4月13日(土)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で再生医療による脊髄(こつずい)損傷の治療について取り上げていたのでご紹介します。
庭木の手入れで梯子から転落、酔っぱらって転倒、こうした事故の衝撃で背骨を通る重要な神経が傷付くのが脊髄損傷です。
有効な治療法がなく、毎年多くの人が寝たきりや車椅子生活を余儀なくされてきました。
しかし、ある最新医療によって、ある男性患者は寝たきりだったのが1週間後に歩けるようになりました。
先端医療に詳しい、医療イノベーション推進センターの福島 雅典センター長は次のようにおっしゃっています。
「天動説から地動説に変わったぐらいの大きい変化だと思いますね。」
これまで治療が困難とされてきた重症の脊髄損傷を回復させる新しい治療が今年5月世界に先駆けて日本で始まります。
草津 伸治さん(51歳)は4年前、試験的な治療を受けて劇的に回復した脊髄損傷患者です。
まだ手足に動きにくさはあるものの、歩いたり、軽いものを持ったりすることが出来るようになりました。
草津さんは趣味の飛び込みの競技をしている時にプールの底に頭を強く打ち、首の部分の脊髄を損傷しました。
事故から8日後の草津さんは、筆で手や足を触られても感触すらありませんでした。
当時について、草津さんは次のようにおっしゃっています。
「「手足は多分回復しない、車椅子も無理かもしれない」って言われたし、絶望感もあって、どうするんだろうこれから・・・」
脊髄には脳からの指令を全身に伝える重要な神経が走っています。
これが傷付くと様々な麻痺が起こります。
特に首の部分を損傷すると、そこから下の全身に脳の指令が伝わらなくなり、手足が動かなくなります。
草津さんが一縷(いちる)の望みをかけて参加したのが札幌医科大学で行われていた治験と呼ばれる臨床試験でした、
その治療とは、再生医療と呼ばれるものです。
私たちの体は受精卵という1個の細胞が分裂して全身のあらゆる細胞に変わることでかたちづくられています。
その途中段階にある幹細胞と呼ばれる細胞が私たち誰もの体に存在しています。
この幹細胞の一つが間葉系幹細胞です。
神経などの細胞に変身出来る能力を持っています。
その力で神経を再生させようというのが今回の再生医療なのです。
治療では、まず患者の骨の中から間葉系幹細胞を取り出し、2週間かけて約1万倍に増やします。
これを点滴で再び患者の血液中に戻します。
脊髄を損傷して1ヵ月が経ち、もう大きな回復は望めない状態だった草津さん、自分自身の間葉系幹細胞が点滴で投与されました。
するとその翌日、驚くような変化が現れました。
ほとんど動かせなかった指を折り曲げて、手を握れるようになったのです。
更に頭をかくことも出来るようになりました。
わずか一晩で起こった急速な回復、損傷した場所にたどり着いた幹細胞が特別な物質を放出、弱った神経細胞を活性化させたと考えられています。
その後も急速な回復は続きました。
間葉系幹細胞を投与して1週間後には“支え歩き”が可能に、1ヵ月後には“階段の昇り降り”が出来るようになり始めました。
4ヵ月後、幹細胞が新しい神経細胞に変化し始め、脳からの指令が強く伝わるようになったと研究チームは見ています。
事故から7ヵ月、草津さんは自分の足で歩いて退院することが出来ました。
草津さんを含め、札幌医科大学で今回の治験を受けたのは13人、そのうち12人で脊髄損傷の重症度が1段階以上改善、残る1人も呼吸能力などの改善が見られました。
問題となるような副作用はありませんでした。
札幌医科大学 整形外科の山下 敏彦教授は次のようにおっしゃっています。
「スポーツや交通事故で、ある一瞬から完全に世界が変わってしまう、“やはりもう一度歩きたい”、“もう一度戻りたい”と非常に強く思っておられるので、それを回復させてあげるというのは非常に大きい治療だと思っています。」
昨年12月に治験の成果を審査した結果、国はこの再生医療を承認しました。
ただし、今後7年間で効果と安全性を引き続き確認することが条件です。
再生医療を受けた脊髄損傷患者、草津さんは事故から4年経った今ではクルマの運転も出来ます。
再生医療で諦めかけた人生を取り戻すことが出来ました。
草津さんは次のようにおっしゃっています。
「自信と希望じゃないですかね。」
「(再生医療から)かなりのものをもらったので、僕もすごく感謝していますね。」
人生を取り戻せるこの再生医療は脊髄損傷患者にとっては希望の光です。
では、どうやったらこの治療を受けられるのかですが、健康保険が適用されて、まずは札幌医科大学で5月中旬から患者を受け入れる計画です。
治療の対象は、脊髄を損傷してから30日以内の重症患者に限られて、けがをしてから2週間以内に札幌医科大学に入院する必要があるなど、条件があります。
これをきっかけに、札幌医科大学では間葉系幹細胞を使って脳梗塞などその他の神経の病気も治療出来るようにしたいと研究を進めているということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今回ご紹介した再生医療による脊髄損傷の治療はまさに画期的な技術と言えます。
これまで脊髄損傷には有効な治療法がなく、毎年多くの人が寝たきりや車椅子生活を余儀なくされてきました。
ところが、再生医療により男性患者の草津さんは寝たきりだったのがたった1週間後に歩けるようになったというのです。
そして事故から7ヵ月、草津さんは自分の足で歩いて退院することが出来ました。
草津さんは事故から4年経った今ではクルマの運転も出来ます。
しかも問題となるような副作用はないというのです。
この治療を受けるにあたっては、健康保険が適用されて、札幌医科大学で5月中旬から患者を受け入れる計画といいますから、多くの脊髄損傷患者の方々にとっては大変な朗報です。
さて、私たちの体は受精卵という1個の細胞が分裂して全身のあらゆる細胞に変わることでかたちづくられています。
そして、その途中段階にある幹細胞と呼ばれる細胞の一つが間葉系幹細胞で、神経などの細胞に変身出来る能力を持っています。
その力で神経を再生させようというのが今回の再生医療なのです。
今回の成果をきっかけに、札幌医科大学では間葉系幹細胞を使って脳梗塞などその他の神経の病気も治療出来るようにしたいと研究を進めているということです。
ですから、近い将来、私たちは神経の損傷に係わるあらゆる病気の症状から解放される日を迎えられるかも知れません。
それにして、再生医療技術は、良くも悪くも生物を創造した“創造主”、あるいは“神”の領域に人類が足を踏み込んだ新しい時代の到来と言えます。