2020年03月19日
アイデアよもやま話 No.4594 究極の個人データ”顔認証”!

以前、プロジェクト管理と日常生活 No.590 『当初ずさんだったPayPayのセキュリティ対策』で、発信元の特定が難しい闇サイト、ダークウェブについて触れました。

そうした中、昨年12月25日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「巨大データ社会 あなたのデータのゆくえ」をテーマに取り上げていました。

そこで、今回は究極の個人データ”顔認証”に焦点を当ててご紹介します。 

 

今、究極の個人データと言われているのが人の顔です。

それを取得するのが“顔認証”システムですが、進化する一方で、危うさも浮き彫りになっています。

今や空港の出入国も“顔パス”の時代になっています。

成田空港では、2018年から顔認証審査システムを導入しています。

顔写真を撮り、パスポートと照合、わずか数十秒、後は無人ゲートを通過するだけです。

 

”顔認証”システムは、イベント会場などではセキュリティチェックに使われています。

他にもオフィスやスマホのロック解除から決済の承認まで、溢れる”顔認証” システム

は気づかぬ間に意外なところでも設置されています。

タクシーの後部座席で流れるタブレット広告です。

まず始めに告知が表示されます。

その一部は、以下の通りです。

「このタブレットは、フロントカメラによる顔画像認識によってお客様の性別を推定し、最適なコンテンツを配信しています。」

 

「顔画像認識を無効にされたい場合は、この画面の左下にあります「画面OFF」ボタンをタップして広告放映を止めて下さい。」

 

その仕組みは、カメラで顔画像を識別し、年齢や性別などに合わせて広告を流すというものです。

このシステムについて、以下のような利用者の声があります。

「気がつかなかったですね。」

 

「あまり良い気持ちじゃないですね。」

 

「嫌というわけではない。」

 

「何も言わずに撮られるのはちょっと嫌。」

 

休憩中のタクシー運転手が事情を教えてくれました。

「10人中8人はそのまま見て、2人は消す。」

「(理由は)個人情報のこと。」

 

更に別の運転手は次のようにおっしゃっています。

「(画面が消される理由について、)まず顔写真が撮られて、毎回同じようなコマーシャルが出て来るから。」

 

タクシーの顔認証システムの一つを運営するのがジャパンタクシーです。

顔認証の乗客への周知が不十分だったと異例の2度にわたる行政指導を受けました。

しかし、顔認証の個人データがいつどう使われているのか、気付くのは難しいのです。

 

データの集積地、東京・渋谷、センター街の入り口にあるのが1912年(明治45年)創業の大盛堂書店です。

店内の至る所に防犯カメラが設置されています。

長らく万引きの被害に悩まされて来たといいます。

船坂 良雄社長は次のようにおっしゃっています。

「138万円くらい盗られたんですね、去年(2018年)1年で。」

 

そこで今年(2019年)取り入れたのがカメラを使った顔認証システムです。

開発したのは金融機関のシステムなども手掛けるグローリー株式会社(GLORY)です。

こちらのオフィスに入る前、スタンバイ中の取材スタッフ全員の顔データを取得していました。

このシステムでは、過去に万引きをした人などの顔情報とその属性をシステムに登録します。

例えば、「盗難(常習)」、国籍は「日本」と選択するだけです。

グローリーの生体・画像認識販売企画部の越智 康雄部長は次のようにおっしゃっています。

「(この他にも)「「クレーマー」や「いたずら」など、こういったお店にとって非常にケアしていかないといけない方は、あらかじめこういう項目をご用意しております。」

「認証率はおよそ99.9%。」

 

来店したお客の中で要注意人物として登録されれば、顔認証システムで徹底的にマークされるのです。

 

そこで、顔情報を登録した記者がマスクとメガネを着けてみたところ、顔の見えているところだけに重点を置いて判別します。

更に情報の流出対策についても万全だといいます。

全ての情報が一見ランダムな文字列で、グローリーの顔認証システムに入れなければ、画像データを開くことは出来ないといいます。

その顔認証システムは、同じく渋谷にある啓文堂書店と大手の丸善ジュンク堂書店を入れた3店舗でデータベースを共同で構築しています。

それにより、個人書店がビッグデータの恩恵にあずかっています。

 

全国の書店での万引き被害額は年間200億円以上、まさに死活問題なのです。

大盛堂書店の船坂社長は次のようにおっしゃっています。

「この本(「SHOE DOG」)を盗りに1人が2日間来て、顔認証システムを入れていなければ、恐らく盗られていたと思います。」

 

個人データを収集するという告知義務はあるものの、既に防犯の域を超えつつある顔認証社会、専門家は情報管理の重要性を唱えています。

 

慶応大学の山本 龍彦教授は次のようにおっしゃっています。

「過去の前科がずっと民間事業者のデータベースの中に残っていくということがあり得るので、“スティグマ”と言われるものですが、烙印が押されてしまって、その人の人生につきまとっていくということがありますよね。」

「だから(個人情報の)登録自体の適切さを担保することも非常に重要になってきますよね。」

 

この顔を含めて、私たちの個人データは思っている以上に広範囲で活用されているようです。

個人情報の光と影について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「例えば与信判断・価格差別、つまりお金持ちとそうでない人も区別・差別するような使い方、それから就職・内定判断、これはリクナビの件で問題になりました。」

「そして世論・投票誘導、今世界中で選挙に影響を与えるようなことが行われています。」

「そして犯罪予測・監視みたいなものなんですけど、これ(個人情報の扱い)の難しいところは、100%の人がこれダメじゃないかと言っているわけじゃないんですよ。」

「例えば犯罪予測・監視については、治安維持につながるじゃないかという人もいれば、与信判断・価格差別も富裕層向けの当然のサービスじゃないかと考える人もいるわけで、そうなってくるとガチッと法規制で縛るわけにもいかないところがあるんですよね。」

「(影の部分をどうしたら少なくしていけるのかという問いに対して、)私は、最後に問われるのはデータを扱っている事業者なり、個人の倫理観。」

「結局、自分のやっていることは本当に世の中のためになっていることなのかどうかとか、正義がそこにあるのかどうかというのを、結局一人ひとりが一回自問する必要があると思いますね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

認証率がおよそ99.9%まで進んだ究極の個人データ”顔認証”を利用して、全てが片づくのであれば、何枚ものカードを持ち歩いたり、それぞれのパスワードを覚えておく必要も無くなり、いろいろな面で暮らしがとても便利になります。

そこで、以下に顔認証システムのメリット、ディメリットをまとめてみました。

(メリット)

・鉄道やバスなどの交通機関、あるいは官庁や企業、イベント、レジャーなどあらゆる施設の出入り、買い物などが全て顔パスになる

・業務で使用するパソコンなどのパスワード設定も不要になる

・スーパーやコンビニ、書店などは顔認証システムにより多額に上る万引きの被害をかなり軽減出来る

・顔認証システム、および防犯カメラを中国のように大々的に普及させれば、犯罪抑止力として、あるいは犯罪容疑者の逮捕にとても役立つ

 

(ディメリット)

・個人の立場からは、顔認証システムによりどこまで自分の個人情報を把握されているのか不安になる

・過去の前科が民間事業者のデータベースの中に残ったままだと、その人の人生にずっとつきまとっていくリスクがある

・タクシーの後部座席で流れるタブレット広告のように、乗客によっては無用のサービスを提供される

 

ということで、“顔認証”にも立場によってメリット、ディメリットがあるので、どのようにバランスを持たせるかがとても重要なのです。


 
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