2020年02月29日
プロジェクト管理と日常生活 No.630 『中国の監視社会が暗示する個人情報保護の危うさ』

昨年10月25日(金)付けのネットニュース(こちらを参照)で中国における監視社会の現状について取り上げていたのでその一部を要約してご紹介します。

 

(空港に一歩降り立つと そこは監視カメラの世界)

・以前は、ターミナルビルの到着階や出発階の前は、いつも大混雑状態だったが、監視カメラの威力のお陰で車の流れがかなりスムーズになった

・3分間以上ターミナルの前に駐車すると、監視カメラに車のプレートナンバーを記録され、その画像がビックデータによって解析されて、駐車違反とされるからだ

・車のドライバーは、後日、違反切符を取られ、罰金とポイントの減点に関する通知書が届けられる

・弁解の余地はまったくない、監視カメラの記録が完璧だからだ

・無理に駐車しようとすると、監視カメラがその一部始終を記録しており、交通違反になってしまうので、監視カメラの導入後、これまでのように勝手に駐車出来なくなった

 

(監視カメラの威力)

・日々進化する顔認証システムと、ディープ・ラーニング技術に支えられたAIがリンクして、大きな監視ネットワークが形成されており、その威力は、驚くべきものへと進化している

・その監視カメラと顔認証システムに象徴される監視ネットワークが存在することにより、これまで都市部によく見られた違法駐車現象が大幅に改善された

・昨年(記事掲載時)、上海に近い浙江省の地方都市・嘉興市で行われた香港俳優ジャッキー・チュンのコンサート会場で、3人の逃亡犯が相次いで逮捕されたが、容疑者が顔認証カメラを設置したセキュリティ・チェックポイントを通ってから数分後、「逃亡者に似た人物が現れた」という合図が警察当局のシステムに届き、その後警官がスタンドの出入り口で張り込み捜査していたところ、コンサートが終了して出て来た逃亡犯の身柄を難なく確保することが出来た

・深セン市の交通警察は顔認証システムを利用して、信号無視した人を撮影し、名前、写真などの個人情報を、街の通りにあるスクリーンモニターと「信号無視通行人スクープ」というサイトに公開した

・現在、少なくとも5つの都市で交通規則違反の通行人を認識する技術が使われている

 

(プライバシー保護とのせめぎ合い 社会問題化する「監視社会」)

・こうしたことは、個人としてのプライバシーはどこまで侵害されているのか、という国民の不安を呼び、社会問題化している

・一方、顔認証システムと社会信用システムの構築は、まさに中国人の行動モラルを再構築している。

・中国社会では、自らの都合だけを優先して社会的モラルを無視したり、公共秩序を乱したりする行為が、信じられないほど多発している

・最近、こうした無責任な行動をとった人に対して、飛行機や列車への乗車制限を行うといった処罰を設けるようにしたが、効果は抜群のようだ

・中国では、満16歳(以上)の国民は全員必ず政府が発行した写真付きの身分証を持っているので、政府はびっくりするほどの規模を持つビッグデータを管理していることになる

・第135ヵ年計画(2016年〜2020年)によると、2020年までに100の新型スマート都市において、顔認証システムの構築が推し進められている

・社会全体と国民個人に対する政府のガバナンスも、無限に強化されていく

・顔認証システムの強化により、陳情、権益の保護、実権を握っている人に対する批判などの行為も監視され、抑制されてしまいかねない問題にもつながっていく

・それらは、やがて大きな社会問題へと発展していく恐れがあり、バランスをとるための解決案は、まだ見つかっていない

・(日本でも)成田空港や羽田空港で出入国手続きをするとき、最近、顔認証システムを使って手続きをする人が増えてきた

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

今や技術の進歩により、監視カメラと顔認証システムとの組み合わせにより、誰がいつどこにいたか、あるいは今どこにいるかを追跡出来るようになったのです。

そして、共産党による一党独裁の中国では、今回ご紹介したような状況が現実なのです。

今の中国は、位置に関する個人情報については完全に個人情報の保護は崩壊していると言えます。

 

さて、日本の状況ですが、運転免許証やマイナンバーカードには本人の写真が載っていますから、この写真と他の個人情報を組み合わせれば、中国と同様に技術的には監視社会を実現出来るのです。

そして、監視社会では、従来の捜査に比べて格段に効率的、かつ効果的な犯罪容疑者の逮捕が可能になります。

また、顔認証に限らず、例えばスピード違反をしたクルマのナンバーを防犯カメラで読み取れば、ナンバー認証で違反者を容易に捕らえることが出来ます。

ですから、こうしたシステムはいろいろな犯罪の大きな抑止効果をもたらします。

一方、こうした権限を持つ人によって、定められた用途以外で使用されるようなことがあれば、個人情報の違法使用となります。

更には、こうした個人情報データがサイバー攻撃などで盗まれるようなことがあれば、取り返しがつきません。

ですから、個人情報の活用と個人情報データの盗難リスクとを秤にかけて、その時代時代の技術レベルを考慮したかたちで最善のあり方を常に追求するというのが取り組み方として妥当ではないかと思うのです。

 

なお、中国の監視社会は今、習近平政権の意のままに進められているように見えますが、日本は個人情報の活用に際し、この中国の状況を大いに参考にすべきだと思います。


 
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