2019年11月20日
アイデアよもやま話 No.4491 “ファクトフルネス”の必要性を示す2つの事例!

7月12日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で耳慣れない言葉、”ファクトフルネス”について取り上げていました。

そこで前回はその必要性についてご紹介しましたが、今回は必要性を示す2つの事例をご紹介します。

 

1つ目は今もまだ日韓の懸案事項である元徴用工問題に端を発した日韓問題です。

この問題については、国内の多くの識者が日本政府の主張に分があるとしているようです。

ところが、11月8日(金)付けのネット記事(詳細はこちらを参照)によれば、国際司法裁判で日本が敗訴となる可能性があるとしています。

その理由は、以下の通りです。

日本と韓国が国交を回復した1965年に締結された「日韓基本条約」と「請求権協定」で放棄されたのは、「外交保護権」という事実です。

「外交保護権」とは、ある国家の国籍を持つ個人が他国の国際違法行為によって損害を受けた場合に、国籍国が違反した国に対して国家の責任を追及する権限のことをいいます。

つまり、徴用工の問題に当てはめていえば、韓国政府が徴用工の損害賠償を日本政府に請求することです。

そして、「日韓基本条約」と「請求権協定」によって「外交保護権」が放棄されたということは、韓国政府が韓国人の被った損害賠償を日本政府に請求する権利を放棄したということです。

「外交保護権」の放棄に関しては、日韓で解釈の相違はないのです。

 

ところが、たとえば政府を介さないで、個人が被った損害の賠償を他の国の個人や企業に請求する場合は純粋な個人の間の損害賠償請求権なので、政府はまったく介入しません。

これを「個人請求権」と呼びます。

実は、今問題になっている徴用工問題は、徴用工が損害賠償を日本企業に請求するという「個人請求権」の問題なのです。

 

もしこれらの条約で「個人請求権」まで放棄されたという解釈ならば、徴用工の被ったとされる損害の賠償を日本企業に求めた韓国「大法院」の判決は明確な国際法違反です。

しかしもし、放棄されたのは「外交保護権」だけであって、「個人請求権」まで放棄はされてはいないという解釈ならば、「大法院」の判決は正しく、「日韓基本条約」や「請求権協定」という国際条約からみても、なんの問題もないことになります。

ところが、これまでの経緯はともかく、これまでの日本政府の「個人請求権」についての対応が二転三転して、その結果、「個人請求権」が放棄されているのかどうかについての解釈が曖昧なのです。

ということで、この記事でも記されているように、こうした内容の指摘はほとんど報道されていないのです。

 

更に、ウィキペディアの漢江の奇跡(ハンガンのきせき)の項には以下の記述があります。

 

漢江の奇跡は、朝鮮戦争で壊滅的打撃をうけた大韓民国(韓国)が、1960年代後半以降、外債を累積させながら急速に復興し、経済成長と民主化を達成した現象をさす。1960年代前半まで世界の最貧困国だった韓国は、国内総生産 (GDP) が北朝鮮を下回っていた。しかし、韓国は日韓基本条約の日韓請求権協定で個別に国民に支給すると日本側に説明して請求権資金として支払われた3億ドルの無償提供資金を、韓国経済発展のための国内投資資金に回したことで半世紀で世界10位圏の経済大国に発展し、その恩恵を受けた韓国企業は巨大な財閥に成長した。

 

こうした事実から、この時に日韓の間で合意された外交文書に「外交保護権」だけでなく「個人請求権」についても明確に記述されていれば、元慰安婦や元徴用工の問題はこの時点で解決済ということになっていたと思うのです。

 

いずれにしても、今回の日韓問題に限らず、国際間の問題解決にあたっては、国民の感情に流されず、両国の政府が一つひとつの事実の積み重ねの上に立って、更に未来志向で取り組みことがとても大切なのです。

 

