2020年02月17日
アイデアよもやま話 No.4567 アリババの「独身の日」セールにみる、現在の商業ビジネス成功のカギ!

中国のネット通販最大手、アリババの巨大な売り上げについては、アイデアよもやま話 No.4485 脱「日本型雇用」の波!でも触れました。

そうした中、今回は昨年11月11日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアリババの「独身の日」セールを軸に、日本企業、2社の取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

11月11日は独身の日です。

この日はネット通販の大型セールが恒例となっています。

このセールはアリババが2009年に始めたもので、2018年は24時間で約3兆3000億円を売り上げたという一大イベントです。

日本の企業も数多く参加しており、社員わずか20人で2018年に1億円を売り上げた注目の化粧品会社も独自の戦略で2019年のセールに臨みました。

 

中国では今や国民的イベントとなったアリババによる昨年の「独身の日」のセール、日本時間の午後5時半過ぎには一昨年の売り上げを上回り、過去最高の取引額を記録しました。

アリババのバイスプレジデント、蒋凡(Jiang Fan)さんは次のようにおっしゃっています。

「今年(2019年)の「独身の日」は新記録が出た。」

「ユーザーの数、規模など、アリババは海外企業が中国市場に入る懸け橋になることが出来た。」

 

2019年の特徴は、100万点にのぼる限定品や新商品の出品、そして高級自動車メーカー、ボルボも発出品し、約100万円という大幅な値引きで注目を集めました。

更に、日本企業の売れ行きも好調、ユニクロやパナソニック、ソニーなど、中国でも人気のブランドがセール開始1時間で約15億円の取引額を達成しました。

 

このセールにアリババとのタッグで臨む日本の大手企業がありました。

化粧品大手の資生堂です。

2019年3月、アリババとの戦略提携を結び、アリババ本社からクルマで5分ほどの場所に「戦略提携オフィス」を開きました。

資生堂の狙いは、アリババの持つ顧客のビッグデータ、顧客の年齢や性別、趣味といった大量のデータを分析して中国人に受ける新商品の開発を進めています。

資生堂中国の小柳 康祐さんは次のようにおっしゃっています。

「これが今、アリババさんの、この辺だったらどういう年齢軸でどのエリアの人たちが売りかというのが見えますので、・・・」

 

アリババの顧客データを分析したところ、中国の女性の多くは毎日髪を洗う習慣がなく、髪をあまり洗わなくても清潔さを保てる商品にニーズがあると分かりました。

そこで今日(昨年11月11日)の「独身の日」に向けて開発したのが、頭皮用と髪用の2本に分かれているシャンプーで、清潔さを長くキープ出来るのが特徴です。

小柳さんは次のようにおっしゃっています。

「日本では中々思い付かないですね。」

「どうしても固定概念じゃないですけど、当たり前と思ってしまっているので、裏側のアドバイスをアリババさんから直接その場でいただきますので、そばにいていいと思います。」

 

このシャンプーをはじめ、資生堂が「独身の日」に出品した33ブランドのシャンプーの売り上げは2018年を大きく上回るペースで推移、セール開始1時間で15億円を超える取引を達成した日本企業に名を連ねました。

今後もアリババとのタッグを強化し、中国市場での売り上げを伸ばしたい考えです。

資生堂中国の藤原 憲太郎CEOは次のようにおっしゃっています。

「ほぼ毎日ぐらいの割合でアリババさんに来ていただいたり、我々の社員と一緒に議論しながら新しい価値を届けると、この市場が広がりそうだなという、次の成長機会を生み出すことが出来る。」

「これが結構一つの大きな成果になっていくんではないかなと。」

 

一方、東京町田市にある、社員20人ほどの化粧品メーカー、成和インターナショナル株式会社では、中国の協力会社とネットでつなぎ、売り上げを見守ります。

早い段階で売り上げ目標を達成した、この会社が販売しているのはヒアルロン酸原液です。

社長の岸川 良己さんは次のようにおっしゃっています。

「ヒアルロン酸原液そのものを容器に詰めて、お客さんに出荷しています。」

「年々、2〜3割アップで売り上げが伸びてきました。」

 

ヒットのきっかけとなったのが中国版ツイッターです。

2018年に有名女優がつぶやいたことで評判になり、2018年5月に中国で行われた、アジア最大級の美容イベントでも多くのお客を集めました。

年間33億円を売り上げ、そのうち中国での売り上げが4割を占めています。

更に中国での売り上げを伸ばそうと、2019年に中国のマーケティングに詳しい女性社員、李さんを雇い入れ、独自の戦略で「独身の日」に挑みました。

李さんは次のようにおっしゃっています。

「去年(2018年)の10月くらいに基幹店を立ち上げまして、いろんなSNSを使ってプロモーションを行いました。」

 

