2019年09月18日
アイデアよもやま話 No.4437 新時代のスポーツのかたち ー アーバンスポーツ!

5月10日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でアーバンスポーツについて取り上げていたのでご紹介します。

 

第1回のオリンピックから長い歴史を持つ体操競技、そしてEMXバイクやスケートボードなど、ストリートで生まれる若者に人気のアーバンスポーツ、この2つを結びつけることで新しい時代のスポーツのあり方を示そうとしている人がいます。

4月に広島で行われたアーバンスポーツの国際大会、3日間で訪れたのは10万人以上でした。

選手、そして観客は勝敗以外のところにも魅力を感じています。

次のようにおっしゃっている選手がおります。

「自由なんだ。」

「毎週、新しい技が生まれる。」

 

「めちゃめちゃ楽しいと思います。」

「楽しんだ勝ち。」

 

選手たちは勝つことは勿論ですが、楽しむことも大切にしているのです。

この大会を主催したのは日本アーバンスポーツ支援協議会会長の渡辺 守成さん(60歳)です。

アーバンスポーツに取り組む選手たちの考え方に新たな可能性を感じています。

渡辺さんは次のようにおっしゃっています。

「本当にみんな楽しそうなんだよね。」

「スポーツのかたちがここでつくられつつあるのかなという気がします。」

 

実は、渡辺さんは国際体操連盟の会長として、世界148の国と地域の競技団体を統括する立場にあります。

2年前に就任して以来、体操の採点にAIを導入するなど、今の時代に合った競技のあり方を模索してきました。

その中で、これまでと同じような考え方では体操界、スポーツ界の発展はないと危機感を覚えるようになりました。

渡辺さんは次のようにおっしゃっています。

「オリンピックに出るためにどうすんだとか、そういうことばかり考えている。」

「体操も変わらないといけないわけですね。」

「昔のままの体操をずっと人がこのまま愛し続けてくれるのか。」

 

これまで体操競技ではオリンピックの金メダルが最大の目標とされ、達成するために若い年代から大会で成績を残すことが求められてきました。

結果として、トップ選手はオリンピックや世界選手権で好成績を残してきました。

しかし、その裏で登録人口は2008年の4万4853人から2018年の2万6382人へと、この10年で4割ほど減少していました。(出典:日本体操協会登録人口)

 

東京都内の体操クラブ、子どもたちが体操に対して求めるものも変わってきているといいます。

このクラブの黒崎 雅人さんは次のようにおっしゃっています。

「選手を目指す子が少なくなりましたね。」

「この子いい選手になれると思って、推していくと逃げていってしまうというか、続けられなくなってしまう子がいますね。」

 

こうした状況について、渡辺さんは次のようにおっしゃっています。

「スポーツは本来楽しくて始めているんだよね。」

「でも、いつの間にかトップアスリートになるにつれてその楽しさが減ってきて、スポーツのあるべき姿からかけ離れていってるんじゃないのかなというふうに思っていますね。」

 

そんな時に出会ったのがフランスのモンペリエで開催されたアーバンスポーツ世界大会、子どもから大人まで5日間で60万人以上の観客が訪れていました。

渡辺さんは、アーバンスポーツにこそこれまでのスポーツに足りなかったものがあると感じました。

4月の大会で渡辺さんが目を留めた場面がありました。

スケートボードの予選、1分の制限時間内に技を出し続けて点数を競います。

持ち技に失敗しても成功するまでトライする、点数には反映されなくても挑戦する姿勢を選手や観客が大切にしていたのです。

渡辺さんは次のようにおっしゃっています。

「アーバンスポーツの選手は自分で考えて自分でチャレンジしていくのが普通になっている。」

「自らいろんなことに挑戦していく環境を、トラディショナル(伝統的な)スポーツはもっと作んないといけない。」

 

新たな時代に向け、渡辺さんは大きな決断をします。

アーバンスポーツ、パルクールの試合を国際体操連盟が主催することにしたのです。

パルクールとは、様々な障害を体一つで乗り越え、そのパフォーマンスの芸術点などを競い合う種目です。

自ら考えて技に挑戦していく選手たちの姿勢を学ぶことで体操界を更に発展させていきたいと考えています。

渡辺さんは次のようにおっしゃっています。

「スポーツが進化し続けていかないといけない。」

「進化するということは、次の世代がいったい何を望んでいるのか、どんなものを望んでいるのかというのをリサーチして、それに対して我々は変化していかないといけない。」

「令和元年を機に、そして2020年を機に、未来のスポーツ界を我々は作っていかないといけない。」

 

渡辺さんは、楽しいという気持ちが原点にあれば、たとえメダルが獲れなくても、トップ選手になれなくてもその競技を止めることはない、ずっと係わり続けていくことが出来ると話しています。

これが新しい時代のスポーツになっていくかも知れません。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通してまず驚いたのは、体操競技の登録人口がここ10年で4割ほど減少したという事実です。

また、東京都内の体操クラブでは、選手を目指す子どもたちが少なくなってきているといいます。

こうした状況について、国際体操連盟の会長で、日本アーバンスポーツ支援協議会会長の渡辺 守成さんは、スポーツは本来楽しくて始めているけれど、いつの間にかトップアスリートになるにつれてその楽しさが減ってきて、スポーツのあるべき姿からかけ離れているのではないかという危機感を持っています。

 

そうした中で、出会ったのがアーバンスポーツといいます。

そして、アーバンスポーツの選手は自分で考えて自分でチャレンジしていくことが特徴だといいます。

また、渡辺さんは、楽しいという気持ちが原点にあれば、たとえメダルが獲れなくても、トップ選手になれなくてもその競技を止めることはないとおっしゃっています。

 

そこであるテレビ番組の内容を思い出しました。

ある体操競技の女子選手は出場する大会で優勝を続けてきて、将来有望な選手として期待されるようになりました。

ところが大きな大会の選手として選ばれた後の競技大会ではそれまで出来た演技が出来なくなってしまいました。

その理由は将来日本の体操界を背負わなければならないというプレッシャーに押しつぶされてしまって本来の実力が出せなくなってしまったからです。

そして、その女子選手はこうした苦痛から逃れるように体操界から去ってしまったというのです。

一方で、その時代その時代を反映して、今回ご紹介したアーバンスポーツのように新しいスポーツが生まれてきています。

その誕生の原点は、やっていて楽しい、あるいは面白いといった気持ちのはずです。

こうしたことから、アーバンスポーツ、あるいは体操競技全般に限らず、あらゆるスポーツ界において、競技大会も含めて常に選手自身が楽しむ気持ちを持つことが根本であることが求められるのです。

 

来年開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、既に目標とするメダルの数が公表されていますが、スポーツの根本である、選手たちが大会に参加することを楽しめるように、そして重圧に押しつぶされずに普段通り、あるいは普段以上に伸び伸びと競技が出来る状態で大会に臨んでいただきたいと思います。

そして、その結果としてメダルが獲得出来れば、選手も観戦する人たちも心から大会を楽しむことが出来るのです。


 
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