最近、「”こんまり流”片づけ術」という言葉をよく目にすることがあります。
そうした中、5月24日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でも”こんまり流”片づけ術について取り上げていたのでご紹介します。
皆さんは「人生がときめく片づけの魔法」という本をご存知でしょうか。
“こんまり”の愛称で知られる近藤 麻理恵さんが追求し続けた片づけの考え方をまとめたものです。
40以上の言語に翻訳されていまして、発行部数は1100万部を超えるというベストセラーになったのですが、そのおよそ半分はアメリカで販売されたということです。
この”こんまり流”の片づけはなぜアメリカ人の心を捉えたのでしょうか。
今年1月からアメリカの動画配信大手、ネットフリックスが放映する番組、“こんまり”こと近藤 麻理恵さんの片づけレッスンの様子を撮影したドキュメンタリー番組です。
持ち物に対して、ときめきを感じるかどうかを基準にモノを片づけていくという”こんまり流”が今全米の注目を集めているのです。
アメリカでは“近藤”という言葉が”こんまり流”の片づけを意味する動詞として使われるほどの社会現象となっています。
2016年からアメリカ西部のカリフォルニア州ロサンゼルスに活動の拠点を移した近藤 さん夫婦、今回その“こんまりさん”が夫の川原
卓巳さんと一緒に番組の取材に応じました。
取材に対して、“こんまりさん”は次のようにおっしゃっています。
「(世界に広めたいという思いはどこかにあったのかという問いに対して、)元々は本当になかったんです。」
「この活動をしていく中で、特に海外の方からの反応で片づけをすることによって人生が本当に変わっていった、本当に良くなっていったという声を聞くにつれて、この片づけをもっと沢山の方に知っていただくべきものかもしれないと思ったのです。」
またビジネス面からサポートする夫の川原さんも個人消費がGDPの約7割近くを占める消費大国のアメリカでは“こんまり流”へのニーズがあると考えていました。
夫の川原さんは次のようにおっしゃっています。
「これ以上モノを増やしても幸せにならない状態になってしまった。」
「じゃあ次どうしようっていうと、一人ひとりが自分の家の環境を心地いい状態にするにはどうしたらいいかというのが多分人が向き合うべき次の幸せの領域なんだろうなと感じていて、その中で彼女が・・・」
そこでアメリカでも多くの人に“こんまり流”について知ってもらおうと、コンサルタントの養成を始めたのです。
そのコンサルタントの1人、ニューヨークに暮らすカリン・ソチさんを訪ねました。
家の中はまるでショールームのように片づいています。
でもカリンさんが家の中で最も好きだという場所は“こんまりクローゼット”です。
カリンさんは次のようにおっしゃっています。
「私にとって最も大切なモノだけに囲まれる場所なんです。」
元々は経理の仕事をしていたカリンさん、5年前に「人生がときめく片づけの魔法」を読み、“こんまり流”の片づけを実践した時から人生が変わったといいます。
カリンさんは次のようにおっしゃっています。
「家の中がモノで溢れていたことに驚きました。」
「“こんまり”に興奮したわ。」
カリンさんは2016年に“こんまり流”片づけコンサルタントの養成講座に参加、4日間の研修で参加費用は日本円で20万円以上したといいます。
筆記試験にも合格し、“こんまり流”のコンサルタントとして認定されたのです。
現在は、約30人の顧客と契約し、毎日レッスンに出かけるカリンさん、この日訪ねたのは初めてのお客、ファッションデザイナーのアリソン・ヴィセンチさんの家です。
数ヵ月前にニューヨークに引っ越して来て、妹との暮らしを始めたのですが、問題がありました。
部屋を見せてもらうと、そこは服で溢れていました。
床は靴だらけです。
引き出しを開けても靴があります。
部屋の広さが半分ほどになったことで、モノが溢れてしまったのです。
あまり着ていない服が入っているというケースを1つリビングに運ぶようにカリンさんは指示しました。
なぜ着ていないのか、アリソンさんに説明してもらいます。
「色は好きだけど、着こなし方が分からない。」
「これはニューヨークの素晴らしいデザイナーの服。」
「でも体型に合わなくて、私には似合わないの。」
この説明を聴いて、カリンさんは次のようにおっしゃっています。
「“こんまり流”の考え方では、モノは使われるために存在するの。」
「だから、何らかの理由で使わないモノをクローゼットの中にしまっておくことはあなたに良い影響を与えないわ。」
着ていない服は手放すべきだとカリンさんは言います。
捨てると決めた服をケースに入れていくアリソンさん、しかし母親からプレゼントされた服を前に、その手が止まりました。
アリソンさんは次のようにおっしゃっています。
「長い間しまい込んでいて着る理由を探していたの。」
「着ないことに罪悪感があったの。」
こうしたアリソンさんの思いに対して、カリンさんは次のようにおっしゃっています。
「モノを贈るのは「あなたが大切だ」という“思い”を伝えるため。」
「あなたに出来ることは感謝を伝えること。」
「そして贈り物を探す時の母の“思い”を受け止めることなの。」
