課題にもいろいろありますが、中でも地球温暖化のような世界的に大きな課題、あるいは国家的な課題の設定、およびその対応策はとても重要です。
さて、早いもので、令和元年も半年が過ぎてしまいました。
そうした中、ちょっと古い情報ですが、5月5日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)の「風を読む」のコーナーで令和時代の日本の課題について取り上げていたのでご紹介します。
新たに幕開けした令和の時代、日本中が祝賀ムード一色に包まれました。
世界が大きく揺れ動く中、船出した令和時代の日本、行く手には様々な課題が待ち受けています。
この新たな時代は平成が残した課題とどう向き合って行けばいいのでしょうか。
平成の30年間、バブル崩壊、リーマンショックと、激しい波に翻弄された日本経済、その今後を考える時、思わず不安を覚えるデータがあります。
平成元年(1989年)、世界の企業の株式時価総額トップ50のうち、32社が日本企業だったのに対し、平成30年(2018年)は35位のトヨタ自動車1社のみでした。
こうした現状について、日本総合研究所の寺島 実郎会長は次のようにおっしゃっています。
「平成がスタートした頃、世界に冠たる工業生産力をリードする製造業の企業群を育てたことも確かだったんですよ。」
「ところが、インターネットの登場をテコにして新しい企業群が生まれて来た。」
「世界の流れが変わっていく中で、日本は「工業生産力の優等生」としての枠組みから中々出られなかった。」
更に、今後を不安視させるのは、急激な人口減少です。
日本の人口は、令和35年(2053年)には1億人を割り込むと予想されるなど、国力の低下が懸念されます。(国立社会保障・人口問題研究所による2017年推計)
そこから脱するカギについて、寺島さんは次のようにおっしゃっています。
「多数のアジア人を引き込んで、物流、人流、お金の流れもそうだと思います。」
「日本という国の活力を持っていかなくてはならない。」
「アジアのダイナミズムをどれだけ賢く吸収して、日本という国を発展させていくのかというのが、令和に変わった日本の大きな課題になって来ているということだけは間違いないですね。」
一方、政治に目を転じると、大胆な規制緩和や選挙制度改革が行われた平成の時代、この間の政治に危機感を持つ、元経済企画庁長官の田中
秀征さんは次のようにおっしゃっています。
「平成を一言で言うと、残念ながら「停滞の時代」と。」
「バブルの後始末とかに手間取っていた間に停滞を招いたと。」
「それを更に加速させたのが「小選挙区制」ですよね。」
「自分が属しているところ(党)の指導者にモノを言える政治家がいなくなって来る。」
「そうすると、「政策論争」が無くなるんですよ。」
「忖度ばかりするのが劣化の極地だろう。」
政治家の劣化を強く訴える田中さんですが、これからの時代に日本の政治が果たすべき役割について、次のようにおっしゃっています。
「日本が無かったら世界が成り立たないというくらいの「信頼感」、そういう「必要とされる国」になる。」
「それは軍事的に、政治的に大きくなることでも強くなることともちょっと違う。」
「最後に頼れる国、知恵を出せる国、そこに国力を求めていくというか、そういう方向に軌道を敷いていくのが「令和の時代」だと思うよね。」
しかし、こうした日本の道筋には大きな懸念もあります。
平成の時代、世界では戦争や内戦が続き、湾岸戦争(1991年)やイラク戦争(2003年)では日本外交はアメリカ追随といった批判にさらされました。
元外務次官の薮中 三十二さんはそこからの変化を次のように訴えています。
「今までと同じように惰性でアメリカは大丈夫だよねと、頼めばいいよねという時代ではなくなったという認識ははっきりと持たなければいけない。」
背景にあるのは、「アメリカファースト」を掲げるアメリカの変質、「自国第一主義」の台頭です。
薮中さんは次のようにおっしゃっています。
「いつもアメリカの言いなりではないんだと、日本はこういう風に平和を作り上げていくんだと。」
「世界中にある「日本の信頼力」をベースにして、きっちりしたメッセージを発信する。」
「平和を創る外交力、そういう格好で日本の外交を進めていけば、これは大きなチャンスだと思います。」
そして、平成の時代に進んだIT革命、更にAI、人工知能の進化によって今後私たちの仕事の多くが奪われるのではないかという不安もあります。
