2019年12月21日
プロジェクト管理と日常生活 No.620 『ファクトフルネスからほど遠い日本政府の危うさ!』

これまでアイデアよもやま話 No.4490 “ファクトフルネス”の必要性!アイデアよもやま話 No.4491 “ファクトフルネス”の必要性を示す2つの事例!アイデアよもやま話 No.4504 日韓対立の真相 その1 ファクトフルネス”が機能しない韓国!などでファクトフルネスの重要性についてお伝えしてきました。

そうした中、6月23日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)で不都合な事実を発信し続ける日本政府について取り上げていたのでご紹介します。

 

“見て見ぬ振り”、“なかったことに”、そんな言葉を連想させるような出来事が最近目に付きます。

6月19日、金融庁と厚生労働省(厚労省)の担当者を招いて行われた野党合同ヒアリング、その中でそんなことまでと考えてしまうような場面がありました。

厚労省の井澤 知法年金課長は次のようにおっしゃっています。

「最近、我々「非正規」というふうに言うなと大臣からも言われておりますけど、要するに“フルタイムで働いてらっしゃらないような方々”で・・・」

 

他の部局から聞いた話として、根本厚労相から「非正規」という言葉を使わないように指示があったと明かしたのです。

これに対し、野党側の立憲民主党会派の大串 博志衆院議員は次のようにおっしゃっています。

「大臣が「非正規」という言葉を使うなと指示を先ほど言われたように、もし言ってるのであれば、大きな問題になっていくのではないかと・・・」

 

このような言葉の言い換えや曖昧な説明などで不都合な事実をぼかしたり、歪めたりするケースがここ数年しばしば見受けられます。

2年前、森友学園問題の議論の中で野党議員が資料の提出を請求した際、財務省から提出されたのはほとんど黒塗りで内容が分かりませんでした。

その後、財務省による決裁文書の改ざんも発覚(2018年3月)、20人という大量の職員が処分されました。

 

更に加計学園問題で注目されたのが「総理の御意向」などの文言が入った文書でした。

その信ぴょう性について問われた菅官房長官は、2017年5月17日、次のようにおっしゃっています。

「全く“怪文書”みたいな文書じゃないでしょうか。」

 

出所の分からない怪しい文書と切り捨てたかたちでしたが、その後事態は一転、2017年6月15日に文部科学省がその文書の存在を認めたのです。

 

更に防衛省でも南スーダンでのPKO活動を記録した「日報」を巡る“隠ぺい”問題、廃棄したとしてきたデータが存在していたことが発覚し、2017年3月16日開催の衆院安全保障委員会で問題となりました。

この問題の責任を取り、2017年7月28日稲田 朋美防衛相(当時)は辞任に追い込まれました。

 

更に、外国人技能実習生の失踪の増加を受け、昨年法務省が行った聞き取り調査で、法務省は失踪の動機について、昨年6月に公表した調査結果で、「より高い賃金を求めて」という答えが86.9%だったと説明しました。

しかし、実際にはそのような項目はなく、「低賃金だから」という答えが67.2%を占めていたのです。

こうした状況について、昨年11月16日、立憲民主党の辻本 清美衆院議員は次のようにおっしゃっています。

「不誠実だと思います。」

「法務省は技能実習生の実態を捻じ曲げるというようなことを何年にもわたってやってきた可能性もあります。」

 

そして今年6月、イージスアショアの配備を巡る防衛省職員の調査ミスが発覚、市民から怒りの声が上がりました。

6月8日開催の秋田市内の説明会で、ある男性市民は次のようにおっしゃっています。

「(この調査結果について、)どれだけ信用してみたらいいんですか?」

「誰も納得しませんよ。」

 

こうした状況について、6月18日、岩屋 毅防衛相(当時)は会見の場で次のようにおっしゃっています。

「お詫び申し上げたいと十分に思います。」

 

しかも、その2日後、もう一つの配備候補地とされていた山口県でもデータのミスが疑われたのです。

国土地理院では標高574mと表記されているのが防衛省の調査では576mと、2mの誤差があったのです。

なぜこんなことが起きたのでしょう。

防衛問題に詳しい東京新聞の論説県編集委員の半田 滋さんは次のようにおっしゃっています。

「一番アメリカにとってもいい、日本にとってもいいというところを選ぶと、(配備先は)秋田市と萩市になってしまうと。」

「これはもう始めに結論ありきだったので、どうしてもそのデータがずさんな扱いになったり。」

「で、他の候補地と比べてこの2ヵ所が素晴らしいかということを後付けで言わなければいけなかったと。」

「そこにそもそも無理がある。」

 

そしてもう1つ、6月11日、麻生 太郎金融担当相は会見の場で次のようにおっしゃっています。

「これは正式な報告書としては受け取らない。」

 

年金に関する金融庁の報告書を「政府のスタンスと違う」などとして受け取りを拒否したのです。

その視線に批判の声が上がりました。

6月19日、党首討論の場で、国民民主党の玉木 雄一郎代表は次のようにおっしゃっています。

「政治家のやるべきなのは、そういった真実に向き合いながら、不都合であっても真実に向き合って誠実な政治を国民の皆さんに見せていくことではないですか?」

 

