2020年02月13日
アイデアよもやま話 No.4564 ビッグデータの活用で売り上げ増!

今やビッグデータという言葉を聞かない日がないくらい、“ビッグデータ”という言葉自体は私たちの間にかなり浸透してきました。

しかし、実際にビッグデータが具体的にどのように使われているのかについてご存知の方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

そうした中、昨年10月31日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でビッグデータの活用による売り上げ増について取り上げていたのでご紹介します。 

 

インターネットを使って日常のちょっとした疑問やあまり人に聞けない困りごとを検索することも多いのではないでしょうか。

そんな日常的な行為で蓄積されたビッグデータから意外なヒット商品が生まれています。

 

日常生活に定着したネット検索、日々集まる膨大な検索データを広告や宣伝だけでなく、商品やサービスの開発に生かす取り組みを始めたのがヤフーです。

ヤフーが昨年10月31日に発表したのが、検索や悩みをウェブ上で相談する「ヤフー知恵袋」といったサービスで集めたデータを統計情報としてまとめ、企業や自治体に活用してもらう新たなサービス、「データソリューションサービス」(月10万円〜)です。

アンケートなどで消費者のニーズを探るのは、商品開発では昔からよく使われている手法です。

 

ヤフーの持つビッグデータは、従来のアンケート調査などと何が違うのでしょうか。

ヤフーの佐々木 潔執行役員は次のようにおっしゃっています。

「まずは量ですね。」

「アンケートは多くても数万、数十万じゃないですか。」

「ですけども、ヤフーのデータを使うと数千万人の生の声がニーズとして分かるというのが一番大きいですね。」

「多面的にニーズが得られると。」

「どういう検索をして、どういうニュースを見ているのか分かりますので、全体のユーザーのニーズが捉えられるという強みがあると思います。」

 

ヤフーがサービス開始に先立ち行った実証実験でヒット商品を生んだのが三越伊勢丹です。

三越伊勢丹は、ビッグデータを活用して自社の通販サイトで販売するロングスカートをヤフーと共同開発しました。

発売から1週間の売り上げは、これまでサイト内で一番売れたスカートに比べ、2.6倍となりました。

 

どのようにビッグデータを活用したのでしょうか。

今回の商品開発では、25〜35歳の女性をターゲットに、服装を含む膨大な検索キーワードから検索の上位に上がった「ロングスカート」に着目、「ロングスカート」を調べた人がどういう悩みを持って検索したのかを深堀りしました。

その結果、「抱っこ紐(ひも)」、「服装に困る」という悩みが多いというニーズを導き出しました。

三越伊勢丹の原 玲子さんは次のようにおっしゃっています。

「最初、データをいただいた時は、これはどういうことなのかと思ったんですけど、沢山あるデータと細かい「ヤフー知恵袋」の悩みみたいな2軸のデータがあったのがすごいニーズにつなげ易かった。」

 

そうして生まれたのが商品名「ママと作ったエプロンスカート」、価格は6600円の商品です。

一番のポイントはポケットの位置で、抱っこ紐を付けていても塞がらないようにかなり下の位置に付けています。

三越伊勢丹の竹林 憂さんは次のようにおっしゃっています。

「どうしてもものづくりをする中で、固定概念としてポケットは付けようと、この(従来のスカートと同様の)位置に設定してたんですけども、そこに対して抱っこ紐のコーディネートの際にそれでは困るという声事態は我々拾えていなかったので、・・・」

 

購入した女性の一人は次のようにおっしゃっています。

「ポケットがなかったり、抱っこ紐をよくするので、その時に(ポケットに)手が入らなかったりするんですけど、これはそういう悩みが解消されて作られたので、実際にはいてみると本当に使い易いので、・・・」

 

また別の女性は次のようにおっしゃっています。

「スリットが後ろにも前にも入っているので、足の幅が開き易い感じ。」

 

自転車に乗り易いようにスリットも入れました。

ビッグデータを活用したことで、これまで気づかなかった潜在的なニーズを掘り起こすことが出来ました。

 

ヤフーは今後ビッグデータを自治体などにも提供、混雑予想など様々な分野で活用していく方針です。

ヤフーの川邊 健太郎社長は次のようにおっしゃっています。

「ヤフーのデータの力を他の企業様ですとか他の団体様に開放することによって、もっと日本全体を効率的に出来たりですとか、あるいは創造的に出来たりですとか、もっと日本を安全にすることが出来るんではないかなと・・・」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

今でも企業はアンケート調査により、商品やサービスに対する評価コメントを集めて商品の改善、あるいは新たな商品開発に役立ててきています。

しかし、こうした手法では、番組内でも指摘されているように数に限りがあります。

一方、今やSNSや「ヤフー知恵袋」のようなサイト、あるいはネット上での購入した商品や受けたサービスへの評価コメントを介して、昔で言うところの井戸端会議や悩み相談、そして商品やサービスに対する評価など、様々な情報がネット上に“宝の山”として存在しています。

しかし、こうした大量のデータ、すなわちビッグデータも人海戦術で整理したり、分析しようとしても時間的、あるいは人的制約で活用することは出来ません。

しかし、従来の統計的手法やIT、AIなどの先端技術を組み合わせ、更にヒトの直感や創造力を活用することによって、従来は考えられないような商品開発が可能になったのです。

今回ご紹介した、ヤフーと三越伊勢丹の共同開発による、これまでにないようなユニークなスカートはその先例と言えます。

 

ここで注目すべきは、商品開発にいくらAIやビッグデータを活用しても、最後にどのような商品開発を進めるべきかを決定する上で重要なのは、従業員の感性や日々顧客と接している従業員の“現場力”などを反映させたヒトによる判断であるということです。

AIに関してよく言われるほうに、少なくとも現在のAIには、こうした“現場感覚”が欠落しているのです。

ですから、私たちは、あくまでも最終決定の主体はヒトであり、AIに丸投げするのではなく、AIやビッグデータの示す内容は貴重ではありますが、それは参考意見レベルに止めるという認識を持つべきなのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています