世界で巨額の利益を上げるGAFA(*)と呼ばれる巨大IT企業への規制が検討され始めています。
*グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック( Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社
こうした巨大IT企業の具体的な規制における課題について、3月22日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)の中で、番組コメンテーターで大和総研の熊谷
亮丸さんは次のようにおっしゃっています。
「大きく2つあって、1つは電気通信事業法の域外適用があって、例えばグーグルは日本でGメールを展開していますが、彼らは国内に通信設備を持っていないんで、この法律が適用されないんですね。」
「そうすると、通信の秘密を守る必要もないし、事故があってもそれを報告する必要もないという問題がある。」
「もう一つはちゃんとした競争の市場になっているのかどうか。」
「例えば、アプリなどで一方的に規約が変わることがありますが、そういうのを公正にしないといけないと思うんですね。」
「この2つが課題ですね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
また、アイデアよもやま話
No.4303 フランスが「デジタル課税」導入へ!ではIT大手企業に対するフランスの課税の取り組みの事例をご紹介してきました。
そうした中、6月9日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でGAFAに関する国際的な課題について取り上げていたのでご紹介します。
世界で巨額の利益を上げる巨大IT企業、GAFAに対する包囲網が強まっています。
6月8日に開幕したG20の財務省・中央銀行総裁会議では各国の閣僚らが参加し、新たな課税ルールについて議論が行われます。
GAFAとG20、会議の行方に世界が注目しています。
6月28日に開幕するG20、大阪サミット、これに伴い5月から日本各地で様々な関係閣僚会合が開かれています。
このうち、福岡市では6月8日から財務省・中央銀行総裁会議が開かれています。
この会合では、米中貿易摩擦とIT企業への課税ルールが焦点となっています。
番組ではこのIT企業への課税ルール、いわゆる“デジタル課税”について注目していきます。
巨大IT企業、GAFAは国境を超えたデータのやり取りで巨額の利益を上げています。
これに対して今の国際的な課税ルールはビジネスの電子化に追いついていません。
このため各国の政府は十分な課税が出来ないという、もどかしさを抱えています。
なぜなのか、今のルールでは“拠点なくして課税なし”と言われるように、国内に店や工場など企業の“物理的な拠点”があるかどうかが課税の基準になっているからなのです。
こうした中、フランスなどヨーロッパではGAFAに対し、何とか課税出来ないかと、具体的な動きが出ています。
フランスは大手IT企業の売上高に課税する“デジタル課税”を導入します。
全世界で年間7億5000万ユーロ(948億円)の売り上げがある企業などが対象で、フランス国内の売り上げの3%を課税対象としています。
適正な額が支払われているか、政府が必要に応じて調査し、支払われていなければ制裁の対象になります。
一方でEU、ヨーロッパ連合全体での“デジタル課税”の導入は進んでいません。
低い税率でIT企業の誘致を進めて来たアイルランドなどの反対で調整が難航、統一ルールの導入が見送られました。
このようにEU域内だけでも苦労している国際的な課税ルールづくりなのですが、福岡の会合では世界およそ130ヵ国でつくる国際的な枠組みでとりまとめた新たな課税ルールの作業計画が披露されます。
その計画の内容は以下の通りです。
・サービスの利用回数
各企業が提供するサービスの各国での利用回数やマーケティング費用などに応じた課税
例えば利用者の検索回数に応じた課税、顧客リストや広告宣伝費などを基準にすることが考えられる
・「タックスヘイブン」で課税逃れの場合、追加で課税
多国籍企業が「タックスヘイブン」と呼ばれる、税率の低い国に利益を移して課税逃れをした場合には追加で課税する
その具体案は来年、2020年に取りまとめることにしています。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
また、9月27日(金)付け読売新聞の朝刊記事ではアメリカの動きについて取り上げていたので以下にご紹介します。
まずGAFAの各分野の市場支配力です。
Google :検索シェアが世界の92.4%
Apple :スマホのOSのアメリカのシェアが55.6%
Facebook:ソーシャルメディアのアメリアの利用率が69%
Amazon :ネット通販のアメリカのシェアが47.0%
次は世界の企業別デジタル広告収入です。
Google :891億ドル
Apple :(不明)
Facebook:550億ドル
Amazon : 92億ドル
こうした状況を踏まえて、GAFAなど巨大IT企業に対し、アメリカの規制当局や議会が6月以降から相次いで反トラスト法(独占禁止法)に基づく調査に乗り出しました。
焦点となるのは、巨大IT企業が市場支配力を使って競合他社を排除するといった問題行為を行っているかどうかです。
また、消費者のプライバシーが十分に保護されているか、情報収集のあり方も調査対象です。
規制当局などは、GAFAが将来ライバルになりそうな新興企業を早い段階で買収し、競争の芽を摘んでいないかどうかも調査対象として重視しています。
一方、取引先などへの不当行為という問題も浮上しています。
アマゾンが通販サイトに出品する中小企業に不当な取引を強いているといった問題で、ワシントン・ポストは9月に連邦取引委員会(FTC)が調査に着手したと報じています。
また、アップルのアプリストアでは、アプリの価格が不当に高くなっているとして、消費者らが反トラスト法の集団訴訟を起こしています。
アメリカ連邦最高裁は5月に消費者が訴訟を起こす権利を持っていることを認めました。
こうした規制当局の動きに対して、GAFA側は、いずれも各分野で激しい競争にさらされているとし、競争を阻んでいるとの見方を否定しています。
今後、調査を本格化させる規制当局と全面対決することになりそうです。
以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。
先ほどのGAFAの各分野でのシェア、あるいはデジタル広告収入額をみてくると、あらためてこの4大IT企業がそれぞれの分野でいかに巨大な位置を占めているかが分かります。
そして、巨大な企業による独占状態は競争原理が働かなくなる可能性が高まり、健全なビジネス環境とは言えません。
そこで、今回ご紹介したテレビ番組や新聞記事を通して私なりに巨大IT企業「GAFA」を巡る問題、およびその問題の対応策について以下にまとめてみました。
(問題)
・強力な市場支配力による競争原理の弱体化
・事業の展開先の国での関連法の適応外
巨額な売り上げなどに則していない不十分な課税
通信の守秘義務対象外 など
・個人情報の不当な活用
(問題対応策)
・グローバルなネット関連ビジネスへの国内法の適用
課税ルール(デジタル課税)
個人情報データの利用制限
・独占禁止法の適用
・違法行為に対する厳しい罰則
「タックスヘイブン」での課税逃れの場合の追加課税など
・各国の関連法の国際的な共通化
こうしてまとめてみると、やはりインターネット、およびITの活用は従来型の経営者が想像を絶するほどの短期間のうちにベンチャー企業を大企業へと成長させ、既存の大企業の収益力を凌駕してしまうほどのパワーを持たせてしまうということが実感出来ます。
そればかりでなく、こうしたGAFAの巨大なパワーの持つ弊害、あるいはリスクは世界各国に課税など法律の大幅な見直しを迫っているのです。
しかも、こうしたITビジネスによる大転換は、AIやロボットなどの活用と相まって従業員の省力化、あるいはリストラを加速させます。
その結果、格差化は一段と進みます。
こうした状況は、まさにプロジェクト管理をしている中で、短期間のうちに大きな問題を抱える事態になって、その対処に大変悩んでいるマネージャーを思い起こさせます。
一方、GAFAのようなIT関連ビジネスは私たちの暮らしの利便性を高めてくれていることは確かです。
ですから、一言で言えば、未来のGAFAのようなベンチャー企業を育成しつつ、その一方で独占的なパワーの弊害を取り除くといった取り組みが今後とも求められるのです。