2020年02月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.629 『地球温暖化対策に消極的な日本!』

昨年10月19日(土)付けネットニュース(こちらを参照)で地球温暖化対策における世界の趨勢について取り上げていたので以下にその内容を要約しました。

 

(グレタさんを批判している場合か)

・昨年9月23日にニューヨークで開催された「国連気候アクション・サミット2019」では、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんが発した演説や、小泉進次郎・新環境大臣の質疑応答の様子が日本でも報じられ、2015年の気候変動枠組条約COP21パリ会議よりも遥かに多くの人の話題に登るようになった

・しかし、今回のアクション・サミットでは、政府、投資家、企業から、ものすごい数のコミットメントがあったにもかかわらず、日本の報道機関はその内容をほぼどこも報じていなかった

・サミットで、「あなた方は、その空虚な言葉で私の子ども時代の夢を奪いました」「あなた方は私たちを裏切っています」とスピーチしたグレタさんに対して、「環境問題だけでなく経済も大切なことを大人がグレタさんに教えてあげなければいけない」と諭す意見や、「東日本大震災で原子力発電が停止した日本では、なかなか難しい議論だ」という言論が日本には溢れかえるようになった

 

(巨額マネーが動き出した)

・国連気候アクション・サミットは一つの国際会議だが、今や主役は政府だけでなく、企業や投資家も同じように存在感を発揮している

・その運用額の合計は3770兆円という世界の主要機関投資家515機関は、9月19日、サミットに参加する各国政府に対し、以下の注文をつける共同宣言を行った

・パリ協定で各国が自主的に宣言したCO2の削減目標が不十分なので、2020年までに削減目標を引き上げること

・政府政策を全てパリ協定と整合性のあるような内容にすること。

 ・石炭火力発電を段階的に全廃し、さらに化石燃料の消費量を削減するための政策課税である炭素税を導入すること

・科学者によると、パリ協定での各国政府の削減目標が全て達成されても、パリ協定で定めた国際的なゴール(気温上昇を2℃ないしは1.5℃以内に抑える)は達成されない

・そのため、機関投資家は、さらに気候変動を抑えるような規制を強化し、政策を導入するよう政府に圧力をかけている

 

(銀行の「融資」が変わる)

・今回は投資家だけでなく、銀行からも巨大な宣言があった

・9月23日には、銀行の融資が、環境や社会にどのような影響を与えているかを自主的に測定し公表していく「国連責任銀行原則」が発足し、世界から131の銀行が自主的に署名した

・署名銀行には、4年以内に6つの原則を完全に遵守することが義務付けられており、気候変動に対するインパクトを公表していくことも入る

・こうした銀行のうち35社は9月23日、この内容に飽き足らず、新たな活動「気候アクションに関する集団的コミットメント」を始めた

・35社は今後、3年以内に融資先企業でのCO2削減目標を、パリ協定と整合性のある形で策定することが義務化され、毎年の進捗公表も必須となる

 

(気候変動が「巨大な経営リスク」と化す)

 ・これらの銀行が目標達成するには基本的に2つしか道はなく、CO2排出量の多い融資先に削減するよう求めるか、CO2排出量の多い企業への融資をやめるかのいずれかとなるが、それに銀行が自らコミットした

・投資家も銀行も、気候変動が異常気象や海面上昇をもたらし、社会を揺るがすような危機を発生させると考えているからである

・実際に主要国の金融当局は、気候変動がリーマン・ショック級、もしくはそれ以上の金融危機を起こすことを恐れ、金融当局による「業界団体」を発足している

・そこには、日本、中国、香港、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、スウェーデン、シンガポールなど42ヵ国・地域が参加している

・機関投資家12機関はサミットと同じ9月23日、投資先企業にビジネスモデルの脱炭素化を求めるエンゲージメントを直ちに開始した

・企業においても気候変動が巨大な経営リスクになると考えており、グローバル企業87社がパリ協定で定めた「2℃目標」よりも高い「1.5℃目標」を達成するためのCOP削減目標を自ら課すと宣言した(日本からは丸井グループ、アシックスの2社のみが参加)

 

(2050年までにCO2排出量をゼロへ ― 企業からのアクション)

・ダボス会議で有名な「世界経済フォーラム」は9月23日、CO2排出量の多い重工業で、2050年までにCO2排出量をゼロにするミッションを背負った活動を8つも発足した

