仕組みになっているんですよね。」

「一方で、実際に障害者の方を1人雇うにはどのくらいお金がかかるのかということですね。」

「給料や社会保障費などで年間260〜300万円かかるわけです。」

「更に、職場環境の整備(やカウンセラーとの契約)などの費用がかかるんです。」

「これは中小企業にとってコスト面で大きな負担なんですね。」

「そうすると、年間60万円であれば、納付金を納めて済ましちゃおうと、そういう企業が多いんです。」

「今回紹介された仕組みなんですけど、LLPというのは有限責任事業組合ですね。」

「そこが余力のない中小企業に代わって障害者の方を雇う、かなり大きな可能性を秘めていると思います。」

「他にかなり広がっていくといいと思います。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

福寿さんが取り組んでいる、ローランズを通しての障害者支援の取り組みは、以下の点でとても素晴らしいと思いました。

・障害者に働く場を提供している

・そこで働く障害者が生きがいを感じている

・事業の成功に向けて、個々の障害者に適した仕事の割り振り、およびチーム制を導入している

・全国の半数以上の企業は企業障害者法定雇用率の基準を満たしていないが、この問題の解決に、ローランズの設立したLLPは大いに期待出来る

・LLPの受注増は障害者雇用増につながる

・ローランズでの活動は海外でも評判になり、海外から視察に訪れるほどになっている

 

健常者の中でも個々人でいろいろな能力に差があります。

ましてや障害者の中では、障害の部位、あるいは程度によって業務を割り当てるにあたっていろいろな制約が出てきます。

そうした中、業務に人を合わせるのではなく、個々人によって出来る範囲を見極めたうえで業務を割り当てるというのは障害者支援にあたって、とても理に適っています。

しかも、こうした枠内で見れば、健常者も障害者もほとんど対等です。

また、障害者は孤立した労働環境よりも同じ障害者同士が一つのチームで働けることは精神的にもリラックス出来ます。

 

また、多くの企業が国の定める障害者法定雇用率を満たそうとしても、現実にはコスト的に無理な中、余力のない中小企業に代わって、ローランズが障害者を雇うという方式はとても理に適っています。

更に、少子高齢化が進む中、労働力不足を補うという観点からも望ましいです。

 

ということで、福寿さんには今後とも国内での事業拡張を進め、更には海外展開にも取り組んでいただきたいと思います。

 

なお、こうした事業展開はフラワー(花)という視点だけでなく、他のいろいろな分野においても適用出来ると思います。


 
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