2020年03月27日
アイデアよもやま話 No.4601 地球温暖化対策に最も積極的なイギリス その3 原子力発電所の廃止、および脱炭素化の推進!

イギリス大使館からの1月31日(金)付けメールでイギリスの地球温暖化対策について取り上げていました。

そこで、3回にわたってその内容をご紹介します。

3回目は原子力発電所の廃止、および脱炭素化の推進についてです。

 

洋上風力発電を推進する一方で、イギリスが脱炭素化に当たり、再生可能エネルギーの他に不可欠なエネルギーとして捉えているのが原子力発電です。

現在、イギリスの電力に占める原子力発電の割合は約20%ですが、イギリスは廃止措置と新規建設を組み合わせて、その割合を将来も維持していく考えです。

国際通商部の原子力担当である荻原澄恵商務官は次のようにおっしゃっています。

「イギリスは1956年に世界で初めて民生用原子力発電所(コールダーホール)の建設をし、1940年代から原子燃料生産・再処理も行うなど、安全性の高い原子力発電所の運転と廃止措置の経験において、世界をリードする存在です。」

 

イギリスと日本は、1960年代の東海原子力発電所(茨城県東海村)の共同建設以来、原子力の歴史を共有しており、老朽化した原子力施設の廃止措置は、両国に共通する課題となっています。

原子力発電所の廃止措置は、あくまで原子力サイクルの一工程で、安全かつ効率的に、コストをかけずに実施することが重要となります。

過去のイギリスでは、最先端技術を使用することを重視し過ぎる傾向がありましたが、原子力発電所の廃止措置は数十年単位の長期の作業になるため、現在ではその廃止措置のプロセスをいかに管理するかが重視されています。

革新的な技術ソリューションの導入と並行して、目的に合わせた「人」と「プロセス」を適切に配備することが、効率的に廃止措置を進める鍵になります。

既にイギリスでは30年以上にわたって廃止措置に取り組んでおり、その知識や経験は日本で生かされるはずです。

 

スコットランド北部のドーンレイ高速増殖炉、イギリスは原子力発電に関して70年以上の経験と知識を併せ持っています。

既に福島第一原子力発電所の廃止措置に関して、イギリスの企業が協力を行っています。

例えば、3Dマッピングで放射線を視覚化する技術を持つ企業や、廃止措置のプロジェクトを計画し管理をサポートする企業が、福島でサービスを提供しているのです。

荻原商務官は、原子力における日英両国の強い結び付きを次のように指摘しています。

「日本原子力研究開発機構(JAEA)は長年、イギリス原子力廃止措置機関(NDA)と協定を結んでおり、日本の高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃止措置にも、スコットランド北部のドーンレイ高速増殖炉で同型の廃止措置の経験を持つ、イギリスの知見が生かされています。」

 

島国である日英両国は、古い原子力発電施設が、スペースの限られた海岸沿いの農村地域に位置している共通点を持っています。

地域住民への説明や、廃止措置後の用地の利用についても、日本はイギリスに学ぶ面が多くあり、今後も日英両国の経験の共有は続きます。

今脱炭素化に向けて求められているのは、業界やステークホルダー(利害関係者)の「原子力施設の効果的な運転」から「卓越した廃止措置実施」への意識改革ともいわれています。

 

駐日イギリス大使館では、2020年2月17日から28日までの約2週間、「Clean Growth Week(クリーン成長週間)」という名称でイベントを開催します。

期間中は、洋上風力発電産業に関連するイギリス企業15社が参加するトレードミッション(展示会・商談会)や、原子力の日英協働を成功させる環境づくりをテーマにした、日英原子力産業フォーラムなどが行われます。

また期間中の2月19日には、脱炭素化を進めるイギリスで、今どのような投資の機会があるのか、先進的なスマートシティープロジェクト・最新テクノロジーの紹介や、各種ファンドの情報を含めて、日本の投資家向けのイベントが開催されます。

イベントを締めくくるレセプションでは、日本の革新的なテック企業を表彰する「テック・ロケットシップ・アワード」が実施されます。

アワードの対象企業は、革新的かつテクノロジー主体の日本のスケールアップ企業で、イギリス未進出の会社です。

また将来的にイギリスでのビジネス展開に関心を持つ会社です。

アワードの受賞企業は、イギリスの最先端のテクノロジーを体験出来るイギリス視察ツアーに招待され、イギリス政府が成長のチャンスをサポートします。

アワードには4分野あり、その一つが「Clean Growth」。プロジェクトの規模に関わらず、脱炭素化に挑戦するスケールアップ企業を応援する予定です。

 

国際通商部の小川逸佳・対英投資上級担当官は次のようにおっしゃっています。

「イギリスには、欧州のブレーンとしての能力と実績があり、スタートアップを支えるエネルギッシュなエコシステムが構築されています。」

「欧州のAIスタートアップの約半数がイギリス企業で、IPO(新規株式公開)企業、ユニコーン企業は欧州最多。投資は活況で、教育水準が高く、柔軟性を持った世界トップクラスの人材が集積しています。

