昨年12月24日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で資生堂工場の国内回帰について取り上げていたのでご紹介します。
これまで工場を中国などアジアに移転することが多かった日本企業ですが、最近国内に戻す企業も出始めています。
大手化粧品メーカーの資生堂は、昨年12月24日、36年ぶりになる栃木新工場(那須)を本格稼働しました。
街の人たちは次のようにおっしゃっています。
「雇用が増えれば、(街が)活性化もするでしょうし、お金も循環するでしょうし。」
「(新たな)就職先が出来て来るかな。」
工場では、衛生管理を徹底する他、社員の6割が女性ということを受け、働き易いようにパウダールームなどを備えています。
国内工場を建設した最大の理由は、海外での需要の増加です。
2018年、中国での売り上げは1908億円で、前年より32.3%増えました。
この需要に対する供給が追い付かず、資生堂では約500億円〜600億円ほどの販売機会の損失が発生したとしています。
この工場の稼働により、中高価格帯のスキンケア製品を1億2000万個製造することが出来ます。
長谷川 修嗣那須工場長は次のようにおっしゃっています。
「現在の400人体制の人員について、将来的には1000人規模の工場になることを計画しておりです。」
「ブランドの発信拠点として地域の皆さんとともに成長・発展していきたいと思っております。」
日本の化粧品は、外国人観光客にも根強い人気です。
特に中国からの観光客からは以下のような声があります。
「9万円ほど、妻の友達に頼まれて買いました。」
「15万円前後、買いました。」
「値段は中国のものより高いですが、使った時の効果が高いです。」
「しっとりするし、中国のものと違って乾燥しません。」
「日本の化粧品は品質が保証されています。」
「アジア女性に適していて、アンチエイジングや美白に効果がある製品があります。」
「なぜなら、日本の女性もとても美白が好き、全アジアの女性も美白が好き」
日本の化粧品の根強い人気は、黒子役だった企業の急成長を促しています。
株式会社日本色材工業研究所(東京都港区)は、エスティローダーグループなど国内外のメーカー約400社の化粧品の製造を請け負っているのです。
メーカーから製造を請け負うOEMの化粧品の国内市場規模は2018年度に3250億円と4年で4割も増加しています。(矢野経済研究所調べ)
日本色材工業研究所の奥村 浩士会長は次のようにおっしゃっています。
「各メーカーさんもどんどん外注に出していくという方向へ動いているために、化粧品全体の伸びよりもOEMの伸びの方が大きい。」
茨城県つくば市、日本色材工業研究所は生産能力の不足を補うため、34億円を投じて工場を増設中です。
今は神奈川県の工場などで作ったものを充てんしていますが、来年(2020年)からはこの工場で一貫生産出来、生産能力は1.5倍にアップします。
日本色材工業研究所 つくば工場の高木 明工場長は次のようにおっしゃっています。
「つくば工場でバルク(中身)を作ることによって、お客様のご要望に応えられる時間が圧倒的に短くなりますし、・・・」
「(化粧品のメイドインジャパンのニーズが高まり、)海外メーカーからの受注も増えているといいます。」
「現実に、中国、東南アジアからも増えていますので、これはしばらく続くんじゃないでしょうか。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今回ご紹介した内容を通じて、日本の化粧品メーカーの技術力の高さ、また色白を好む日本女性向けの化粧品がそのまま他のアジア諸国の女性の願望をも満たすことから、化粧品市場が今後とも拡大する期待感が持てます。
しかも、こうした女性の願望は、価格の高さよりも所品のブランドを優先する傾向があるので、利益率も高いと思われます。
さて、資生堂は、海外での需要増による機会損失対策として、工場の国内回帰を果たしたといいますが、なぜ人件費の高い国内への工場回帰なのか、番組を通して考えられるのは、ブランドの発信拠点としての位置付け、および外国人観光客の増加です。
更に、中国の人件費の高騰、そして今回の中国発のコロナウイルス感染などの国情不安リスクも検討されたのかもしれません。
いずれにしても、大手メーカーによる工場の国内回帰は、下請け企業や今回ご紹介した日本色材工業研究所のような関連企業にとっても、あるいは国内の雇用創出の観点からも望ましいと思います。