2020年01月18日
プロジェクト管理と日常生活 No.624 『今や金融危機のリスク対応策が真剣に求められる時期に来ている!』

プロジェクト管理と日常生活 No.552 『金融危機は10年周期!?』でお伝えしたようにリーマンショック(2008年)のような金融危機は10年周期でやってくると言われています。

そして、今年はリーマンショックから12年目です。

そうした中、昨年8月30日(金)付け読売新聞の朝刊記事で世界全体の借金が過去最高になったと報じていたのでご紹介します。

 

世界全体の借金が過去最高額に達しました。

企業や政府の過度な借り入れは、米中貿易摩擦で景気が悪化した場合に「火薬庫」となりかねません。

その借金が、世界全体で増えています。

国際決済銀行(BIS)の統計によると、政府、企業、家計を合わせた世界の債務残高は、2018年末時点で180兆ドル(約1京9000兆円、京は兆の1万倍)に上り、リーマン・ショック前の2007年から1.6倍に拡大しました。

国別では米国が全体の28%を占め、中国、日本が続きます。

増加率を見ると、中国の伸びが突出しています。

リーマン・ショック直後の2008年末から2018年末の10年間に、中国の債務残高は399%増、つまりほぼ5倍に膨らみました。

中国はリーマン・ショック後、4兆元の財政出動で経済を支えました。

一方で国営企業や政府は多額の借金を抱え、十分に返済されぬまま現在に至っています。

景気テコ入れに向けた各国中央銀行の金融緩和は長期化しています。

金利が下がって借りやすくなったマネーが、世界に債務の拡大をもたらしているのです。

 

中国では家庭の借金も深刻な問題になりつつあります。

北京や上海など都市部を中心に「房奴(ファンヌー)」という呼称が飛び交っています。

「房」は家、「奴」は奴隷を意味し、住宅ローンで生活苦に見舞われる人々を指します。

経済成長で所得が増え、「マイホーム」に手が届く層が増え、住宅価格は上昇が続いており、早めの購入を考える人が多いのです。

ですが銀行の審査が甘いとみられ、返済額が月収の4割を超えるケースも少なくないといいます。

BIS統計によると、中国の家庭の借金総額は2018年末までの10年間で8.2倍に急増しました。

 

このところ中国の消費が振るいません。

米国の対中輸入関税引き上げで景気が落ち込んでいます。

加えて、家計が住宅ローンに圧迫されて財布のひもを締めていることも一因です。

中国経済は、政府、企業、家計の「三つの過剰債務」と、米中貿易摩擦という内憂外患に苦しんでいます。

 

最近、市場関係者が将来のリスクを盛んに危惧する貸し出しの形態があります。

米国を中心に増える「レバレッジドローン(財務内容や業績が良好でない企業向けの融資)」です。

みずほ総合研究所の調べでは、米国のレバレッジドローンの残高は過去10年で約2倍に増え、2018年末に約1.2兆ドル(約130兆円)に達しました。

ITや健康・医療、エネルギー関連企業の借り入れが多いです。

米国も金融緩和の長期化で市場に出回るお金が増えているのです。

金融機関は、だぶつくお金の運用先探しに躍起です。

一定のリスクはあるものの、高い利回りを追求してレバレッジドローンで融資しているとみられます。

みずほ総研の芳川 直之さんは「今後、米国景気が後退すれば貸し手は資金を回収出来なくなる恐れがある。米国企業の債務全体から見れば一部に過ぎないが、警戒が必要だ」と指摘しています。

 

更に気がかりな動きがあります。

タックスヘイブンとして知られる英領ケイマン諸島籍の企業に対する融資が急増しているのです。

大和総研の坂口 純也さんの調べでは、米国銀行のケイマン諸島向け貸し出しは、この1年で4割も増え、4700億ドル(約49兆4000億円)に達しました。

各国の企業がケイマンに法人を置いているとみられますが、タックスヘイブンにある企業の取引内容は見えにくいのです。

「リスクの高い債券や証券化商品への投資が含まれている可能性がある」(坂口氏)との見方があります。

 

膨らむ借金は、誰が貸しているのでしょう。

日本の銀行による海外への融資残高は4.4兆ドル(約460兆円)と過去最高を更新しました。

国別では日本が最も多いのです。

世界的な債務拡大を日本のマネーが支える構図です。

なぜ、邦銀の海外向け貸し出しが多いのでしょうか。

銀行は預金を集め、企業や個人に貸して利ざや収入を得ます。

現在の邦銀には預金は集まるが、日本企業が借り入れ意欲に欠け、国内に十分な貸出先がないのです。

実際、過去10年間に日本の企業や家計の借金はそれぞれ16%も減りました。

日本の債務は、先進国で最悪の状態にある政府の残高ばかりが膨らんでいるのです。

日本企業の設備投資はおおむね堅調ですが、日本政策投資銀行の調査によると、日本の大企業の設備投資額は1999年以降、平均で手持ち資金の範囲内に留まっています。

投資のために新たな借金をしないのです。

邦銀の海外向け融資の増加は、日本経済の成長性の乏しさの裏返しです。

 