受賞企業には、欧州進出の足掛かりとして、まずその第一歩をイギリスから始めてほしいと考えています。」

 

またカウワン担当部長は、最後に次のようにおっしゃっています。

「気候変動は地球の危機ですが、むしろそれをビジネスチャンスと捉えてほしい。」

「イギリスのクリーン成長戦略を見て分かるように、脱炭素化と経済成長は両立します。」

「そのイギリスの知見が生かされる、日英のコラボレーションが数多く成立することを願っています。」

「今年11月にイギリスで開催する予定のCOP26(気候変動枠組条約の第26回締役国会議)と世界の脱炭素の必要性を背景に、2月17〜28日の二週間、イギリス大使館ではClean Growth(脱炭素と経済成長) GREAT Weekを開催し、さまざまなイベントを予定しています。」

「アフリカ地域での日英協力による再生可能エネルギーの供給といった第三国での取り組みについてもこの間協議します。」

Clean Growth GREAT Weekを通じて日英のコラボレーションをこれまで以上に深化させることを期待しています。」

 

クリーン成長ならびにClean Growth GREAT Weekに関連する情報はこちらでご覧頂けます。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

洋上風力発電を推進する一方で、イギリスが脱炭素化に当たり、再生可能エネルギーの他に不可欠なエネルギーとして捉えているのが原子力発電ですが、気になるのは、現在、電力に占めるその割合は約20%で、その割合を将来も維持していく考えというところです。

イギリスはクリーン成長戦略を掲げ、温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言していますが、やはり再生可能エネルギーだけでの目標達成は無理ということなのでしょうか。

 

しかし、安全性の高い原子力発電所の運転と廃止措置の経験において、世界をリードする存在といいます。

そして、イギリスと日本は1960年代の東海原子力発電所(茨城県東海村)の共同建設以来、原子力の歴史を共有しているという事実を今回初めて知りました。

老朽化した原子力施設の廃止措置は、両国に共通する課題となっていますので、福島第一原発事故後の廃炉作業を進めるうえで、こうした取り組み年数の長いイギリスは良き相談相手になると期待出来ます。

また、日本の高速増殖炉もんじゅの廃止措置にも、スコットランド北部のドーンレイ高速増殖炉で同型の廃止措置の経験を持つ、イギリスの知見が生かされているといいます。

 

また、駐日イギリス大使館では、2020年2月17日から28日までの約2週間、「Clean Growth Week(クリーン成長週間)」という名称でイベントを開催することについては、海外進出を目指す日本の革新的なベンチャー企業にとってはチャンスを得るとても良い機会になると思われます。

 

なお、カウワン担当部長のおっしゃるように、気候変動は地球の危機ですが、それは大きなビジネスチャンスでもあるのです。

そして、イギリスの成功体験から脱炭素化と経済成長は両立出来ると言えるのです。

ですから、今後国内から再生可能エネルギー関連ビジネスを目指すより多くベンチャー企業が誕生し、イギリスなど海外の企業や研究機関などとも連携し、事業を成功させて欲しいと思います。

 

さて、こうした流れがある一方で、3月11日(水)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)によれば、原発についても福島第一原発では廃炉作業に最長40年かかるとされています。

更に、その敷地内には放射性物質を含む水を溜めこむ高さ10mほどのタンクが現在1000近く設置されており、1週間に1本のペースで今も増え続けております。

東京電力によれば、2022年の夏頃には全てのタンクが満杯になるとしています。

しかも、これらの汚染水の処分方法は未だに決まっていないのです。

 

こうした日本の状況を考えると、やはり日本政府にもイギリスと同様に2050年まで電力を再生可能エネルギーだけで賄うという挑戦的な方針を打ち出していただきたいと思います。

その際、再生可能エネルギーといえば、太陽光発電がその中心的な存在ですが、固定価格買取制度(FIT)の期間の終了を迎えつつあるので、今後の普及はそれほど見込めません。

また、メガソーラーは、環境破壊のリスクを伴います。

 

そうした中、アイデアよもやま話 No.4250 ユーグレナ バイオ燃料プラントを完成!アイデアよもやま話 No.4589 ノーベル賞級の画期的な発明 ― 電気不要、水と触媒だけで水素を製造出来る!?でご紹介したように新しい再生可能エネルギーは既に実用化されているのです。

ですから、真剣にこうした新しいエネルギーの普及拡大に取り組めば、日本が世界のエネルギー政策をリード出来る立場になるのも夢ではないと思うのです。

 

ということで、是非、日本政府には真剣にエネルギー政策に取り組んでいただき、世界各国が参考に出来るような素晴らしい政策を打ち出して欲しいと思います。


 
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