2020年03月02日
アイデアよもやま話 No.4579 財政出動がデフレ圧力になる!?

昨年12月9日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で財政出動によるデフレ圧力リスクについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

番組コメンテーターでクレディ・スイス証券 チーフ・マーケット・ストラテジストの市川 眞一さんは次のようにおっしゃっています。

「財政が出れば出るほど、実は長期的にはデフレになるんじゃないかと思っているんですね。」

「財政支出というのは弱いところに向かっていくわけですね。」

「そういった弱い供給力を温存してしまうことになりますから、勿論経済危機の時には当然なんですけど、それをやり過ぎると、実は生産性が落ちてしまう、供給過剰が続いてしまう。」

「結果的にはデフレ圧力が続いてしまうんですね。」

「実際、国の一般会計の対GDP比率を見ていくと、1990年代から増えていってるんですけども、その間に安倍政権が重視する生産性は実は落ちているんですね。」

「勿論、これだけで説明出来るわけではありませんが、やはり財政はなるべく小さく出して民間にお金が回るようにしなければいけないと思いますね。」

「(安倍政権解散を視野に入れての経済対策なのかという問いに対して、)そうですね、19年度補正予算と20年度予算を合わせて15ヵ月予算とすることで来年(2020年)秋まで景気を底上げして、その上でオリンピック/パラリンピックが終わって、国民的に意識が高まっているところで解散、そういう極めて政治的な色彩の濃い、こういった経済対策なんじゃないでしょうかね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

市川さんの指摘されているように、もし安倍政権が今進めている財政政策が今年の解散を視野に入れての経済対策だとしたら、国民としてはどうかと思います。

安倍政権の進める政策は、あくまでも解散といったようなノイズに左右されないかたちで今後の日本の進むべき方向性に沿って進めていただきたいと思います。

 

また、市川さんの指摘により、財政政策には、経済危機対策としての財政出動による景気浮揚だけでなく、弱い供給力、すなわち生産性の低い、競争力の弱い企業を温存してしまうリスクという2面性があることが分かりました。

国の一般会計の対GDP比率が1990年代から増えている一方で、その間に安倍政権が重視する生産性が落ちているという状況は無視出来ません。

なぜ生産性が落ちているのか、その原因究明が求められます。

 

なお、労働生産性の推移(こちらを参照)を見ると、2015年度から2018年度にかけて多少の増減はありますが、ほとんど変化がありません。

また、労働生産性の国際比較(2019年)は以下の通りです。(詳細はこちらを参照)

・日本の時間当たり労働生産性は46.8ドルで、OECD加盟36カ国中21

・日本の1人当たり労働生産性は81,258ドルで、OECD加盟36カ国中21

・日本の製造業の労働生産性は98,157ドルで、OECDに加盟する主要31カ国中14

 

資源小国、日本がこれからも豊かであり続けるうえで、労働生産性が上記のような状況はとても由々しき問題だと思います。

高いと言われて来た製造業の労働生産性でさえOECDに加盟する主要31カ国中14位なのですから。

 

労働生産性を高める方法は明らかです。

それは、IT、AI、ロボット、IoTなどのテクノロジーを積極的に導入し、業務プロセスのリストラを進めればいのです。

もう1つ、重要なことは新たな需要を掘り起こすよう、自社の強みを生かした新製品開発です。

しかし、市川さんの指摘されているように、財政出動が結果的にこうした企業努力を抑制するような逆効果があるとすれば、財政政策を見直す必要があります。

 

一方で、日本の企業経営者は総じて未だにかつての高度成長期の“ジャパン・アズ・ナンバーワン“と言われていた頃のとても大きな成功体験の呪縛から逃れられていないのではないかという懸念も残ります。


 
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