2020年01月06日
アイデアよもやま話 No.4531 SBテクノロジーによる農業流通革命!

昨年8月30日(金)付けネットニュース(こちらを参照)でSBテクノロジー株式会社(旧ソフトバンク・テクノロジー株式会社)による農業流通革命について取り上げていたのでご紹介します。

 

JA全農といった旧来勢力が牛耳ってきたモノの流通などを代替する新事業が相次いで昨年8月に本格始動しました。

これまで多くのIT企業や製造業が農家支援サービスを提供してきましたが、大きな成功を収めているとは言い難いのですが、そうした中、旧来型の「農業流通」を激変させるインパクトがある二つの事業が昨年8月に始動しました。

 

それらの事業は、従来の農家支援サービスとは違い、農家の利益に直結するモノの販売や決済サービスを提供します。

この事業領域は長らくJA全農や卸会社など従来のプレーヤーが牛耳り、参入障壁がある聖域だったのです。

まず、流通変革の旗手となり得るのがSBテクノロジーです。

農家が農業に使う資材の相見積もりを取り、比較できる情報サイト「AGMIRU」を、商品の購入まで出来るECサイトにバージョンアップして本格稼働させました。

 

SBTは生産資材の販売だけではなく、農家への融資や農業生産でのIT・ロボットの活用、農産物の販売支援など各分野の「農業ベンチャーのトップランナー」と連合を組み、SBTはその集合体の“ハブ”の役割を果たそうとしています。

構想が実現すれば、農家の資金調達から農産物の販売までを支える押しも押されもせぬ「プラットフォーマー」となります。

 

そして、SBTがハブとなる農家支援連合のメンバーで、自らも農業流通の変革者になるべくのろしを上げているのが、農業ベンチャーのマイファームです。

昨年8月から、オンライン卸売市場「ラクーザ」を正式にオープンしました。

従来の青果流通では原則、農産物は農家→JA→全農→卸→仲卸→スーパーなどと、とてつもなく長い経路をたどります。

農産物が生産現場から消費者の手元に届く前に、生産現場の情報が流通の途中で寸断されてしまい、農産物の価値(おいしさ、安全・安心など)が消費者に伝わらないことが多々ありました。

ラクーザは中間流通を省き、農家とスーパーやレストランを直接つなぐことで、農家の努力を反映した「適正価格」の実現を目指します。

利用するスーパーやレストランからすれば、農家のこだわりをウリにした個性的な商品を提供するためのツールになります。

 

しかし、挑戦者たるSBTやマイファームの新サービスにも課題はあります。

従来の商流に比べ小ロットになる傾向があり、運送費がかさむのです。

今後、テクノロジーの力で物流を効率化するとともに、契約規模を大ロットにしたり、利用頻度を高めたりできるかどうかが、勝負の分かれ目になります。

 

そしてもう一つ、事業体ではないですが、旧来の農業団体とは一線を画すSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)をベースにした新たな農業者集団も誕生しました。

昨年8月に設立された「日本農業者ビジネスネットワーク」です。

その母体となったのが、フェイスブック(FB)の非公開グループ「FB農業者倶楽部」です。

フラットな関係で農業の経営課題の解決方法などを教え合っています。

今回立ち上がった日本農業者ビジネスネットワークは、FBのグループを活発化して課題解決能力を高めるとともに、FB上や会員が集まるオフ会で政策論議を行い、農業政策への意見反映を目指します。

 

一方、JAなど既存の農業団体は組織運営が硬直的で、農政運動は形骸化が進んでいます。

農政運動の意見集約は形式上、地域→都道府県→全国組織という段階を経て行われますが、農業者集団の活動資金の一部をJA全中などの上部団体に依存しているため自由な意見が言いにくいのです。

 

旧来の農業界を圧倒するスピードで、企業やベンチャー、プロ農家が積極的に“つながり”始めました。

2018年は民間発の「農業改革元年」となるかもしれません。

 

以上、ネットニュースの一部をご紹介してきました。

 

今回ご紹介したSBテクノロジーによる農業流通革命で思い起こすのは、アイデアよもやま話 No.4514 “伸びない消費”脱却のカギ!でお伝えした既存のビジネスと最新テクノロジーとを組み合わせた新たなビジネス、すなわち“フィンテック”や“スポーツテック”など“xxテック”という言葉です。

この流れでいうと、今回ご紹介した農業流通革命は“アグリテック”に当てはまります。

 

日本の産業界はサービス業を中心に他の先進国に比べて生産性が低いと言われています。ちなみに、日本の生産性の低さについては、これまでアイデアよもやま話 No.3675 働き方改革に思うこと その2 参考にすべきドイツの生産性の高さ!No.3972 ちょっと一休み その639 『なぜ日本の労働生産性は低いのか?』No.4302 ちょっと一休み その694 『日本の有休取得率3年連続で最下位』などでお伝えしてきました。

一方で、日本は少子高齢化の先進国でもあります。

こうした2つの問題を解決する道は2つあると思います。

1つ目は全ての産業界を“xxテック”を合言葉にテクノロジーを最大限に活用して、これまでの仕組みや制度を根底からリストラすることです。

2つ目は、テクノロジーに秀でた海外の優秀な人材を積極的に取り込むことです。


 
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