2019年10月13日
No.4458 ちょっと一休み その690 『「米中対立の世界」その先は?』

米中の覇権争いについてはアイデアよもやま話 No.4345 ”未来の覇権”を目指す中国 その1 アメリカとの技術覇権争い!などでこれまでお伝えしてきました。

そうした中、5月31日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「米中対立の世界」の今後について、マレーシアのマハティール首相へのインタビューというかたちで取り上げていたのでご紹介します。

 

米中の対立に翻弄される現在の国際社会について、東南アジアを代表するリーダーはどう見ているのでしょうか。

5月30日から2日間の日程で始まった第25回国際交流会議「アジアの未来」、最初にスピーチに立ったのがマレーシアのマハティール首相でした。

ちなみにマハティール首相は今年94歳になりますが、昨年首相に返り咲きました。

そのマハティール首相は米中貿易戦争の行方に強い関心を持っており、番組のインタビュイーに応じ、次のようにおっしゃっています。

「(アメリカの中国に対する現在の姿勢について、)アメリカは外国との貿易を全て黒字にしようと考えないで欲しい。」

「貿易の相手国によっては黒字のこともあるし、赤字のこともある。」

 

現在、マレーシアの貿易額に占める割合は以下の通りです。(マレーシア統計庁調べ)

輸入    輸出

中国   19.9% 13.9%

アメリカ  7.4%  9.1%

 

ただ、マレーシアから中国に輸出された部品はアメリカ向けの製品に使われていて、アメリカ国民も低価格の恩恵を受けていると指摘しています。

マハティール首相はアメリカの“制裁”に訴える手法を批判し、次のようにおっしゃっています。

「他国と競争になると、アメリカは力に訴える。」

「それでは国と国との関係は深まらない。」

 

トランプ政権が進める“ファーウェイ包囲網”にも追随しない考えです。

巨大な国内市場を抱える中国は、アメリカの相次ぐ制裁にも耐えられると見て、次のようにおっしゃっています。

「長い目で見れば、中国は生き残る。」

「泣きを見るのはアメリカ。」

 

マハティール首相へのインタビューを終えた大江 麻理子メインキャスターは次のようにおっしゃっています。

「今回特に感じたのがアメリカに対して批判的で、中国に対しての距離の近さのようなものを感じさせたところが印象的でしたね。」

「でも決してマハティール首相は中国の言いなりになるわけでもないんですね。」

「昨年首相に返り咲いてすぐに取り組んだのが、“一帯一路”の一環であるマレーシアの鉄道事業の大幅な見直し、これによって随分建設費も減らしたわけなんですね。」

「ただ、その一方で、北京で開かれた「“一帯一路”フォーラム」の講演では「“一帯一路”を全面的に支持しますよ。これはマレーシアに恩恵をもたらすものですよ」と世界中に向けて発信をして、中国に花を持たせるかたちになったと。」

「だから、したたか。」

「中国の“債務の罠”、こういったところを回避しながら、ちゃんと実利を取っていくというところが本当に政治手腕だなと思いましたね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

マハティール首相は「貿易の相手国によっては黒字のこともあるし、赤字のこともある」とおっしゃっていますが、全くその通りだと思います。

ところが、アメリカのトランプ大統領は自国、アメリカは中国を始め、他国との貿易に対して赤字が許せないと考えています。

この考え方は特に世界をリードする立場にある世界一の大国、アメリカの大統領の考え方としてとても相応しいとは言えません。

もし、本気でどの国との貿易においても黒字でなければならない状況を目指すのであれば、まさにアメリカの独り勝ちになってしまいます。

トランプ大統領がこのような主張を世界に訴えている背景には、来年の大統領選挙を見据えて、自分の支持層を広げて有利に選挙を進めるためと言われています。

もし、世界各国の指導者がこうした“自国ファースト”を目指して動き始めたら、世界は弱肉強食の殺伐とした雰囲気に覆われてしまいます。

 

また、アメリカの“制裁”に訴える手法についても、力に訴えるのでは国と国との関係は深まらないと批判していますが、これについても全く同感です。

こうした考えに基づき、マハティール首相はトランプ政権が進める“ファーウェイ包囲網”にも追随しない考えといいますが、考えのブレのなさを感じます。

 

また、巨大な国内市場を抱える中国は、アメリカの相次ぐ制裁にも耐えられると見て、長い目で見れば、中国は生き残り、泣きを見るのはアメリカだとおっっしゃっていますが、これもその通りだと思います。

短期的に見ても、もしアメリカの制裁で中国が不況に陥ってしまうようなことになれば、アメリカのみならず世界経済に与える影響は計り知れません。

 

そもそもこれまでのアメリカ経済の成長は、軍事力などの力に寄るのではなく、先進的なテクロノジーの開発、およびそれを活用するビジネスモデルの開発によるところが大きいのです。

ですから、本来であればトランプ政権は“ファーウェイ包囲網”を世界各国に訴えるよりも、ファーウェイなど中国メーカーに負けない技術力を開発して世界展開を図るべきなのです。

それを一時的に“ファーウェイ包囲網”などで中国メーカーの動きを封じ込めようとしても限界があるのです。

 

ということで、このまま2大大国、アメリカ、中国による覇権争いが続き、短期的には中国経済が大打撃を受けたり、長期的には軍事衝突にまで突き進めば、両国のみならず世界各国への影響は計り知れません。

ではその打開策ですが、米中ともに“自国ファースト”、あるいは”覇権主義“ではなく、”“共存共栄”、あるいは“平和ファースト”を目指していただきたいと思います。


 
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