人間に例えれば、自覚症状のないまま病気が進行するかのように世界で借金が膨らんでいっています。

勿論、経済成長に見合う水準の借り入れは大切ですが、その規模が過剰になれば、世界経済が悪化した際に返済が滞り、悪影響が広く波及しかねません。

日本のバブル崩壊やリーマン・ショックの苦い歴史を思い起こす必要があります。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきましたが、記事の内容を以下にまとめてみました。

・国際決済銀行(BIS)の統計によると、政府、企業、家計を合わせた世界の債務残高は、2018年末時点で180兆ドル(約1京9000兆円、京は兆の1万倍)に上り、リーマン・ショック前の2007年から1.6倍に拡大した

・景気テコ入れに向けた各国中央銀行の金融緩和は長期化しており、金利が下がって借りやすくなったマネーが、世界に債務の拡大をもたらしている

・中国では銀行の審査が甘いとみられ、BIS統計によると中国の家庭の借金総額は2018年末までの10年間で8.2倍に急増している

・中国経済は、政府、企業、家計の「三つの過剰債務」と、米中貿易摩擦という内憂外患に苦しんでいる

・最近、金融機関はだぶつくお金の運用先探しに躍起で、一定のリスクはあるものの、一部の金融機関は高い利回りを追求してレバレッジドローンで融資している

・今後、米国景気が後退すれば貸し手は資金を回収出来なくなる恐れが出て来る

・タックスヘイブンとして知られる英領米国銀行のケイマン諸島向け貸し出しは、この1年で4割も増え、4700億ドル(約49兆4000億円)に達したが、タックスヘイブンにある企業の取引内容は見えにくく、リスクの高い債券や証券化商品への投資が含まれている可能性がある

・日本の銀行による海外への融資残高は4.4兆ドル(約460兆円)と過去最高を更新し、国別では日本が最も多く、世界的な債務拡大を日本のマネーが支えている

・現在の邦銀には預金は集まるが、日本企業が借り入れ意欲に欠け、国内に十分な貸出先がない(過去10年間に日本の企業や家計の借金はそれぞれ16%も減少)

・邦銀の海外向け融資の増加は、日本経済の成長性の乏しさの裏返しである

 

更にこの内容を俯瞰して以下にまとめてみました。

リーマンショック後の国の経済や財政の立て直しに要した世界の債務残高は、2018年末時点で180兆ドル(約1京9000兆円、京は兆の1万倍)に上り、リーマン・ショック前の2007年から1.6倍に拡大しました。

こうした景気テコ入れに向けた各国中央銀行の金融緩和は長期化しており、一方で消費の低迷が続き、金融機関はだぶつくお金の運用先探しに躍起で、ハイリスクハイリーターンのレバレッジドローンによる融資に手を出しているところもあります。

また、邦銀による海外への融資残高は過去最高を更新し、国別では日本が最も多く、世界的な債務拡大を日本のマネーが支えています。

それだけ、日本経済の成長性が乏しいのです。

こうした状況は、米中貿易摩擦の長期化により景気が大きく後退したりして多くの借り手の借金返済が滞ることになれば、貸し手は資金を回収出来なくなる恐れが出て来きます。

そして、今や世界全体の借金が過去最高の1京9000兆円に達しているのです。

このように借金の額が多ければ多いほど、こうしたリスクの顕在化はより多くの悪影響をもたらすのです。

ですから、次の世界経済危機の顕在化はリーマンショック以上の影響をもたらす可能性が大きいと言えます。

世界経済はまさに“山高ければ、谷深し”状態ののリスクを抱えているのです。

 

では、こうしたリスクの対応策としてどのようなアイデアがあるでしょうか。

私は経済の専門家ではありませんが、私なりに大きく以下の4つの対応策があると思っています。

1.革新的な技術を有するベンチャー企業と投資機関との出会いの場の提供

2.国や地方自治体による、より自由な企業活動を支援する制度設計

3.MMTに沿った政府の対応策(参照:アイデアよもやま話 No.4497 MMTを導入していれば消費増税は不要だった!?

4.タックスヘイブンにおける企業の取引内容についてもガラス張りになるような法整備に取り組むこと


 
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