2019年08月10日
プロジェクト管理と日常生活 No.601 『首都直下地震で大量の避難民が発生』

前回、プロジェクト管理と日常生活 No.600 『”富士山大噴火”のシミュレーション』で”富士山大噴火”のリスク管理についてお伝えしましたが、他にも国家的な災害リスクがあります。

3月23日(土)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で首都直下地震について取り上げていたのでご紹介します。

 

人口が集中する東京、首都直下地震が起きると避難生活もこれまでにない事態が想定されます。

今後30年以内に70%の確率で起きると予測されている首都直下地震、最悪の場合、都内で189万戸余りの住宅が全半壊すると想定されています。

避難生活は長期化、多くの仮設住宅が必要になります。

こうした事態について、都市防災の専門家である専修大学の佐藤 慶一准教授は次のようにおっしゃっています。

「本当に大変な不足が予想されると思います。」

 

首都直下地震が発生した場合、東京都で不足する仮設住宅は約18万戸に上ると専門家から指摘されています。

この仮設住宅の確保について、東京都は来年度から検討会を立ち上げ、初めて議論していくことになりました。

都内で最も仮設住宅が不足すると言われているのが大田区です。

4万戸余りが不足するとされています。

 

想定される仮設住宅の不足、大田区以外でも深刻です。

足立区では4万戸近く、葛飾区と江戸川区では約3万戸、世田谷区では約2.5万戸といった具合です。

それぞれの区で確保しようとした場合、23区のうち20の区で仮設住宅が不足するとされています。

地区町村をまたぎ、都内全体で運用した場合も、専門家のシミュレーションでは必要個数およそ57万戸に対し、不足は18万戸に上ります。

なぜこれだけ足りなくなるのか、まずプレハブの仮設住宅を建てる土地が限られていること、そして価格が高い物件です。

仮設住宅には賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設」がありますが、都が借り上げる上限は5人以上の家族でも現在1ヵ月10万円以下、都内の2LDKの家賃の平均およそ15万円を下回ります。

被災者が自分で上乗せして住むことは認められていません。

佐藤准教授は次のようにおっしゃっています。

「住宅がすごく密集していて、同じ地震でも被害の数がすごく大きくなるので、本当に大変な不足が予想されると思います。」

 

地震で起きる火災などで被害が想定される足立区、シミュレーションでは仮設住宅およそ3万9000戸が不足するとされています。

足立区中川地区 町内会長の今坂 昭男さんは次のようにおっしゃっています。

「住めない方をどうするかということを町内会や自治会で真剣に考えていかなくちゃならない。」

「「(仮設住宅は)やっぱり近場に建てて欲しいよね」っていうことですね。」

「我々住民の近場にね。」

「やはり地元の意向を聞いて、一部でも取り入れてもらえればと。」

 

今坂さんたちは防火訓練をするなど、住民側の被害を減らす努力が必要だと考えていますが、“仮設住宅について住民の意向も聞いて検討して欲しい”と考えています。

 

東京都は来年度から専門家などでつくる検討会を立ち上げ、仮設住宅の確保について初めて議論していくことになりました。

「みなし仮設」の家賃の上限を引き上げる必要があるかや、都外への広域避難なども考えることにしていますが、住民の意向を聞き取って政策に反映させたいとしています。

こうした状況について、佐藤准教授は次のようにおっしゃっています。

「大きな一歩だなと思っています。」

「サポートが必要な部分が沢山あると思いますので、そこに対して都が事業を組み立てて準備していくようなことが出来たらいいなと思っています。」

 

首都直下地震を想定して、被災後の住まい、議論の行方が注目されます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

首都直下地震は今後30年以内に70%の確率で起きると予測されているのですから、当然そのためのリスク対応策が検討されるべきです。

そして、いよいよ東京都は来年度から専門家などでつくる検討会を立ち上げ、大量に必要な仮設住宅の確保について初めて議論していくことになりました。

このことは佐藤准教授もおっしゃるように“大きな一歩”だと思います。

 

一方、首都直下地震以外にも南海トラフ地震が今後30年以内に70〜80%の確率で発生し、最悪の場合、死者が32万人以上に達するとされています。

ですから、長期的にみれば、日本は地震災害から逃れることは出来ないのです。

従って、地震による被害を想定した社会、すなわち街づくり、建物、交通機関などといった観点でのリスク対応策が求められるのです。

 

同時に、No.3570 ちょっと一休み その572 『一般家庭でのブレーカーの設置率は驚くほど低い!』でもお伝えしたように、阪神・淡路大震災の際の建物火災の出火原因の約6割が通電火災だったといいます。

また東日本大震災でも、地震による火災110件のうち、電気が原因となるものが60%以上の71件にのぼったといいます。(詳細はこちらを参照)

ですから、各家庭でのちょっとした対応次第で被害を最小限に食い止めることが出来るのです。

ですから、私たち一人ひとりが取り得る地震のリスク対応策もあるということを日頃から認識しておくことも求められるのです。


 
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