2020年02月12日
アイデアよもやま話 No.4563 プラごみから画期的なウェア!

これまでプラスチックごみ(プラごみ)について何度となくお伝えしてきました。

また、アイデアよもやま話 No.4559 産業界で進む価値基準の転換!で、産業界の新たな価値基準、SDGs(持続可能な開発ゴール)についてお伝えしました。

また、先日開催された展示会、ENEX2020(東京ビッグサイトで開催)でも“SDGs”という文言をよく見かけました。

そうした中、昨年10月29日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でプラごみから作られる画期的なウェアについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

海に捨てられるプラごみなどが地球環境に与える影響が深刻化しています。

そうした中、この問題の解決につながるかも知れない画期的な衣類が登場しました。

 

取材した日、千葉県富津市の天羽漁港を訪れていたのは三陽商会の執行役員、慎 正宗さんです。

海上を漂っていた、いわゆる海洋ごみを視察に来たといいます。

この漁港では、ペットボトルや破れて使えなくなった漁網などのプラスチックごみが大きな問題になっているといいます。

こうした状況について、地元のある漁師は次のようにおっしゃっています。

「潮に乗って流れてくるので、海一面がごみになっちゃうんで、かなり被害は大きいですね。」

「(プラスチック製の漁網は)お金出して引き取ってもらっているんで、ずっと赤字が続くって感じですね。」

 

世界中の海に年間およそ800万トンのプラスチックが海に流出し、深刻化する海の汚染問題、日本でも対策が急務となっています。

そんな中、三陽商会は新たにスペインの企業と手を組み、海洋ごみをリサイクルして衣類を手掛けるビジネスへの参入を発表しました。

三陽商会の店舗に展示されている紳士服を指して、慎さんは次のようにおっしゃっています。

「この商品は漁網ですね。」

「ナイロンなんですけども、こういった海の底にある漁網をポリマーにして、糸にして、生地にしてというかたちでできています。」

 

回収された海洋ごみを再生し、作られたこれらの服、例えばウインドブレーカーは100本以上のペットボトルを再生させたポリエステルから作られるなど、海洋ごみを様々な素材に変えて商品づくりにつなげています。

今後、衣類だけでなくバッグなどの小物も展開する予定です。

価格は、アウターなら2万円台から、シャツやパンツは1万円台を想定しているといいます。

慎さんは次のようにおっしゃっています。

「(洋服が売れなくなってきている中で、コンセプトが今後重要になってくるのかという問いに対して、)おっしゃる通りだと思っていまして、やっぱりブランドのストーリーだとか背景だとか、共感していただけるお客様と一緒にコミュニティをつくっていくということが今後非常に重要なんじゃないかなと思っています。」

 

当面はスペインの企業から購入した商品を販売しますが、将来的にはごみの回収から製造までを一貫して手掛ける計画です。

そのため、今は千葉県をはじめ各地の港を視察し、提携先を探しています。

2020年3月には都内に基幹店となる1号店をオープンさせる予定で、2020年度に20店舗の出店、2025年度には年間60億円の売り上げを目指します。

慎さんは次のようにおっしゃっています。

「作れば作るほどごみが減る、売れば売るほど地球がきれいになるっていうふうな思想とビジネスが直結したブランドですので、社会貢献とビジネスは真逆じゃなくて、一緒に出来るんだよというのを実証して行きたい。」

 

三陽商会の取引先であるスペインのエコアルフというブランドは3000人の漁師に協力してもらい、海洋ごみを集めて素材の研究からしているといいます。

また、社員の多くがミレニアム世代の若い社員で、7割が女性だといいます。

 

こうした取り組みは世界規模で広がっていますが、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「日本ではユニクロも来春(2020年)に使用済みのペットボトルを東レと開発して使って速乾性のあるウエアを作って発売するという話もありますが、このスペインの会社の取り組みはとても偉いと思います。」

「なぜかというと、今、環境省で漂着ごみの構成を重量ベースで定期的に調べているんですけど(※)、日本は17.5%の弁当箱などの容器に注目するでしょ。」

「でも実は一番多いのは漁具なんですよ。」

「で、ここをリサイクルしないと本当の海洋プラスチックのごみの問題は解消しないんですね。」

「ですから、この取り組みは素晴らしいと思います。」

 

  • 環境省による調査は2016年度に実施されたもので、漂着ごみ全体の構成(重量ベース)は以下の通りです。

    漁具(ネット・ロープ・ブイなど) 30%

    木材           30%

    弁当箱などの容器     17%

    発泡スチロール・ペットボトル     8%

    その他          15%

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

また、2月4日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)によれば、セブン&アイ・ホールディングスは、2月4日、使用済みのペットボトルをリサイクルしてつくった肌着(商品名:「ボディクーラー」)をイトーヨーカ堂などで2月12日から販売すると発表しました。

肌着1枚につき、店頭で回収したペットボトル、約8本分が使われています。

特殊な機械を使って、透明なペットボトルだけを回収し、純度の高いポリエステルに再生することで白い肌着を実現しました。

今後、更に回収量を増やしたいとしています。

 

最近、海洋汚染と言えばプラごみ、そしてその代表格はペットボトルという具合にイメージされているように思います。

私も外房の実家近くの海岸ではペットボトルをよく目にします。

しかし、漂着ごみ全体の構成(重量ベース)では漁具の30%が最も多いということが番組を通して分かりました。

ですから、解説キャスターの山川さんも指摘されているように、漁具に着目したスペインのエコアルフ、そしてタッグを組む三陽商会の取り組みはとても理に適っていると言えます。

これまでお金を払って処分していた漁具が、それを原料としてウェアに新たに生まれ変わるのですから、まさにWinWinの関係であり、ウェアを作れば作るほどプラごみによる海洋汚染問題の解決にもつながるわけです。

ちなみに、木材も30%を占めていますが、どのように処分されているのか、気がかりです。

 

いずれにしても、プラごみ問題の根本的な解決策は、SDGsの概念に則った、環境に負荷を与えないような“プラスチック代替品”の開発だと思います。(参照:アイデアよもやま話 No.4537 “プラスチック代替品”開発の最前線!


 
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