4月15日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日本橋を丸ごと自家発電する取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。
日本橋エリアの再開発を行っている三井不動産は、4月15日に東京ガスと街を丸ごと自家発電する新事業を始めたと発表しました。
震災など災害にも強いというこの街づくりについて、三井不動産の菰田 正信社長は次のようにおっしゃっています。
「日本橋の街づくりで最も重要な課題であるエネルギー政策に関し、我々が出した答えが今回のスマートエネルギープロジェクトでございます。」
三井不動産が4月15日に発表した「日本橋スマートエネルギープロジェクト」、3月に開業した「日本橋室町三井タワー」内に発電施設を設置、その施設から自社ビルだけでなく、周辺の施設にも電力を供給するというものです。
東京ガスと提携し、電力だけでなく、発電の際に発生した熱も供給出来る、コジェネレーションシステムを採用しました。
電気と熱の両方を地域の既存施設に安定供給する取り組みは日本初だといいます。
東京ガスとタッグを組んだその理由について、菰田社長は次のようにおっしゃっています。
「未曾有の大震災にも負けない強靭さを備え、また地球環境にも優しいサスティナブルな街をつくり、人々の暮らしを豊かにしてまいりたいと考えております。」
昨年9月の北海道地震では火力発電所からの電力供給がストップし、道内のほぼ全域でブラックアウト、大規模停電が起きました。
このような地震が発生しても安定的に電力供給が可能になるといいます。
この「日本橋室町三井タワー」内にある発電施設ですが、ビルの地下3階には巨大な発電プラントがあります。
東京ガス スマエネ事業推進部の大野 智之担当部長は次のようにおっしゃっています。
「ガスで燃焼した力で発電して電気を発生する設備です。」
「1台当たり7800kwの電気を発生することが出来ます。」
1台で約2000世帯分の発電をします。
都市部に入るシステムとしては最大級で、3台が稼働します。
そして災害時に強い理由について、大野さんは次のようにおっしゃっています。
「今回のプラントでガスを受け入れているガス管の強さは、東日本大震災や神戸の震災(阪神淡路大震災)の時にも壊れなかった・・・」
その強さの秘密は、頑丈な材質は勿論のこと、震度7レベルの力を加えても柔軟性にも優れているため、壊れずにガス漏れも起きないのです。
頑丈なガス管により震災時でも日本橋一帯に電力供給が出来るこのシステム、地下2階にはその電力供給をコントロールする監視室があります。
三井不動産 環境・エネルギー事業部の岩橋 浩二グループ長は次のようにおっしゃっています。
「こちらのプラントから電気を約20棟、熱でいきますと約10棟の建物にエネルギー供給をしておりまして・・・」
どのビルがどれだけの電力を消費しているかが分かる中央監視室、天気やセールなどのイベントなどの情報を元に、それぞれのビルの電気と熱の消費予測をし、どの機械を効率的に動かすか、運転計画を立案します。
導入を決めた三越では、三越伊勢丹ホールディングスの片桐 英樹執行役員が次のようにおっしゃっています。
「昨年の北海道地震のブラックアウトで手前どもの函館店、札幌店で2日間営業が出来ず、甚大な被害を受けました。」
「電気の供給というのは非常に大事だろうということで・・・」
三井不動産は、災害に強いインフラを整備することで、日本橋のブランド価値を高めて行く方針です。
三井不動産の菰田社長は次のようにおっしゃっています。
「こちらで得た経験を都心の他にも大きな重要拠点がございますので、そういった所への開発、街づくりにも水平展開していきたいと思っております。」
番組コメンテーターでモルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。
「(日本橋のような街単位の自家発電をする仕組みは今後広まって行きそうかという問いに対して、)そうですね、その可能性もあるんですけど、もう一つあります。」
「自家発電はいいんですけど、蓄電池も最近広がっています。」
「最近ピークの電力需要を補うために、(アメリカの)アリゾナ州もフロリダ州もガスタービンを止めて、蓄電池を入れています。」
「大阪の近鉄もテスラさんの蓄電池を入れて、「停電の時にそれを使いましょう」そういうことですね。」
「だから、これも広がっていくんではないかなと思いますので、いろんな可能性が出てますね。」
「(フェルドマンさんは特にこの蓄電池に期待されていますが、思っている未来に近づいているかという問いに対して、)期待しています、(蓄電池は)安くなっていますよ。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
そもそも大規模な発電所により広域の電力をカバーするというシステムは効率は良いのですが、万一の震災などでこの発電所が機能しなくなると広域での電力供給が出来ません。
こうしたことから、スマートシティと言われるように、それぞれの地域ごとに電力の地産地消が行われ、しかもスマートグリッドで地域間の電力のやり取りを出来るようにするシステムこそが震災などでの電力供給ストップのリスクを最小限に抑えることが出来るのです。
さて、今回ご紹介した、三井不動産が4月15日に発表した「日本橋スマートエネルギープロジェクト」は、自社ビルだけでなく、周辺の施設にも電力を供給するというものです。
東京ガスと提携し、電力だけでなく、発電の際に発生した熱も供給出来る、コジェネレーションシステムを採用し、電気と熱の両方を地域の既存施設に安定供給する取り組みは日本初だといいます。
ですから、このプロジェクトは従来型の化石燃料の一つであるガスを燃料とした電力の地産地消の取り組みと言えます。
この取り組みは、震災などの災害時にも継続的に電力供給を可能にします。
番組ではこのプロジェクトのコストについて触れていませんが、気になるところです。
しかし、従来の電力料金より多少高くても、震災時にも停電にならずに済むことが保障されれば引き合いは多いと思われます。
三井不動産では今後他の地域での街づくりにも水平展開していくといいますが、是非太陽光など再生可能エネルギーによる発電、および発電した電力のバッテリーへの蓄電もシステムに加えたかたちでの取り組みを目指していただきたいと思います。
なぜならば、CO2排出量の削減、および化石燃料の枯渇対策が世界的に大きな課題となっているからです。