2019年09月30日
アイデアよもやま話 No.4447 驚きの経済理論”MMT”!

5月19日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で今話題の経済理論”MMT”について取り上げていたのでご紹介します。

 

今、アメリカで国の借金の是非を巡り、論争が巻き起こっています。

「借金を怖がるのはもう止めるべき」、「いや、極めて危険な考えだ」、論争を巻き起こしているのは、「自国の通貨で借金の出来る国は税制破たんすることがない」という驚くべき理論、その名もMMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)です。

 

今、アメリカで最も注目される若手議員の一人、民主党のオカシオ コルテス下院議員が支持を表明し、次のようにおっしゃっています。

「税収だけで必要な支出は賄えません。」

「借金をしてでも公共投資に使うべきです。」

 

これに対して、中央銀行(FRB)のトップ、パウエル議長は次のようにおっしゃっています。

「財政赤字が問題にならないという考えは全く誤っている。」

「必要なのは借金を減らし、税収を増やすことです。」

 

いくら借金をしても国が破たんしないなどということがあり得るのか、MMTの提唱者の一人で25年間この研究をしているバード・カレッジのランダル・レイ教授は、番組の取材に対して次のようにおっしゃっています。

「(MMTの狙いについて、)MMTのゴールは財政への見方を変えることです。」

「国の借金は人々が考えているような恐ろしい怪物ではないのです。」

 

主流の経済学では国の支出が増え、借金が膨らむと、その国の信用は低下して、借金を続けるには高い金利を支払わなければなりません。

返済する負担は次第に重くなり、いずれ国家の財政は破綻してしまいます。

しかし、MMTによると、急激な金利の上昇が起きない限り、自国の通貨で借金が出来る国はお金(紙幣)を刷りさえすれば、それを借金の返済に充てることが出来るため、破たんはしないといいます。

その分、例えば公共投資にお金を投じ、雇用を生むことに使うべきだというのです。

レイ教授は次のようにおっしゃっています。

「国が借金を返せなくなり、財政破たんすることはありません。」

「借金が増えるより速く成長すれば、財政赤字は減っていくのです。」

「オバマ前大統領が景気刺激策を行った時のことを例にあげましょう。」

「市場が回復し、成長が加速すると財政赤字の比率は半分に減りました。」

「自国の通貨を持つ国々はわざわざ緊縮財政にして成長出来なくしているのです。」

「予算に限りがないと理解すれば、経済成長や生活水準の向上、より完全な雇用につなげることが出来るでしょう。」

 

レイ教授が“MMTのモデルに近い国”として挙げたのが他ならぬ日本です。

国と地方の借金は1300兆円近くに上り、国の経済規模を示すGDPの2倍以上にまで膨らんでいます。

“それでも日本の財政は破綻していないじゃないか“とレイ教授は指摘します。

「日本は主流派経済学者の予測を翻す“好例”と言えるでしょう。」

「先進国の中でもGDPに比べた借金の割合が最も高い国ですが、インフレは起きず、返済不能にもなっていない。」

「国の借金がGDP比100%だろうが200%だろうが、怖くないのです。」

 

こうした理論に対して、日本政府は真っ向から否定しました。

麻生副総理兼財務大臣は国会の場で次のようにおっしゃっています。

「財政規律を緩めるということで、極めて危険なことになり得る。」

「この日本という国をその(MMTの)実験場にするという考え方は今私どもは持っているわけではありません。」

 

また日本銀行の黒田総裁は次のようにおっしゃっています。

「これは極端な主張であって、こうした考え方が我が国に当てはまるという見方も全くの誤りだと思っております。」

 

MMTに対するこうした日本の考え方に対して、レイ教授は次のようにおっしゃっています。

「(MMTを主張する立場から、日本の景気回復に対する姿勢について、)借金の大きさについて悩むのを止めるべきです。」

「日本は景気が回復してくると怖気づいて、借金を減らそうと緊縮財政や増税をやってみたりする。」

「私が言いたいのは、アクセルを踏んだまま経済成長を加速させ、謝金を減らすようにすべきだということです。」

「今はあらゆる人がMMTを批判していますが、将来議論はひっくり返ることになるでしょう。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

国の景気刺激策や優れたベンチャー企業への投資の重要性、およびそのリターンの高さの事例として、かつてのアメリカのケインズ理論に基づいたニューディール政策やソフトバンクグループによる投資戦略(参照:(参照:No.4440 ちょっと一休み その687 『ソフトバンクグループの高調にみる産業界の大変動期!』))があります。

一方で、投資の失敗の代表的な事例として、バブル期の日本郵政株式会社が運営する旅館・ホテル「かんぽの宿」への過大な投資の失敗による多額の損失があります。

 

こうした事例から言えるのは、国の立場からは、大不況などの景気刺激策として、あるいは今後成長が見込めるような新しい産業の育成に必要な資金の財源を国の借金である国債に求めることは理に適っていると思います。

しかし、いくら国民に最低限の生活保障や医療支援が必要だからといって、無制限に国が国債を発行してその資金を投入すれば、いずれ国の財政は破綻することは間違いありません。

国債は“打ち出の小槌”ではないのです。

 

ですから、レイ教授はMMT理論の説明の中で、借金が増えるより速く成長すれば、財政赤字は減っていくと釘を刺しているのです。

MMT理論をある国が政策に反映した場合、その成功の可否はいかに税収が増えたかにかかっているのです。

闇雲にMMT理論を実行に移すのは誤りなのです。

 

MMT理論が効果を発揮するのは、あくまでも様々な角度から検討して国の財政政策、あるいは成長戦略に則って有効と思われる対策への国の資金の投入に限られるのです。

しかも、その金額は無制限ではなく、国の国家予算などから適正な制限があるべきなのです。

そして、事実こうした理論に対して日本政府や日本銀行の黒田総裁は真っ向から否定しています。

 

しかし、レイ教授は“MMTのモデルに近い国”として日本を挙げています。

レイ教授からは、日本はMMT理論の実験国のように見られているようですが、まだ道半ばで、日本政府の一連の政策に対しては専門家の間でも賛否両論があります。

こうした中、今年10月には消費税が8%から10%に引き上げられます。

この政策についても、レイ教授のみならず、日本の一部の専門家の間でも反論がなされていますが、こうした政策が“吉”と出るのか、“凶”と出るのかはある程度時間が経過してみないと分かりません。

ということで、国の政策も一般的な企業活動と同様に過去の成功や失敗体験に基づくだけでなく“試行錯誤”で危機を突破しなければならない時があるのです。

 

いずれにしても、私は経済の専門家ではありませんが、ざっくり言えばMMT理論はケインズ理論を現代的に焼き直した理論のように思えるのです。


 
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