こうした令和の時代について、AI研究の第一人者、国立情報学研究所教授の新井 紀子さんは次のようにおっしゃっています。
「昭和、平成の時代に私たちが築き上げて来たような「働き方」が根底から覆っていくだろうなと。」
「「AIに出来ないことが出来る人」は引く手あまたになるんだけれども、「AIに出来ることしか出来ないような方」は中々良い職には就けないというようなことがあって、その格差が広がる社会になるんじゃないかということが令和の時代の一番大きな課題だなと思いますね。」
「(テクノロジーが生み出す新たな格差を前に、)日本が人口が減っている中でも、国力を上げていく可能性というのは、「人材の質」、量ではなくて質にかかっている。」
「人材育成とか、そういうことが出来ないと、デジタル時代を日本がどうやって迎えればいいのか、本当に誰も見通しが立たないと思います。」
令和の時代の新たな課題にどう向き合って行けばいいのか、日本人の知恵が試されています。
国力について、司会の関口 宏さんは次のようにおっしゃっています。
「「国力」って、経済ばっかりじゃないような気がするんだね、僕はね。」
「何か日本人一人ひとりが出しているエネルギー、それも前向きなエネルギーの総合力みたいな感じが僕はしてるんですが。」
コメンテーターで東京大学名誉教授の姜 尚中さんは次のようにおっしゃっています。
「「国力」に対して「民力」というのがあります。」
「で、そういうものが一番言われていたのは、実は明治、大正、昭和の中で大正期だったと思います。」
「大正デモクラシー、民本主義というのを吉野 作造(大正時代を中心に活躍した日本の政治学者、思想家)が言ったわけですね。」
「僕は何となく、平成というのは昭和、平成、令和ときて、(戦後)約70年、平成は大正の約2倍の年数なんですが、何となく似ている気がしているんですね。」
「ただ問題は(19)20年代から(19)30年代にかけて、勢力圏というかたちで現在の「自国ファ−スト」が出て来て、それに乗り遅れるなというかたちで日本がレイトカマー(Late Commer)でああゆう無謀な戦争に突っ込んで行くわけで、何が大切か、一言でいうと、石橋 湛山が言った「小日本主義」、「小さい」というのは収縮するという意味ではなく、自由貿易として多国間の国際関係の中で日本は潤う。」
「そして一番大切なことは地方分権化、つまり中央集権から分権化を進めて、地域の再生を図らなければ、私は日本の未来はないんじゃないかと。」
また、コメンテーターで評論家の大宅 映子さんは次のようにおっしゃっています。
「この1週間、ずっといろいろ見てて、すごく引っかかったコメントがあったんですけど、平成は日本の世界の中での位置付けが相対的に下がってしまった。」
「だけど、平成は良かったっていう人は70%以上。」
「なぜかというと、戦争が無くて平和だったから。」
「ちょっと待ってよ、世界中は戦争だらけじゃないですかって。」
「日本で戦争が無かったから、それが平和っていうのがまかり通るっていう話は、私は政治家が劣化しているって、さっき話があったが、政治家だけじゃない、劣化しているのは。」
「余りにも鈍感になり過ぎていると思う。」
「で、これからは時間内に答えが出せる優等生が必要なんじゃなくて、答えがない時代なので、そういう人と違う何かを始めるような人をみんなが頑張ってやってみてって支える気持ち、ムード、そういうことがないと本当に駄目な国にずうっと停滞してしまうんじゃないかと思います。」
また、コメンテーターでフォトジャーナリストの安田 菜津紀さんは次のようにおっしゃっています。
「今、大宅さんが最初におっしゃったことに近いんですけど、平成って振り返ってみると、本当に平和な時代だったんだろうかと。」
「例えば、映像の中にもありましたが、もう開戦の根拠さえ失ってしまったイラク戦争を日本は支持して、現地に自衛隊を送ったっていうことがあって、未だ混乱が続いている現地にお邪魔してみると、その数十万人という彼ら、彼女たちはなぜ死ななければならなかったのかということをあらためて突き付けられますし、それでもアメリカに対する追随姿勢を日本が止めないのはなぜかということも考えてしまうんですね。」
「で、そういった過去の過ちを認めるということはイコール敗北ではないですし、むしろ教訓を力にするっていうことが、これから社会の力を本来であれば養っていくということじゃないかなとは思います。」
また、コメンテーターで歴史家・作家の加来 耕三さんは次のようにおっしゃっています。