2つ目地球温暖化問題についてです。

最近、地球温暖化問題で世界的に注目を集めているスウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんの発言が象徴しているように(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.611 『私たちが思っているよりも緊迫化している地球温暖化リスク その1 16歳の少女の訴えが世界を動かす!?』)、現在の地球温暖化の進行に大きな影響を与えているのは人類の経済活動という指摘が世界の多くの研究者の共通の見解です。

 

ところが一方で、アメリカのパリ協定離脱、およびこうした見解に異を唱える研究者もいることについて11月5日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で取り上げていたのでご紹介します。 

 

アメリカのトランプ大統領は11月4日、地球温暖化対策のパリ協定から離脱することを国連に正式に通告したことを明らかにしました。

協定がアメリカの労働者やビジネスに不公平な経済負担になっていることが離脱の理由だとしています。

実際の離脱は来年の11月4日でほぼ同じ時期に行われるアメリカ大統領選挙の大きな争点になりそうです。

 

こうした動きについて、番組コメンテーターで、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。

「中々複雑な問題だと思います。」

「近年、異常気象が頻発しているのは事実です。」

「それから気候変動への懸念が世界的に高まっている、こういうのも間違っていないです。」

「が(、しかし)、人類のCO2排出が気候変動の主犯であるという論点に関しては依然として議論があるのも事実で、例えば9月に23ヵ国、500人の科学者がサインして国連に出された所感があります。」

「そこでは、温暖化は人為的なものではなく、自然による影響が大きくて、超長期で地球の気候は温暖化と寒冷化を繰り返していると。」

「それから、現実に進んでいる温暖化のスピードは当初予測された温暖化進行の半分のスピードに過ぎないので、まだまだ科学的に分からないことが多いんじゃないかという主張をしています。」

「この信ぴょう性は私も判断出来ませんけれども、仮にここで言われていることに一定の真実があって、人類のCO2排出が主犯ではないかもしれないということになった場合に、それでも今進んでいる、例えば年間30兆円以上の再生可能エネルギーへの投資が毎年世界で進んでいると。」

「これに本当に経済的な合理性があるのかという話もあるし、それから先進国のある種、潔癖主義の理念先行で新興国に押し付けて、例えばアフリカやアジアでは未電化地域、人口10億人くらいいるわけです。」

「で、彼らは屋内で乾いた糞とか木を燃やして屋内の煙を吸って呼吸器系の病気やがんで早死にする人が沢山いる。」

「こうした人たちに安価な電力を提供する道を絶ってることにならないのかという論点もある。」

「なので、環境政策にはいろんな課題がありますけど、温室効果ガスだけが本当にそこまで重要なのかというのは再検証してもいいのかもしれないなと、こういうふうに思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

以前、お伝えしたように、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)も人類の経済活動が地球温暖化に100%の影響を与えているわけではないが、その可能性は非常に高いとの見解を示しています。

一方で、9月に23ヵ国、500人の科学者がサインして、温暖化は人為的なものではなく、自然による影響が大きいという内容で国連に出された所感もあるのです。

いずれにしてもプロジェクト管理と日常生活 No.609 『台風15号による千葉県を中心とした長期的な被害から見えるリスク対応策の見直しの必要性』などでお伝えしたように、現実に地球温暖化の進行により、大型台風や集中豪雨により、世界的に大きな被害が毎年出ているのです。

ですから、地球温暖化について、専門家の間では見解の相違があることは認めつつ、気温上昇による災害リスクはなくならないので、リスク対応策を実施すべきなのです。

 

さて、”ファクトフルネス”の必要性を示す2つの事例をご紹介してきましたが、国も国民も常に偏った事実のみをもとに判断することなく、どのような反対意見があるかも把握し、より広範囲な視点で事実を認識することがとても大切なのです。

そのよりどころとして、やはり報道機関やジャーナリストが常に立場の違いによる意見の相違などを反映させた記事を私たちに提供してくれることもとても大切なのです。


 
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