2019年07月30日
アイデアよもやま話 No.4394 次世代の二次電池として注目される「空気電池」!

3月27日(水)付けネットニュース(こちらを参照)で次世代の二次電池として注目される「空気電池」について取り上げていたのでご紹介します。

 

リチウムイオン電池に代わる次世代電池として注目される「空気電池」と言えば、プラス極の活物質に空気中の酸素を使うことによって、リチウムイオン電池に比べて大容量・小型化・軽量化が可能というメリットを持ちます。

ただ、充電サイクル寿命が短いなど実用化に向けて大きな課題が残っていました。

しかし、3月に電池メーカーのFDKが「空気電池」の高寿命化に成功したと発表したことで、実用化の目処が立ったことから注目されています。

 

「空気電池」とは、プラス極の活物質に空気中の酸素、マイナス極の活物質に金属を用いる電池のことです。

燃料電池の一種として分類され、「金属空気電池」とも呼ばれます。

現時点での「空気電池」は、シールで密封された状態で提供され、使用開始時にシールを剥がして空気穴を開けることで放電が始まる乾電池形式のものが利用されるに留まっています。

マイナス極の活物質を補充することで燃料電池として使うことが出来ると期待されており、EV(電気自動車)向け用途などで研究が進められています。

 

プラス極の活物質は空気中の酸素を使えば良いため補充する必要がなく、電池容器内の大部分の空間にマイナス極に使う金属活物質を大量に充填出来るため、放電容量を大容量化することが可能です。

このため、リチウムイオン電池などと比べて、大容量でかつ小型化・軽量化を実現することが可能になると期待されています。

また、マイナス極の活物質に使われる金属は、亜鉛やアルミニウムなどの埋蔵量の多い物質であり、地球環境やコストの面でも有利となります。

 

多くのメリットがある「空気電池」ですが、正極で空気中の酸素を活用するエネルギー効率が悪く正極の高性能化が必要なこと、二次電池として使うには充電サイクル寿命が短いなど、実用化に向けた課題は山積しています。

 

「空気電池」の最新動向ですが、今年には、中国でEVを社会に普及させるためのNEV規制が始まっていることから、世界的なEV開発競争が激化しており、この流れの中で「空気電池」の開発も進むものと見られます。

 

また、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT時代には、より高性能・大容量・小型化した電池の需要が高まることも確実です。

 

特に、今年にはIoTの普及に欠かせない社会インフラである次世代通信規格「5G」の運用が本格化し、IoT機器に搭載される高性能電池が求められています。

そうした中、3月18日には、富士通系の電池メーカーであるFDKが、「空気電池」の最大の課題の一つである二次電池としてのサイクル寿命を大幅に向上させる技術を開発したと報じられました。

FDKは水素を使った「空気電池」の3年後の実用化に目処を付けたとされ、充放電を500回繰り返しても、性能の低下は1割以下に抑えたとされています。

 

現在スマホに使われているリチウムイオン電池は、充放電を2年間で500回ほど繰り返すと充電性能が大幅に劣化することは多くの人が経験していることであり、「空気電池」に大きな期待が集まります。

 

以上、記事の一部をご紹介してきました。

 

記事を通して、次世代の二次電池(バッテリー)として「空気電池」はとても有力な候補であることが分かりました。

そこで、以下に「空気電池」についてまとめてみました。

(二次電池を取り巻く環境)

・世界的なEV開発競争が激化しており、更にIoT化が急速に進む中で、より高性能・大容量・小型化した電池の需要が高まること

・発電量の不安定な太陽光などの再生可能エネルギーで発電された電力を蓄える媒体として、安価な電池の潜在需要が大きいこと

 

(現状の二次電池の問題点)

・現在スマホに使われているリチウムイオン電池は、充放電を2年間で500回ほど繰り返すと充電性能が大幅に劣化すること

・同様にEVに使われているリチウムイオン電池も寿命が短いこと

・リチウムイオン電池は高価であること

 

(「空気電池」のメリット)

・プラス極の活物質は空気中の酸素を使えば良いため補充する必要がなく、電池容器内の大部分の空間にマイナス極に使う金属活物質を大量に充填出来るため、放電容量を大容量化することが可能であること

・このため、リチウムイオン電池などと比べて、大容量でかつ小型化・軽量化を実現することが可能になると期待されていること

・マイナス極の活物質に使われる金属は、亜鉛やアルミニウムなどの埋蔵量の多い物質であり、地球環境やコストの面でも有利であること

 

(「空気電池」の課題)

・正極で空気中の酸素を活用するエネルギー効率が悪く正極の高性能化が必要なこと

・二次電池として使うには充電サイクル寿命が短いなど、実用化に向けた課題は山積していること

 

(期待される動き)

・3月18日に、富士通系の電池メーカーであるFDKが、「空気電池」の最大の課題の一つである二次電池としてのサイクル寿命を大幅に向上させる技術を開発したこと

・FDKは水素を使った「空気電池」の3年後の実用化に目処を付けたとされ、充放電を500回繰り返しても、性能の低下は1割以下に抑えたとされていること

 

なお、二次電池を巡る動きについては、アイデアよもやま話 No.4265 大きな可能性を秘める新たなリチウムイオン電池「全樹脂電池」!でもご紹介したように、「空気電池」以外にも「全固体電池」や「全樹脂電池」などの開発が実用化に向けて進められています。

そして、二次電池に求められる要件は以下のようにまとめられます。

・大容量

・小型

・軽量

・低コスト

・充電サイクル寿命が長いこと

・充電時間が短いこと

・原料が求め易いこと

・リサイクル、あるいは廃棄が容易であること

 

ということで、どの二次電池が次の時代の主流になるか分かりませんが、EV、IoT化、あるいは家庭用としての普及を加速させるために、二次電池に求められる期待はとても大きいと思います。


 
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