こうした日本政府の対応状況について、番組コメンテーターで福山大学客員教授の田中 秀征さんは次のようにおっしゃっています。

「ちょっと多すぎるね、そういう問題(事案)が。」

「例えば、いろんな問題がある中で、積極的に国会予算委員会を開いて説明責任を果たすとか、そういうことをしないと逃げているように思えるし、僕はどうしても許せないのは集団自衛権の行使の閣議決定ですね、容認する。」

「あれの土台になっている内閣法制局の議論の記録をしなかったっていうんです。」

「一番大事なことを記録しないで、隠ぺいよりも廃棄よりももっと悪い。」

「不都合なことを記録しないんだから。」

「だから集団的自衛権の行使が決まったって、なんでそれで決まったって言えるのと言いたくなる。」

「そういう雑なことが多すぎる。」

 

続いて、評論家の大宅 映子さんは次のようにおっしゃっています。

「全く同感なんですけど、それともう1つ、失言とかいろんなミスとか出てくる程度が悪過ぎる。」

「昔だと、もうちょっと政策に直接からんだようなことで問題になったのが、ちょっと計算間違いでしたとか、角度がずれてましたとか、中学生じゃないんだから、という感じのものがすごく多い。」

「前だったら、大臣の首が何人も飛んでるんじゃないかという実感があるんだけど、それがそうならないのが、どこで何がっていう、こちらがもしかしたらもっと怒んなきゃいけないのかなというふうにも思ったりしています。」

 

続いて、東洋大学教授の横江 公美さんは次のようにおっしゃっています。

「何か臭いものに蓋をして、中から腐っていきそうな感じがして、日本の政治が悪い方角(?)から中から気が付いたら、「あれっ、こんなことになっていた」ってなっていそうでちょっと怖いなと思いますね。」

「それから、先ほど秀征さんがおっしゃっていたように、やはりどんな記録を残して、どのぐらい残すのか、それから黒塗りするんじゃなくて、何は消してもいいものなのか、そういったものをやはり決まりとして作ってもらわないと、日本の国の情報が世界からも信用されなくなってしまう危険性も感じます。」

 

続いて、評論家の荻上 チキさんは次のようにおっしゃっています。

「公文書管理法という法律があるんですが、それがちゃんと適用されていないということと、もっと厳しくしなきゃいけないということがあると思うんですね。」

「で、この間、例えば障害者雇用の水増し問題とか、働き方改革の時のデータねつ造問題などもありました。」

「これが厚労省とか、外国人労働者問題は法務省ですよね。」

「それから防衛省のPKOの問題とか、それから加計学園の時は文科省、そして森友学園問題の時は財務省っていうかたちで、各省庁横断的に様々な問題が起きているので、これはしっかりと、もう既に全ての省庁で問題が起きているということを仮定して、しっかりとそうしたものをコントロールするための法律を通さなきゃいけない。」

「しかし、同じく文書を残していないのは、実は内閣も官邸も残していないので、官邸主導でこうした問題を本当に進められるかどうか、そこに対してものすごく及び腰になっているということを批判的な目線で見ていきながら、公文書の管理・公開、このあたりについてルールづくりをより厳格にしっかりとするようなことも通るような選挙にして欲しいなと思います。」

 

最後に、ジャーナリストの青木 理さんは次のようにおっしゃっています。

「皆さんおっしゃったのに賛成で、それで何が起きるかってことなんですね。」

「つまり、都合の悪い事実だとか、データ、文書は隠す、捻じ曲げる、改ざんすると。」

「で、都合のいいデータばっかりかき集める。」

「で、こういうことすると、いわゆる識者が少し言ったんですけど、官僚機構、この国のテクノクラートが相当ねじ曲がって、腐って来ているんじゃないかということなんですね。」

「本来、テクノクラート、官僚組織っていうのは、政権が右に行こうとしてても、左に行こうとしてても、基本的なデータをちゃんと提示して、この事実はこうですよ、データはこうですよ、その上で政治家が右に行くか、左に行くか判断するんだけど、このデータが全部どうもおかしくなってきている。」

「これがおかしくなっているということは、事実やデータに基づかない政治になるんですね。」

「で、政治家側だって、今回、審議会が、あれは事実でしょう、出したら(政治家が)拒否するわけですよね。」

「もう出さなくなりますよね。」

「ていうことは、希望的観測だったり、事実に基づかなかったりとか、データに基づかない政治が進んでい行く。」

「これ、本当に冗談抜きで破滅への道ですよ、これ。」

「かつて体験しているはずなんですよ、日本はね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

番組では、不都合な事実を発信し続ける日本政府のいくつかの事例を取り上げていましたが、それらを以下に簡単にまとめてみました。

 

2017年 森友学園問題(ほとんど黒塗りの資料の国会への提出)

