2019年09月22日
No.4440 ちょっと一休み その687 『ソフトバンクグループの高調にみる産業界の大変動期!』

ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)の動向についてはアイデアよもやま話 No.4348 ソフトバンクグループに見る今後の日本企業のあり方!でもご紹介してきましたが、5月9日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でソフトバンクグループの高調について取り上げていました。

そこで、番組を通して現在は産業界の大変動期にあることについてお伝えします。

 

ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)は2019年3月期の決算会見を開き、本業の儲けを示す営業利益が過去最高となったと発表しました。

高調のけん引役となったのは、10兆円規模の巨大ファンドを通じた新興企業への投資事業です。

更に孫 正義会長兼社長は巨大ファンド第2弾の設立準備をしていると明らかにしました。

営業利益で日本一のトヨタ自動車に迫る勢いのソフトバンクGは果たしてどこまで利益を伸ばせるのでしょうか。

 

ソフトバンクGの2019年3月期の営業利益は2兆3539億円(前年比80.5%アップ)と過去最高を更新しました。

なお5月8日、2019年3月期の決算を発表したトヨタ自動車の営業利益は2兆4675億円でした。

今回の決算でソフトバンクGはトヨタ越えが射程圏内に入っていることを強く印象付けました。

その要因について、孫会長兼社長は次のようにおっしゃっています。

「ソフトバンクGの株主価値をこれから一番増やしていく成長エンジンになっているのは何かというと、ビジョンファンドであるということは80%の営業利益の伸びのほとんどがビジョンファンドから導かれたと。」

 

利益を大きく押し上げたのは運用額が10兆円規模のソフトバンク・ビジョンファンド、営業利益の5割以上の1兆2566億円をファンドの投資事業が占めています。

これまでアメリカの配車サービス大手、ウーバーテクノロジーズなど、将来性の見込める企業に積極的に投資、これにより株式評価益が増加したことでソフトバンクGの利益につながっているのです。

更なる成長を目指すべく、10兆円規模のソフトバンク・ビジョンファンドと同規模の新ファンドを立ち上げると発表しました。

 

純利益も3期連続で1兆円を超えたソフトバンクG、孫会長兼社長は2020年3月期の純利益も1兆円を超える見通しを明らかにしました。

高調はどこまで続くのでしょうか。

 

さて、ソフトバンクGの営業利益はトヨタ自動車に迫るところまで来たということですが、2015年3月期から2019年3月期までの両社の比較でみると、トヨタ自動車は2017年3月期を底に緩やかな回復期にあります。

一方、ソフトバンクGは毎年増え続け、特に2018年3月期から2019年3月期においては急激な伸びを示しています。

解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「(ソフトバンクGがトヨタ自動車と肩を並べるところまで来た、)そのけん引役はというと、ファンド事業が営業利益の半分を超えるところまで来たということで、今日の記者会見で孫さんは「自分の頭の中の97%はファンド事業のことを考えている」とおっしゃっていました。」

「ただ営業利益の中身でみると、(ソフトバンクGの場合、)投資した会社の含み益がほとんどなので、ちょっとトヨタ自動車の営業利益とは違うところもあります。」

「ただ、この勢いでいくと、今期(2020年3月)は(ソフトバンクGが)営業利益は少なくとも(トヨタ自動車を)抜くんじゃないかなと思いますね。」。

「(どうしてここまでソフトバンクGは好調になっているのかという問いに対して、)孫さんのプレゼンテーションで一番印象に残ったのは、インターネットのトラフィック量(情報の行き交う量)がどんどん増えていってるのですが、それとほぼインターネット企業の世界の時価総額の合計がほぼ比例して伸びていってるんだと。」

「もう1000倍に四半世紀になったんだとおしゃっていて、一方自動車産業はこの間、世界の生産台数が2倍にしか伸びてないんだから、自分は素直に市場が伸びているところに投資しているだけだということで、どうも(ソフトバンクGの)業態はトヨタというよりはウォーレン・バフェットさんのバークシャー・ハサウェイ(世界最大の投資持株会社)の事業体のテクノロジー版に近くなって来ているかなという印象ですね。」

 

また、番組コメンテーターでみずほ総研エグゼクティブエコノミストの高田 創さんは次のようにおっしゃっています。

「今、日本企業の戦略がソフトバンクモデルと言えるくらい、新しい日本のビジネスモデルとなろうとしている気がしますよね。」

「ですから、従来は製造業が貿易で利益を確保するトヨタモデル、昨日決算発表があったんですが、それに対してソフトバンクモデルというのはまさに投資で稼ぐかたちですよね。」

「で、しかも今非常に安い金利で借りれますから、それで投資が出来る、でしかもグローバル、世界の中でどこにお金をつぎ込むかと。」

「それをいろんな政治的な状況を踏まえたうえで、ポートフォリオを考える、まさに日本のこれからの一つの姿かも知れないですよね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

まずソフトバンクGとトヨタ自動車について比較をしてみました。

(ソフトバンクG)

・創立1981年

・従業員数192人(連結ベース76,866人)(2019年3月末現在)

・営業利益2兆3539億円(2019年3月期)

 

(トヨタ自動車)

・創立1937年

・従業員数364,445人(連結ベース)(2017年3月末現在)

・営業利益2兆4675億円(2019年3月期)

 

上記のとおりソフトバンクGは2019年3月期にトヨタ自動車に営業利益で迫り、2020年3月期にもトヨタ越えが射程圏内に入っているという状況、および世界規模で言えばGAFA(参照:No.4350 ちょっと一休み その672 『日本の経営者に足らない先進技術を活用した構想力』)などの存在は現在が産業界の大変動期にあることを物語っていると思います。

 

この産業界の大変動期をもたらしているものには以下のような技術があります。

・インターネット

・AIやロボット、IoTに代表されるIT関連技術

・再生医療などの革新的な医療技術

・遺伝子組み換え技術

 

そして、特にIT関連技術は従来の技術に比べて人手に依存する割合が少なく、インターネットを介することにより、グローバルなビジネス展開が素早く出来ます。

ですから、GAFAに代表されるようなIT関連企業やこうした企業に追随する優れたベンチャー企業が短期間のうちに急成長し、大きな利益を上げているのです。

そして、こうした急成長するベンチャー企業を資金的に支えているのがソフトバンクGの展開するファンドのような投資事業なのです。

 

一方、国内ではトヨタ自動車に代表される従来型の自動車産業は番組でも指摘されているように今後業績の伸びがそれほど期待出来ないのです。

ですから、既存の自動車メーカーと新興のIT関連企業が入り乱れた状態で世界的にEV(電気自動車)やAIなどの技術を駆使した自動運転車へのシフトを図っているのです。

 

さて、国の豊かさ、あるいは国民の豊かさを求め、それを維持していくためにはそれなりの資金が必要です。

そして、その資金は企業活動を通した法人税や消費者による消費税などがベースとなっています。

ですから、国、企業、そして国民は一体となって、常に先端技術を取り入れた経済活動や消費活動により富の増加を図っていくことが求められるのです。

勿論、そこには“持続可能な社会”の実現という大前提がなくてはならないのです。

 

同時に、様々な先端技術の導入により格段に生産性が向上し、多くの業務に対してヒトの係わる割合が徐々に少なくなっていきます。

ですから、労働時間の短縮やベーシックインカム(参照:アイデアよもやま話 No.3933 AIは敵か味方か? その3 富の再配分システムとして期待されるベーシックインカム!)のような対応策が求められるのです。


 
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