2019年11月27日
アイデアよもやま話 No.4497 MMTを導入していれば消費増税は不要だった!?

以前、今話題の経済理論、MMTModern Monetaary Theory:現代貨幣理論)について、アイデアよもやま話 No.4447 驚きの経済理論”MMT”でお伝えしました。

そうした中、7月16日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日本におけるMMTの導入の可否について取り上げていたのでご紹介します。 

 

国の借金である国債は今年度末で約897兆円になる見通しで、毎年膨らんでいます。

日銀の黒田総裁も安倍総理も困り顔ですが、こうした日本の状況を肯定するかのような、ある理論が話題となっています。

自国の通貨を発行して借金を返せばいいので財政赤字は問題ではないという考え方です。

この考え方はMMTと呼ばれています。

 

今、この理論がアメリカで政界や学会を巻き込んでの大きな議論となっているのです。

その提唱者の一人が来日しまして、MMTを実践すれば、日本ももっと経済成長出来ると発言しました。

 

今年2月、アメリカ・FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は次のようにおっしゃっています。

「MMTの詳細は把握していないが、「財政赤字は問題ではない」という考え方は全く間違っている。」

 

パウエル議長がこのように批判したMMTは、自ら通貨を発行している国では財政赤字は予算の制約にならないというもので、政府は財政赤字ではなく、インフレやその原因となる需要や供給を注視すべきとしています。

 

アメリカでは地球温暖化対策や医療保険などの充実を進めたい議員などから支持を集めています。

また巨額の政府債務に苦しむ日本でも議論になっています。

今年4月の参議院決算委員会で日銀の黒田総裁は次のようにおっしゃっています。

「(MMTの)財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は極端な主張であり、なかなか受け入れられないのではないかと。」

 

また安倍総理も次のようにおっしゃっています。

「債務残高、対GDP比の安定的な引き下げを目指していますから、言わば我々がMMTの論理を実行しているということではない。」

 

そんな中、MMTの提唱者の一人、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が来日し、記者会見を開きました。

現在の日本の経済をどう見ているのでしょうか。

ケルトン教授は次のようにおっしゃっています。

「日本がMMTをきちんと実践していたなら、もっと経済は成長していただろう。」

「(MMTを導入すれば、消費増税は不要なのかという問いに対して、)はい、正しいです。」

「(インフレが急激に進んでも引き締めに転換出来るのかという問いに対して、)現在の日本の政府の支出増加がインフレを招くと考えている人はいない。」

「民間支出を増やすことでインフレになる状況ではないし、輸出増で日本の生産能力不足を懸念する人はいない。」

 

この会見を聴いた解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは、この財政政策を重視する主張に注目したといいます。

そして、「舞台は「金融」から「財政」へ」というご自身で書かれたボードを掲げながら、次のようにおっしゃっています。

「(政府、日銀にはMMTは極端な主張だという意見もあるが、)彼女の主張自身は意外にオーソドックスなケインズ主義の考え方、つまり景気が悪くなったら財政出動をするという考え方に近いんじゃないかと思います。」

「次に景気が悪くなった時には、経済政策の表舞台に出て来ておかしくないような主張だという印象を持ちました。」

「(ちゃんと議論した方がいいのではという問いに対して、)そうですね、今の時点からやはりメリット、ディメリットを含めて正面から議論しておくべき考え方だと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

また、7月19日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でもMMTの提唱者の一人、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授は次のようにおっしゃっています。

「(10月に予定されている消費増税について、)消費の落ち込みが予想されていると分かっていて消費税を上げるなんて。」

 

「(消費増税で消費が冷え込んだ場合に有効な政策について、)最も確実に世間にお金が回ると言えるのはインフラなどに対する公共事業。」

「減税は消費を促すかもしれないが、確実さでは劣る。」

「(所得をMMTによって増やしても、消費が増えない、溜めこむだけになる恐れはないかという問いに対して、)非常に重要なポイントだと思う。」

「所得の増加が一時的なものと思えば、人々は生活防衛に入り、お金を使わない。」

「政府は「増加は一時的なものでない」と繰り返し伝え、納得させないといけない。」

 

「この20〜30年は、経済対策を中央銀行に過度に依存して来た。」

「これまで成功した政策を見直し、再び実行することが必要。」

 

MMTに基づく政策で経済が回復し、インフレになった場合には日銀が政策金利を引き上げるよりも政府が増税で対応すべきだというのです。

 