      加計学園の“怪文書”問題

      防衛省の「日報」の“隠ぺい”問題   

2018年 財務省による決裁文書の改ざん

      法務省による外国人技能実習生の実態調査報告書とは異なる、誤解を与えるような内容の公表

      イージスアショアの配備を巡る防衛省職員の調査ミス

      年金に関する金融庁の報告書が「政府のスタンスと違う」などという理由で麻生金融担当相が受け取り拒否

 

一般企業においても、ある程度規模が大きくなれば、効率的な組織運用上、必然的に社内手続きの標準化が必要になり、それに伴い文書化がなされます。

ましてや、政府においては、こうしたシステムがきちんと整備されているのが当然です。

実際に、国においては公文書管理法により公文書の管理が規定されています。

しかし、現実には先ほどまとめたように、日本政府は不都合な事実を発信し続けているのです。

更に、内閣総理大臣が主催する公的行事である、毎年春に新宿御苑で開催される今年の「桜を見る会」でも報道によると以下のような問題が噴出しました。

・招待客の選定基準が曖昧であること

安倍総理の後援会関係者が多数招待されていること

そこには、安倍首相の事務所ぐるみの関与が明らかになったこと

安倍総理や菅官房長官の答弁が修正に追い込まれたこと

・「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」での安い会費の指摘

参加費が一人5000円だった点について、高級ホテルの宴会としては破格の値段で野党側が公職選挙法に抵触するのではないかと疑問を投げかけたこと

・不適切な人物、すなわち悪徳商法の「ジャパンライフ」の元会長にも安倍首相から「桜を見る会」の招待状が届いていたこと

・政府は、「今年の桜を見る会」の招待名簿は既にシュレッダーで廃棄したと説明し、バックアップデータも復元不可能としていること

 問題の名簿は内閣府が作成、管理する公文書であり、名簿の保存期間は内閣府の文書管理規則で「1年未満」と定めているが、野党議員から名簿の資料要求があった約1時間後にシュレッダーで廃棄を始めていたことも明らかになったこと

 

なお、今回の「桜を見る会」問題で、政府の不十分な説明を反映し、共同通信による世論調査(12月14、15日実施)によると、安倍内閣の支持率は42.7%で、11月の前回調査から6.0ポイント下がりました。

不支持率は43.0%で、支持と不支持の逆転は昨年12月以来といいます。

 

また、記録を残す重要性について、田中 秀征さんは集団自衛権の行使の閣議決定における、その土台になっている内閣法制局の議論の記録を残していないことを指摘されていますが、こうした問題は現政権に限ったことではないのです。

12月15日(日)放送の「日曜報道 THE PRIME」によれば、民主党(当時)政権時代に、東日本大震災発生時に、1つ間違えば首都圏が住めなくなるような事態をもたらした福島第一原発事故の対応にあたり、その時の政府内の議論の記録を作っておりませんでした。

しかし、その後ヒアリング調査を実施し、議事録の作成に取り掛かったと報じていました。

当時の民主党政権にも議事録を残すという発想がなかったのです。

ですから、政府におけるこうした文書管理の重要性に対する認識不足は今に始まったことではないのです。

一方、こうした管理の不備は意図的に働くリスクがあります。

なぜならば、時の政権にとって“不都合な事実”は隠したいという意識が働くからです。

ですから、こうしたリスク対応策も国の運営プロセスの中に含める必要があるのです。

ちなみに、アメリカ政府でもこれまで同様の問題が起きています。

要するに、こうした“不都合な事実”を隠したがる傾向は、どの国に限らず、またどのような組織にもあるのです。

 

そこで、ファクトフルネスの観点から今回の「桜を見る会」も含め、番組を通しての政府関連問題の要点を以下にまとめてみました。

・政府や官僚の隠ぺい体質

・官僚によるデータ改ざんやミスの発生

・公文書管理法が本来の機能を果たしていないこと

 

次に再発防止策を以下にまとめてみました。

・公文書管理法の見直し

  保存対象文書の見直し

文書ごとの作成・変更承認者を明確にすること

文書の保存期間の見直し

  文書の重要度に応じたバックアップ

・文書管理の第三者による検査機関の新設

文書管理が規定通り運用されているかどうかを検査する第三者機関を設け、定期的(最低でも1年ごと)に検査を実施し、指摘された改善項目については、その改善完了を見届けること

・ファクトフルネスの徹底した組織風土への転換

  事実を正式な記録として残すこと

  官僚による政治家への“忖度”という組織風土の改善(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.555 『劣化する官僚機構 その3 政権に媚びる官僚!』

政治家から官僚への不正な指示に対して、官僚が内部告発した際に、その身分が保障されるような規定を盛り込むこと

 

なお、公文書管理法の見直し内容については、プロジェクト管理におけるドキュメント管理や第三者レビューなどの観点からすれば、特別なことではなく、極めて一般的な内容なのです。

こうした管理が日本の政府において軽視され、適切になされていない現状は大きな問題であると言わざるを得ません。

こうしたファクトフルネスの重要性が軽視され続けると、“不都合な真実”が積み重なり、最悪の場合は政府の暴走を許し、日本の国をとんでもない方向へと導いてしまうことになるのです。

このことを政治家、および国民一人ひとりは肝のに銘じておくべきだと思います。


 
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