・対象となったのは、トラック・バス、海運、航空、アルミニウム、セメント、自動車、総合科学、鉄鋼の8業界で、先進企業自身が自主的に加盟し、活動を率いていく

・残念ながら日本企業からのリーダーシップはないが、欧米企業が競うように参加を表明している

・世界経済フォーラムは別途、自動車業界ではEVと自動運転を推進し、乗用車からのCO2を95%削減する活動も発足し、BMW、フォード、Uberが幹部企業となることが決まった

・エネルギーを日常的に大量消費している不動産業界からも、2050年までにCO2排出量をゼロにする活動が9月23日に生まれた

・そこには欧米の建設会社や建材メーカーとともに、金融機関や、ケニア、トルコ、アラブ首長国連邦、英国の4ヵ国政府も加盟した

・食品・小売業界では、食品や原材料生産でのCO2排出量を減らすため、2030年までに食品廃棄物を半減させる活動が発足し、加盟企業は仕入先企業にまで削減をコミットさせにいく

・この活動に、欧米の小売大手ウォルマート、テスコ、イケアフード、メトロ等に並んで日本からもイオンが加盟した

 

(2050年までにCO2排出量をゼロへ ― 置き去りの日本)

・今回のサミットでは、2050年までにCO2排出量をゼロにすることを自主的に宣言した企業は65ヶ国にのぼる

・日本では、東京都と横浜市のみが宣言に加わった

・同時に70ヵ国は、パリ協定で表明した各国の削減目標を2020年までに自主的に引き上げると宣言した

・日本政府としては、2050年までのCO2排出量ゼロにも、2020年までの削減目標引き上げにも参加してない

・環境対策を進めれば、経済や私たちの生活が犠牲になると言われていた時代は、世界ではとっくに通り過ぎており、投資家も企業も政府も経済成長と私たちの生活を守るために気候変動対策を進めているが、日本国民はいつ目覚めるのか

 

以上、ネット記事の内容を要約してご紹介してきました。

 

更に、私なりにキーポイントを整理してみました。

・パリ協定での各国政府の削減目標が全て達成されても、パリ協定で定めた国際的なゴール達成の見込みはないと専門家は指摘していること

・そのため一部の機関投資家は、さらに気候変動を抑えるような規制を強化し、政策を導入するよう政府に圧力をかけていること

・巨大投資機関や金融機関は、投資対象や融資先の決定要因としてCO2排出量の削減など、地球温暖化対策への取り組み度合いを加え始めていること

・日本国内の取り組みは海外に比べて遅れていること

 

さて、日本政府の取り組みですが、未だに石炭火力発電の新規建設予定があること、あるいは太陽光などによる再生可能エネルギー発電の発電量全体に占める割合の少なさからすると、やはり既存の電力会社の既得権益への配慮、あるいは本気で地球環境問題に取り組む姿勢があるのかといった疑問を感じざるを得ません。

一方、経団連の中西会長は、昨年12月9日、先端的技術を強化して“脱酸素”を目指そうと呼びかけたといいますが、総じて企業や国民においても、国の姿勢を動かすほどの動きは今のところありません。

また、実際に再生可能エネルギー発電を導入したり、本格的に省エネに取り組んでいるのは、地球環境問題に関心の高い一部の企業や国民に限られているように思います。

 

しかし、昨年発生した大型台風や集中豪雨が日本各地にもたらした膨大な被害、あるいは今年の暖冬などからも、一部の専門家が指摘しているように地球温暖化のスピードは従来の予測よりも早まっているようです。

 

では、日本においてどのような対応策があるでしょうか。

希望的観測も含めて、以下に私の思うところをまとめてみました。

・“脱原発”、“脱化石燃料”、すなわち“再生可能エネルギー”へのシフトを掲げ、しかも経済的にも多くの国民に負担をかけないような、納得出来るような政策を打ち出す姿勢棟が現れること

スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16歳)のような、地球環境問題に影響力のある人物が登場し、国民の意識を大きく変えること(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?』、およびプロジェクト管理と日常生活 No.612 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その2 本格的に動き出した企業による地球温暖化対策!』)

・企業、あるいは個人の中で、誰でもすぐに出来るような再生可能エネルギーなどを使ったビジネス、あるいは暮らしが成功事例として公開され、それが広く普及すること

・画期的な再生可能エネルギー発電装置が開発されること(参照:アイデアよもやま話 No.2025 私のイメージする究極の発電装置とは・・・

 

ちなみに、1人当たりのCO2排出量では、アメリカ、韓国に次いで日本は世界第3位なのです。( 出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2019年版)


 
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