アリソンさんは1時間のレッスンで30以上の服を手放すと決意しました。
そして、次のようにおっしゃっています。
「着ていない服と向き合ったことで、今の自分が望む生活のかたちについて考えることが出来たんです。」
アメリカでは日本とは少し違う反響を感じているとこんまりさんは言います。
「日本では元々“片づけ方法”として皆さんに知っていただくことが多かったんですが、海外の場合はどちらかというとマインド面というか意識の面で片づけが人生の中にどういうふうな変化を及ぼすのかというところに皆さん興味を持って下さる方が多いのかなってていう印象がありました。」
「私自身が本当に片づけにばかり向き合ってきたので、モノに対してなんでこのモノがここにあるんだろうということにすごくフォーカスしていく中で、モノって私たちを幸せにするためにあるんだっていうふうに気づいた時に、自分の中からすごいエネルギーが湧いてくるような感覚がしたんですね。」
「不安があったり、孤独を感じることがあると思うんですけれども、身の回りを見て欲しい。」
「絶対自分がときめく大切なモノがあって、それらがちゃんとあなたを支えていますよっていうことを伝えたい。」
モノに感謝する気持ちを取り戻すために片づける、“こんまり流”は今、アメリカで確実に広がっています。
こうした状況について、番組コメンテーターで、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。
「片づけで自分の生活を律するというところを取ると、これ一種の自己啓発ビジネス。」
「で、アメリカはすごく自己啓発マーケットが大きい。」
「で、それにライフスタイルブランドしての要素が組み合わさっているという意味でユニークだなと思います。」
「で、アメリカの投資会社のセコイアキャピタルを含むいくつかのファンドが既にこの“こんまり”のビジネスに投資をしていて、それだけポテンシャルが認められているということだと思うんですね。」
「で、これ見方を変えると第2のマーサ・スチュワートのビジネス。」
「アメリカで大成功した料理コラムニストから出発して、クッキングとか生活用品などのライフスタイルブランドを自分で運営するに至って、最盛期400億円を超える売り上げがあったというセレビティなんですけど、こんまりさんもこういう存在になることを期待されているように思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
“こんまり”の愛称で知られる近藤 麻理恵さんの著書「人生がときめく片づけの魔法」が40以上の言語に翻訳されており、発行部数は1100万部を超えるというベストセラーになっいるという事実にはビックリです。
もし、世界中の多くの人たちが沢山のモノを買うだけの購買力を持っていなければ、こうした本が世界的にベストセラーになることはないと思います。
なぜならば、モノを買うお金にそれほど余裕がなければ、どうしても買いたいと思うモノに絞って、そのモノを買うためにお金を貯めてようやく買うことが出来るという状況ですから、手にしたモノは少なくとても大切に扱われます。
ですから、こうした状況の人たちの心に”こんまり流”片づけ術の入り込む隙はないのです。
ところが、今や先進国を中心に経済が成長して飽和状態になり、番組の登場人物のように身の回りがモノで溢れている人たちが増えているのです。
中でも個人消費が突出しているのがアメリカで、個人消費がGDPの約7割近くを占めているといいます。
ですから、世界の中でも特にモノが溢れていて、これ以上モノを増やしても幸せにならない状態になってしまったアメリカ人に”こんまり流”片づけ術が受け入れられているという現状はうなづけます。
さて、こうした家の中がモノで溢れていて、どのように片づけようかと悩んでいる人たちにとって、持ち物に対して“ときめき”を感じるかどうかを基準にモノを片づけていくという”こんまり流”の考え方はとてもユニークで斬新だと思います。
この基準であればとても分かり易く、誰でもどれを残すかどうかの区分けが出来ます。
しかも”こんまり流”の考え方を取り入れた人の生き方にまで影響を与えてしまうところが凄いと思います。
またこの”こんまり流”片づけ術をビジネスとして世界展開していく考え方も、今後の日本のビジネスの進むべき道の一つとしてとても参考になります。
こんまりさんご夫婦は二人三脚でアメリカでコンサルタントの養成を始めたといいますが、更に廃棄処分の対象になってしまうモノの交換サイトを立ち上げるのもいいのではないかと思います。
なぜならば、ときめきを感じるかどうかは人によって異なり、ある人にとってはときめきを感じなくても他の人にとってはときめきを感じることはあり得るからです。
それ以前に世界中にはモノを買う余裕のない人たちは大勢おります。
こうした人たちにとっては、ときめきを感じる以前に廃棄処分の対象になってしまうモノは必需品になり得るのです。
それにしても片づけという視点から、そもそも片づけとは何ぞやを自分なりに突き詰め、その考え方、および片付け術をビジネス化し、更にコンサルタントの養成までをビジネスにしてしまい、世界展開をしてしまう“こんまりさん”ご夫婦はとても凄い生き方をしていると思います。