2020年01月25日
プロジェクト管理と日常生活 No.625 『テレビドラマ「グランメゾン東京」をプロジェクト管理の視点から観たら・・・』

昨年10月から12月にかけて放送された木村 拓哉(キムタク)主演のドラマ「グランメゾン東京」(TBSテレビ)を録画しておき、ようやくお正月休みにまとめて観ることが出来ました。

それほど内容に期待していなかったのですが、観始めるとどんどん番組に引き込まれ、いろいろな意味で楽しめました。

この番組は、二つ星から陥落した型破りのフレンチ料理人が仲間とともに挫折からもう一度、三ツ星達成という夢に立ち向かうという内容です。(あらすじはこちらを参照)

そこで、今回はこの番組を通して、プロジェクト管理の視点から私の思うところをお伝えします。

 

ドラマでは主人公たちが立ち上げたフレンチ料理のお店「グランメゾン東京」の見習い料理人の裏切りで新たに開発された大事な料理のレシピ(料理の調理法を記述した文書)が競合店に渡ってしまうという一幕がありました。

しかし、「グランメゾン東京」のシェフたちは驚きませんでした。

その理由について、ドラマでは見習い料理人の裏切りの告白の場面で以下のようなやり取りがあります。

(店の女性オーナー)

「仕入れた鰆(さわら)の状態によって、その都度調理法も変わるのよ。」

「乾燥の時間とか、オーブンの温度とか、その日の気温や湿度で変えているんだから。」

「真似出来るもんならやってみろというのよ。」

 

(主人公)

「鰆(さわら)のローストだけじゃないからな。」

「ナスのプレッセ、シカのロフィ、うちの店で簡単に真似出来る料理なんて一つもない。」

「俺たちの仕事は甘いもんじゃないんだよ。」

「ま、真似事でやっている店は腐るほどあるけれど。」

「三ツ星狙うんだったら、自分で本物を生み出すしかねえんだよ。」

 

また、入手したレシピをもとに、競合店のシェフが料理したものは満足のいくレベルではなく、結局採用されませんでした。

 

ちなみに、私の馴染の横浜中華街の中華料理のお店では自家製の麺を使っていますが、やはり天候により麺の作り方を変えているといいます。

 

レシピはプロジェクト管理における標準マニュアル(標準書)に相当します。

標準マニュアルは誰がそれに従って作業しても成果物を一定の品質以上にするうえではとても重要です(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.308 『無印良品にみる標準マニュアルの威力!』

しかし、標準マニュアルはあってもやはり作業する人のスキルレベルによって大なり小なり品質の差は出て来るのです。

レシピさえあれば完璧にレシピの考案者と同じレベルの料理が出来るわけではないのです。

考えてみれば、ビジネスのみならずスポーツなど他の世界でもいろいろなマニュアルがありますが、そのマアニュアルさえ読めば誰でも同じように出来るということはないのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.345 『原発事故対応にみる標準マニュアルの限界』

 

このように現実の世界では、料理に限らず、標準マニュアルをベースに様々な工夫が凝らされているのです。

それが最適化です。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.66 『中華レストラン「餃子の王将」の絶好調の秘密 - テーラリング(最適化)』

この最適化こそが料理のプロの腕の見せ所であり、お店の評判につながるのです。

 

更に、この標準マニュアルに沿っていつまでも同じプロセスを繰り返していては進歩がありません。

耐えざるプロセス改善が必要なのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.69 『今こそ最もプロセス改善の真価が問われる時』

これについて、ミシュランガイドでは、ミシュランガイド調査員が星を獲得しているお店を何年かごとにお客として訪れ、評価次第で星の格付けから落とされてしまうシステムなのです。(詳細はこちらを参照)

ですから、ミシュランガイドは単にお店の格付けをするたけでなく、お店に対して耐えざるプロセス改善を促しているのです。

 

ということで、今回はプロジェクト管理の中の標準化、最適化、プロセス改善という3つの管理項目に焦点を当ててご紹介してきました。


 
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