注目度を高めるため、中国のSNSで人気のインフルエンサーを起用しました。

そして、「独身の日」を迎えた2019年11月11日、現地中国では協力会社の社員が総出で対応に当たります。

その机の上には「食べずに、寝ず、パソコンの電源も切らず、必死に挑みます」と書かれた紙が掲げられています。

また、インフルエンサーが繰り返しライブ配信して、購買意欲をかきたてます。

2018年の1日の売上高1億円に対し、2019年はその1.5倍の売り上げ目標を掲げていて、メインのサイトでは午後10時の段階で順調に売り上げを伸ばしています。

岸川社長は次のようにおっしゃっています。

「「独身の日」で話題性を取って、そこから先に進むという、大きなテーマとしては大事な要素だと思います。」

 

こうした状況について、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄教授は次のようにおっしゃっています。

(日本企業も)「独身の日」に合わせて会社の規模を問わず、戦略的なマーケティングを展開している状況について、」ポイントは「独身の日」と言われてるんですけど、本当は「独身の20日間」ぐらいじゃないかと思ってるんですね。」

「EC(Electronic Commerce:インターネットを利用した小売ビジネス)の特徴があって、ECというのは、買うモノを決める日と実際に買う日が違っていいんですよ。」

「ネット上に買い物カゴみたいのがあって、まず予約しておいて、でも実際に安くなるのは11月11日の「独身の日」だけだから、その時に買うボタンだけ押せばいいわけですね。」

「ですから、今中国で起きていることはこれで、事前に買い物かごに入れておいて、その日に押すんですよ。」

「実際に、資生堂も今回、20日ぐらい前から予約を開始していると言われていまして。」

「ですので事前のマーケティングですね。」

「インフルエンサーを使ったり、SNSを使ったりということがより重要になってきているということですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

中国における日本企業2社、化粧品の大手メーカー、資生堂と中小企業の成和インターナショナルの活躍を見てきましたが、番組を通して見る中国におけるビジネス成功の秘訣について、以下にまとめてみました。

・ビッグデータを保有するアリババなどネット通販との商品開発における協業

・魅力的な商品の開発

・ツイッターなどのSNSやインフルエンサーを活用した宣伝活動

 

メーカーがより魅力的な商品の開発を進めるうえで、潜在需要も含めて消費者は何を求めているのかを知ることは重要な手がかりになります。

そして、顧客の年齢や性別、趣味、あるいは収入といったビッグデータを入手して分析することは、こうした重要な手がかりを把握するうえで強力なツールになります。

そして、このビッグデータを保管・管理しているのは大手通販サイトのプロバイダー(運営会社)というわけです。

ですから、世界各国において、ネット通販のプロバイダーはより多くのビッグデータを得るためにも最大手の通販サイトを目指して熾烈な戦いを繰り広げているのです。

 

そして、実際に中国最大手の通販サイト、アリババは海外企業にとっても中国市場に入る懸け橋になっているだけでなく、ビッグデータを活用した商品開発という新たなビジネスを展開し、それがサービスを提供する企業の商品開発を強力に支援し、売り上げにつながれば、その企業にとってもアリババにとっても売り上げ増になり、まさにWinWinの関係が築かれるのです。

しかも、こうした商品開発における協業の必要性は、一時的なものではなく、定期的、あるいは不定期に発生してきます。

ですから、こうした動きは今後加速度的に広がっていくと思われます。

 

ということで、ビッグデータの誕生は、AIなどの活用と相まって新たな“商品開発革命”をもたらすと言えます。

そして、こうした状況は、ネット通販業界において世界的に更なる通販サイトの二極化をもたらすと容易に想像出来ます。

また、一方で、ビッグデータのより高度な活用を目指して、アイデアよもやま話 No.4048 健康診断の結果の提出だけで保険料が割引に!?でご紹介したようなデータアナリストという職業に就く人たちが増えていくと思われます。

このように時代の大きな変わり目には新しい職業が誕生するのです。

 

さて、こうした通販サイトとは別に、魅力的な商品をより多くの人たちに知ってもらううえで、ツイッターなどのSNS、そして一般の人たちに多大な影響力のあるインフルエンサーと言われる人たちの存在はとても大きいです。

なぜならば、どこの国でもそうだと思いますが、今や日本国内においても若い人たちを中心に新聞の定期購読をしている人はあまり見かけることは無くなり、SNSも含めてネット上に存在する情報に接する機会が圧倒的に多いからです。

しかも、SNSでは、新聞や雑誌、あるいはメーカーや販売会社のオフィシャルサイトでの広告宣伝よりも参考になる、実際に商品を購入した多くの人たちの生の感想にも触れることが出来ます。

ネット社会以前には、“井戸端会議”という言葉に象徴されるように、些細な出来事の情報はごく周辺に留まり、広範囲に拡散されることはあまりありませんでした。

しかし、今や世界中のどこで起きたことでも、ネットを介して瞬く間に世界中に広がっていくような時代なのです。

ですから、私たちはまさに“コミュニケーション革命”の真っただ中にいるとも言えるのです。

 

ということで、今回は中国における、アリババの巨大な「独身の日」セールを軸に中国で活動する日本企業、2社の取り組みについてご紹介してきましたが、ネット通販、およびSNSが現在の商業ビジネスにおいて欠かせない存在であるとあらためて感じました。


 
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