こうしたケルトン教授の見解について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「MMTの評価ということになってくると思うんですけども、経済の実情が変化しているわけですから、それに対しては新しいメガネを用意する必要があるというわけなんですよね。」

「普通こういうことを主張する人はとんがり過ぎている人が多いんですけども、彼女はとてもマイルドな感じで好印象を持ちましたね。」

「1つは、せっかく財政資金を使っても国民が貯めこんじゃったらどうするんだっていうことに対して、はぐらかさずに答えていたのが非常に良かったと思います。」

「どういうことかっていると、要するに安心出来る雇用環境をつくって、年金不安みたいなのを和らげるっていうことを一緒にやるべきだと。」

「これは非常に常識的だけど重要なポイントですよね。」

「その意味では、僕は納得感がありました。」

 

また番組コメンテーターで大阪大学の安田 洋祐准教授は次のようにおっしゃっています。

「MMTが出て来た背景が気になりますね。」

「というのも従来の経済理論からみると、異説異論なわけですけども、こういったものが出て来た時にその経済理論が一蹴出来ない、その背景には恐らく伝統的な主流派の経済理論の説得力や正当性にちょっとほころびが出て来ているんじゃないか。」

「その上で少し強引なんですけど、私が考える、注目しているMMTは、私の造語ですけど、Mainstream Macroeconomics Transformation、主流派のマクロ経済学が変わる一つのきっかけになるかもしれない。」

「実際に、例えばですね、代表的な主流派の経済学者である元IMFのチーフエコノミスト、ブランシャールさんだったりとか、元財務長官のサマーズさんはケルトンさんたちのMMTは批判しているんですけど、ただ従来と比べて財政規律にそこまで縛られる必要はないと。

「現在のように金利が成長率を下回るような状況は、我々が従来思っているよりも長く続くかもしれない。」

「こういった情勢下ではすぐに増税ではなくて、国債で一定程度財政拡張するのが望ましいのではないかというかたちでスタンスを大分変えて来てるんですよね。」

「そういうことで、こういった動きが起きると、更に強引ですけどもMMT、“もっと みんなで 討論を”。」

「今、経済ではマクロ経済自体が大きな変革期にあるかもしれない。」

「なのでMMTをきっかけにこういった、みんなで討論して議論していこうと個人的には思っています。」

「(特に高齢化も進んで将来不安の大きい日本というのはこれまでの理論がなかなか通じにくい部分が多いのではという指摘に対して、)そうですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

MMTについて2つの番組を通してご紹介してきましたが、今あらためて思うのは、アイデアよもやま話 No.4447 驚きの経済理論”MMT”ではMMTを驚きの経済理論とお伝えし、最後に経済の素人ではありますが、私の見解として、MMT理論はケインズ理論を現代的に焼き直した理論のように思えると言ったのはあながち的外れではなかったということです。

 

さて、安倍政権はアベノミクスで、金融政策、財政政策、成長戦略の3本の矢を掲げましたが、経済成長率は思うように伸びず、従って税収も伸び悩んでいます。

そこで、年金や医療などの社会保障を維持するための費用を捻出するために10月に消費増税が導入しました。

その効果のほどは暫くは見届けるとして、景気の冷え込みが確認されるようであれば、ケルトン教授らが提唱しているように、最も効果的と言われる国による最も確実に世間にお金が回るインフラなどに対する公共事業に国の借金で取り組むことについて、専門家の間で大いに議論をすべきだと思います。

 

いずれにしても日本は資本主義国家です。

そして、資本主義は消費者が消費をすることで成り立っているのです。

ですから、消費が停滞しては資本主義を継続させさることは出来ないのです。

 

日銀の黒田総裁は金融政策により、金利2%上昇を目指してこられましたが、残念ながらマイナス金利政策まで実施しても景気は思うほど上向いておりません。

その原因は消費の停滞です。

 

ですから、次の国の政策の目玉としては、やはり最も効果的な公共事業への国による取り組みが検討されるべきです。

ではその具体的な対象ですが、以下の項目が考えられます。

・災害対策

自然災害(地震や大型台風など)の対策として電柱の地中化や雨水の大型貯水施設の建設など

・スマートグリッドのインフラ整備

・公共施設への再生可能エネルギー発電の導入

・国など公共機関の業務の徹底した電子化

 

同時に進めるべきは、AIやロボットなどの先進技術に取り組むベンチャー企業へのヒト・モノ・カネの面での支援だと思います。


 
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