2019年09月09日
アイデアよもやま話 No.4429 1万円の高級Tシャツ!

5月7日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で1万円の高級Tシャツについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

5月7日、1着1万円もする高級Tシャツが発売されました。

どれもおしゃれなデザインですが、高価格の理由はデザイン性だけではありません。

今世界が注目する日本のベンチャー企業の最先端技術がつまっているのです。

 

西武渋谷店ですが、流行に敏感な女性向けの洋服が並ぶフロアには、パリコレに参加した経験を持つ若手クリエイターなどがデザインした「BRING Tシャツ」が展示されています。

こだわりはデザインだけでなく、UVカットや速乾性など、高機能なTシャツに仕上げました。

生地はポリエステル100%ですが、シャキシャキ感やツルツル感がないので限りなくコットンに近い、あるいは触り心地がいいという声が女性客から上がっています。

実際に番組のフィールドキャスターが着てみると、伸縮性が少しあり、またフィット感もあるのでリラックスして着るのに良さそうだといいます。

価格はTシャツとしてはかなり高価格となる1万800円(税込み)です。

しかし、更に驚きの事実があるのです。

そごう・西武の高橋 礼さんは次のようにおっしゃっています。

「衣料品を回収して、そこからポリエステルの糸を作り直して、新しく生まれ変わらせたTシャツになります。」

 

実はこのTシャツは古着から作られたリサイクルTシャツなのです。

この百貨店では初の試みです。

高橋 礼さんは次のようにおっしゃっています。

「何か他人と違うものを持ちたいとか、何か裏にそういう背景に価値があるモノを持ちたいというお客様は多いので、そういう方にとってはすごく価値のあるファッションアイテムになると思います。」

 

その「BRING Tシャツ」を作っているのがベンチャー企業の日本環境設計株式会社(東京都千代田区)で、世界でも類を見ない古着からポリエステルを再生する技術を持っています。

日本環境設計の中村 崇之さんは次のようにおっしゃっています。

「店頭で要らなくなったお洋服をお客様から回収しています。」

「そういったものをもう一度原料まで戻せば、そこから糸、生地、最終製品にしてもう一度市場に戻せる。」

 

全国の提携している百貨店に古着の回収ボックスを設置、集めた古着は細かく裁断し、特殊な溶液に漬けて、溶け出たポリエステルだけを抽出して精製し、再びポリエステルの樹脂を製造します。

中村さんは次のようにおっしゃっています。

「石油由来の製品と同等の品質で樹脂を作ることが出来るというのが大きな特徴です。」

 

実は国内では年間200万トンも廃棄処分されているという衣料品、そこに目を付けたのが2007年にわずか3人で創業した日本環境設計でした。

まず、古着から綿だけを取り出し、それを発酵させてバイオメタノールに生まれ変わらせる技術を開発しました。

出来上がったエタノールは工場のボイラー燃料として供給されるなど、事業化にも成功しました。

その後に挑戦したのが、古着からポリエステルをリサイクルする技術でした。

中村さんは次のようにおっしゃっています。

「繊維の市場でいうと、生産量でポリエステルが5〜6割を占めています。」

「なので、我々はポリエステルをリサイクル出来ないとリサイクルと言い切れないのではないかということで、ポリエステルのリサイクルに着手いました。」

 

古着からポリエステル以外の繊維や染料、顔料などを取り除き、Tシャツを製造する技術を確立するまで、実に3年かかったといいます。

 

世界の注目する日本環境設計のこの技術、昨年フランスのリオンに進出することも決まり、早ければ2021年に現地に工場が建設される予定だといいます。

中村さんは次のようにおっしゃっています。

「我々は世界中に工場を造って、そこで(古着が)リサイクルされて、もう一度服に戻って、それが何回も繰り返される、そういう世界を目指しています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

高価格であってもデザイン性、あるいは速乾性や着心地の良さ、長持ちなどの高機能に優れていれば、一定の顧客層の支持を得られます。

しかも、衣料品を回収してのリサイクル素材を使用した生地が使用されていれば、省資源で環境にも優しくなります。

 

これまで繰り返しお伝えして来たように、これから目指すべきは“持続可能な社会の実現”なのです。

今回ご紹介した日本環境設計の高級Tシャツへの取り組みは、まさしく衣料における“持続可能な社会の実現”の方向性に合致しています。

日本環境設計は、まずは古着から綿だけを取り出し、それを発酵させてバイオメタノールに生まれ変わらせる技術を開発し、出来上がったエタノールは工場のボイラー燃料として供給されるなど、事業化にも成功しました。

その後に挑戦したのが、繊維の市場では生産量の5〜6割を占めるというポリエステルを古着からリサイクルする技術でした。

 

なお、古着には綿やポリエステル以外の繊維や染料、顔料などもあるといいます。

ですから、こうした古着の全ての原料のリサイクルを実現出来れば、まさしく衣料における“持続可能な社会の実現”になります。

 

ということで、日本環境設計には古着の全ての原料のリサイクルの実現を目指して取り組んでいただきたいと思います。

また、その他の企業においても、衣料に限らずあらゆる産業界において日本環境設計と同様の取り組みを進めることによって、あらゆる分野における“持続可能な社会の実現”が可能になるのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています