2019年11月13日
アイデアよもやま話 No.4485 脱「日本型雇用」の波!

7月9日(木)付け読売新聞の朝刊記事で脱「日本型雇用」の波について取り上げていたのでご紹介します。

 

大手企業の間で、若手社員の賃金水準を引き上げる一方、中高年社員には早期希望退職などを募って削減を進める動きが目立ち始めました。

グローバル競争や産業構造の変化に対応するため、人員の構成を転換する狙いがあります。

 

初任給を引き上げる企業が相次いでいます。

今年、大手企業を中心に初任給を引き上げ、「外資系企業並み」とアピールする動きが相次いでいます。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、来年春から初任給を約2割増の25万5000円としています。

若手の幹部登用に向けた人事制度の変更も検討し、入社3年で年収1000万円超も視野に入れています。

ソニーも、新入社員の年収をこれまでの約600万円から最大約730万円に引き上げる新しい賃金制度の導入を決めました。

高い専門知識を備えることが条件で、AI(人工知能)分野などの開発を担える人材の確保が狙いです。

 

厚生労働省によると、大卒者の初任給の平均額は5年連続で増加しており、2018年は20万6700円と、10年前に比べ1万円近く伸びました。

これに対し、電機や製薬業界を中心に早期希望退職を実施する動きが目立ちます。

東京商工リサーチのまとめでは、今年1〜6月に希望退職を募集した大手企業は17社と、昨年1年間の12社をすでに上回っています。

人手不足にもかかわらず、企業が希望退職を実施するのは、事業や人員構成の構造転換を図るためです。

バブル崩壊後や2008年のリーマン・ショック後に目立った「リストラ型」とは様相が異なる側面があります。

中外製薬は、2018年12月期の売上高が過去最高を記録したが今年4月、172人の希望退職を発表しました。

「新薬開発にAI人材が必要とされるなど、事業環境が大きく変わってきた」(広報)ことが理由といいます。

 

こうした動きに対応し、早めに古巣に見切りをつける中高年層も増えています。

大手電機メーカーで財務などを担当していた50歳代の男性は今春、IT関連の新興企業に転職しました。

この企業は将来の新規株式公開(IPO)に向けて財務関連のノウハウを求めていたといいます。

この男性は「これまでの経験を役立てられる職場で充実感がある」と話しています。

転職市場は活況で、リクルートキャリアの調査によると、2018年の40歳以上の転職者数は、2009年と比べ4.7倍と中高年層の人材流動化も進んでいます。

 

さて、日本企業が人材の構造転換に取り組むのは、仕事の効率が世界的にみて低いという実情があります。

日本生産性本部の調査では、2017年の日本の労働生産性(就業1時間当たり)は47.5ドルと前年から上昇しましたが、G7(先進7か国)では1970年以降最下位が続いています。

日本型の雇用は、新卒を一括採用し、広範囲の知識やスキルを持つジェネラリストを育てるのが一般的でした。

こうした人材は、より専門的な知識や技能が求められるAIやITの活用で欧米に遅れかねないと指摘されています。

生産性が高い働き方へと移行するには、日本型雇用の賃金体系や評価基準の転換が求められます。

 

政府は今年4月、「脱時間給(高度プロフェッショナル)制度」を導入しました。

働いた時間ではなく、仕事の成果に応じて給料を支払う仕組みです。

しかし、厚生労働省の集計によると、5月末時点で、導入の届け出は2件にとどまり、対象となる労働者もわずか12人です。

制度の適用には、金融商品のディーラーといった一部の専門職で、年収1075万円以上といった厳しい要件が課されます。

対象者は「全労働者の3%以下」とされ、経済界からは「使い勝手をもっと良くしなければならない」(経済同友会の桜田謙悟代表幹事)との声があります。

これに対し、労働組合側は「長時間の残業につながる」と反発を強め、同意を得るのが難しいです。

みずほ総合研究所の酒井才介主任エコノミストは「生産性が低いままでは、グローバル化している人材の取り合いに負け、競争力でも劣ってしまう」と指摘しています。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

ご存知のように、年功序列、および終身雇用は従来の日本型経営の特徴でした。

この大前提は、入社後の経験年数と従業員の生産性向上は比例すること、そして従業員の雇用の安定、および従業員の会社に対する忠誠心を高めることだと思います。

こうした経営は、ビジネス環境の変化がゆるやかで、しかも作れば作るほど売れる大量生産の時代にはとても有効だったと思います。

 

しかし、今のビジネス環境はAIやロボット、IoTという言葉に象徴されるようにITを中心としたテクノロジーの進歩がとても速い時代の真っただ中です。

ですから、GAFA(参照:アイデアよもやま話 No.4304 世界で進む企業間、および個人間格差!)に代表されるように、今やいち早く最新のテクノロジーを駆使したビジネスモデルを世界展開したベンチャー企業がこれまで長い期間をかけて成長を遂げて来た大企業の時価総額を短期間のうちに追い抜くというような状況を迎えているのです。

それを象徴している出来事として、中国のネット通販大手、アリババの11月11日という年1回の「独身の日」の一大セールです。
昨年はこの日、1日だけでの売り上げが3兆円を超え、今年はなんと4兆円を超えたなんていう状況は従来の小売業界においてはあり得ませんでした。
まさにインターネットの活用の賜物です。

このように、現在は言わばビジネス界における戦国時代と言えるのです。

そして、こうした状況は今後とも当分続くと思われます。

 

さて、こうしてみると、今回ご紹介した脱「日本型雇用」の波は当然の成り行きだと思います。

そこで、今後の「日本型雇用」のあるべき要件について以下にまとめてみました。

・最新のテクノロジーを駆使したビジネス展開に適用した雇用体系

  能力主義

  成果報酬

・年間を通したタイムリーな人材採用

・転職の流動性

・正規、非正規雇用に囚われない賃金体系

・海外の優秀な人材が集まるような環境整備

 

なお、こうした今後の「日本型雇用」を進めると同時に、ベーシックインカム(参照:アイデアよもやま話 No.4376 30、40代「貯金ゼロ」が23%!)のような制度も求められます。

なぜならば、AIやロボットの普及とともに人間の働く場が総じて少なくなってくるからです。


 
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