「歴史学の骨組みの一つに暦法、いわゆる暦ってあるんですね。」
「十干十二支ですね。」
「60年で一回りするってのがあるんですけども、その年、その年、60年ごとに見ていくっていうのがあるんですが、一つ前が丁度、日米安全保障条約の改定の年なんですね。」
「昭和35年の1960年でした。」
「60年、60年見ていくと、なんと来年は源氏が旗揚げした年。」
「で、関ヶ原の戦いが起こった年なんです。」
「で、まあ、いわゆる新しい生命が新たに躍進する年になる。」
「正しいかどうかは別にして、立ち止まって、そういうこともあり得るかもなということで、考えてもらう必要があると思いますね。」
「大きく動く可能性が歴史学的には在り得るなと。」
最後に、コメンテーターでBS−TBS「報道1930」キャスター編集長の松原 耕二さんは次のようにおっしゃっています。
「最近ですね、大勢の若者たち、大学生たちと話す機会があったんですが、「私たちは年金もらえないよね」と、「老後はどうなるんだろうね」と。」
「まあ、そういうことを心配してて、驚いたんですけど、一方で、テクノロジーなんかの力で何とかなると。」
「少なくとも悲観的ではなかったということがものすごく救いだったですね。」
「ただ、彼らがいきなり背負う日本の現実はというと、この20年間でOECDの調べによると、主要国で日本だけが9%の時給が下がって、他の国は軒並み上がっているのに、これが日本の現実なんですよね。」
「これは産業構造の転換に失敗する中で、個人に我慢してもらって何とか国力を維持しようともがいていたと言えるわけですけども、これからはGDPという全体のパイを求めるんじゃなくて、一人ひとりがどうやったら幸せになれるか、そっちに変えていくべきじゃないかという気がしますね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組を通してまず驚いたのは、以下の2つの事実についてです。
・平成元年(1989年)には世界の企業の株式時価総額トップ50のうち、32社が日本企業だったのに対し、平成30年(2018年)は35位のトヨタ自動車1社のみであること
・この20年間で、主要国で日本だけが時給が9%下がっていること(OECD調べ)
この事実から、まさしく平成時代は日本経済がバブルの絶頂期から混迷の一途をたどったと言えます。
一方で、いろいろあったにしても、明治、大正、昭和、平成の時代を通じて、平成だけは日本が戦争に突入することはありませんでした。
確かに、大宅さんの指摘されているように、世界では今も世界中のどこかで、紛争や内戦が途切れることなく起きています。
しかし、やはり日本国民の一人として、平成の時代に日本が戦争に巻き込まれなかったことはとても良かったと思います。
さて、番組を通して、私の思い付いた令和の時代の日本の国家的な課題、およびその対応策について以下にまとめてみました。
(課題)
・少子高齢化による国力の衰退
・経済の伸び悩み
・格差化の進行
・地球温暖化の進行
・脱原発、および再生可能エネルギーへの消極的な国の対応
・米中二大大国の覇権争い
(課題対応策)
・AIやロボットなど、先端テクノロジーの活用による生産性の向上
・ベンチャー企業の育成、および積極的な支援
・海外からの優れた企業の誘致
・海外の優秀な人材の活用
・テクノロジーの進歩に即した人材育成
・格差化の改善
・少子高齢化対策
・選挙制度の見直し
・地球温暖化対策の加速化
・、脱原発、および再生可能エネルギーへの積極的なシフト
・アメリカ追随からの脱却、および独自の外交路線の構築
・国際平和への積極的な貢献(平和憲法の世界展開など)
・多くの国からの日本に対する必要性の向上
・国民の幸福度を国家的な指標として掲げ、常に世界ランキング1位を目指すこと
さて、国力の源泉とも言える日本経済は伸び悩んでいますが、最後に明るい情報をお伝えします。
6月26日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)によると、昨年度の国の一般会計の税収は60兆円を超えて、バブル期の1990年度の水準を上回り、過去最高となる見通しであることが分かりました。
景気の回復で株式の配当収入などが増えたことに伴って、所得税の税収が伸びたことが主な要因です。
しかし、一方で格差化も進んでいるのです。
この落差はいったい何なのでしょうか。
また、米中の覇権争いの影響など、経済の下振れリスクがあるので安心は出来ないのです。