2020年01月13日
アイデアよもやま話 No.4537 “プラスチック代替品”開発の最前線!

これまで廃棄されたプラスチックのストローやペットボトルなどによる海洋などの地球環境汚染について何度となくお伝えしてきました。

そうした中、昨年9月6日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で“プラスチック代替品” 開発の最前線について取り上げていたのでご紹介します。

 

今、プラスチックの代替品を活用してビジネスチャンスにしようという取り組みが進んでいます。

全国一の紙の産地、愛媛県四国中央市にある大手製紙メーカー、大王製紙株式会社の工場でプラスチックに負けない強度を目指して開発された紙の新素材は、男性の番組レポーターがパンチをしても全く無傷です。

 

その硬さの秘密は紙の構造にあります。

従来の厚紙は繊維の中に大きな空気の隙間があります。

一方、新素材は隙間がほとんど無く、繊維がびっしり詰まっています。

紙をすく過程で特殊な技術で力を加えて押しつぶすことで密度が高くて硬い紙を作り出したのです。

国内の紙の生産はデジタル製品の普及でペーパーレス化が進んで、ピーク時から約2割減少しています。

なんとかV字回復をと、道を模索する中で目を付けたのがプラスチック代替品へのニーズでした。

大王製紙 機能材部の大久保 洋介部長は次のようにおっしゃっています。

「この“脱プラ”の機運、時流に乗って、そのチャンスを自らつかむということは大きなチャンスだと思っています。」

 

この新素材に大手菓子メーカーも着目、プラスチック製のパックから切り替えました。

更に、新素材で作ったスプーンもあります。

ただ、新素材は硬いので加工しにくいという課題もあるのです。

実際に、このスプーンで食べてもらうと、口に入れた時に滑らかさが足りないという感想がありました。

王子製紙では更に改良を重ねて、2019年度中には商品化し、まずは海外市場に打って出たいとしています。

大久保部長は次のようにおっしゃっています。

「欧米ですと、スプーンであったり、フォークであったり、そういった文化がありますので、グローバルに展開していきたい。」

 

こうした取り組みに王子製紙では勝算があるといいます。

その理由は、EU(ヨーロッパ連合)が使い捨てのプラスチック製のスプーン、フォークなどを2021年から禁止するという法案を2020年5月に採択ことです。

つまり、EU加盟各国でプラスチック代替品へのニーズが加速していく、そこにチャンスがあると考えているのです。

 

今出ているプラスチック代替素材は紙だけではありません。

袋、クリアケースは石灰石を粉末状にして特殊な技術で固めることで実現しました。

 

また荷物を箱詰めする時に使用する緩衝材は、寒天で代替出来ます。

寒天は自然由来ですから分解出来ますし、石灰石の製品についても、今、より環境負荷が低くなるように開発が進んでいます。

 

こうした新たな素材を開発するのではなくて、古い生活の知恵をヒントに代替品を作っているという動きも出て来ています。

京都府内の道の駅で使われているストローは麦わらです。

手掛けているのは環境問題を扱う京都市のNPO法人、木野環境です。

麦の茎の中が空洞という特徴に目を付けました。

木野環境の代表理事、丸谷 一耕さんは次のようにおっしゃっています。

「70代以上の人に話を聞くと、「昔、麦わらストローを使っていた」と。」

「これ、ちょっと出来ないかなと。」

 

京都市内の農家から使っていなかった麦わらを調達し、殺菌・消毒、しかし量産するとなると大きな課題が出てきました。

短い、細い、割れたり割けたりしているなど、素材のバラつきが多く、想定の7割が使えませんでした。

更に、一般的な業務用プラスチックのストローは1本0.1円以下ですが、麦わらストローは1本40円、なんと400倍ものコストがかかる結果になってしまいました。

木野さんは次のようにおっしゃっています。

「ここまで難しいとは思ってなかったですね。」

「もっと太い大きなストローが出来ると思ってましたけども、作り方も単純ではないと。」

 

乗り越えなければならない壁がまだまだあるプラスチックの代替品、専門家は一つの企業や団体だけでなく、“社会全体で産業を育てる”意識が必要だと指摘します。

環境と経済が専門の中部大学 経営情報学部の細田 衛士教授は次のようにおっしゃっています。

「ヨーロッパやアメリカでも始めはコストがかかっても非常に売れ筋のいい商品であるならば、そこに投資があって、そこに金融機関からお金が入って、そういう小さなビジネスを育てていく風土があるんですね。」

「小さなビジネスアイデアが環境にもいいし、経済にもいいということで、花咲く可能性はこれから日本にはいっぱいあると思います。」

 

こうした動きについて、番組では以下のように伝えています。

こうしていろいろなものが出て来て、便利になり、環境にもいいなと期待する一方で、大事だと思うのは、私たち使う側の意識だと思います。

これからどんどん新しい製品が出てきます。

その中で私たちが自分の暮らしの中で本当に環境に優しい使い方が出来るものを見極め、そしてそれを資源として大切に使っていく、こういう意識が大事だと感じます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組では、国内の紙の生産はデジタル製品の普及でペーパーレス化が進んで、ピーク時から約2割減少していると伝えていますが、ペーパーレス化はまだこの程度しか進んでいないのかというのが私の印象です。

しかし、今後ともペーパーレス化はいろいろなデータの電子化とともに徐々に進んでいくと思われます。

こうした状況は製紙メーカーにとっては死活問題です。

一方で、地球環境問題を象徴するプラスチック製品による海洋汚染問題を受けて、“プラスチック代替品”へのシフトという世界的な気運は製紙メーカーにとって“神風”が吹くような状況です。

 

さて、ここであらためて世界的に大きな問題、すなわち地球環境、そしてエネルギーに係わる問題、あるいは課題、および対応策と主な素材、減量との関連について以下にまとめてみました。

(地球環境)

・プラスチック:海洋汚染

 ⇒ 自然由来の代替品の開発

・紙:森林の伐採

 ⇒ ペーパーレス化

・化石燃料(石油、石炭、天然ガス):CO2の排出による地球温暖化

 ⇒ 再生可能エネルギーの導入

(エネルギー)

・化石燃料(石油、石炭、天然ガス):可採年数到来による枯渇

 ⇒ 再生可能エネルギーの導入

・原発:周辺地域住民の再稼働、あるいは建設に対する反対、核廃棄物の保管場所の確保

 ⇒ 脱原発

 

しかし、こうした問題や課題には大なり小なりハードルがあります。

中でも価格は大きなハードルです。

どんなにいいモノでも価格が高くては需要はあまり期待出来ないからです。

もう一つは、国や自治体の政策、あるいは国民の意識です。

中でもEUはこうした問題や課題に積極的に取り組んでいますが、残念ながら日本は相対的に積極性が感じられません。

 

環境問題やエネルギー問題は、世界的に共通で避けて通ることは出来ないのです。

そうであれば、他の国の動きや既存企業へのビジネスへの悪影響に対する配慮をして消極的になるよりは、日本政府や地方自治体、あるいはメーカー、国民が前向きになって、多少の犠牲は覚悟の上でEUなどに先駆けて有効な対応策となり得る先進的な商品やサービスの開発や消費の普及に勤めれば、環境問題やエネルギー問題の解決のみならず国内経済や世界経済の活性化につながると思うのです。

 

ということで、環境やエネルギー関連において、プラごみや脱原発など、個々の問題や課題に対応するのではなく、今最も日本にとって重要なことは、国全体の意識改革、中長期的な目標、そして実行力だと思うのです。


 
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