2019年07月18日
アイデアよもやま話 No.4384 環境にも優しい”食べられる木”!

3月13日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で環境にも優しい”食べられる木”について取り上げていたのでご紹介します。 

 

今、木を食材として使おうとする取り組みが始まっています。

株式会社ライフル(東京都千代田区)の川嵜 鋼平執行役員は次のようにおっしゃっています。

「持続可能な社会をかなえる未来の一皿だというコンセプトです。」

 

3月13日、不動産情報サイトを運営するライフルが発表したのは、木から生まれたパウンドケーキです。

イートリーケーキ(Eatree Cake)材料として全体の2割、およそ60グラムの木を使っています。

中だけでなく、ケーキの上にもパウダー状にした木がまぶしてあります。

川嵜さんは次のようにおっしゃっています。

「(なぜ木を食べるという発想に至ったのかという問いに対して、)間伐材問題が日本の森林で大きな問題になっていると思ったんですね。」

「食べることが地球のためになると。」

「で、かつ食べることで間伐材問題を見つめ直してもらう・・・」

 

ライフルが進めているのは、森林から出る間伐材を食材として活用する取り組みです。

この木を使ったパウンドケーキは、自社で運営するカフェやネット通販で提供する予定です。(1本3670円で3月20日から発売予定)

その味は、甘さ控えめでしっとりとしており、木の香りがし、これまで感じたことのないような食感といいます。

 

このケーキを開発したのは、フレンチの田村 浩二シェフです。

田村さんは次のようにおっしゃっています。

「(このケーキを作るまでに難しかったところについて、)パウダー自体は香りもとても強いですし、少し苦味もあるので、それをどう美味しさに変えるか。」

「苦味を抑えて、香りと甘味を引き出すのがすごく難しいポイントでしたね。」

「(ケーキ以外の使い道について、)小麦粉の代わりっていう部分も代用品にはなると思うんで、パンだとかクッキーとかいろんなものに使える可能性があるものだと思いますね。」

 

このケーキの食材として使われる木は、静岡県浜松市天竜区で育てられています。

ここ天竜は、全国で有数の杉の産地です。

柱や床板など、建材として使われることが多い杉、太くて真っすぐした幹を育てていくために、日光を遮らないよう定期的に人の手で木を間引くことが欠かせません。

この時に伐採された木が間伐材です。

林業に携わる天竜T.Sドライシステム協同組合の榊原 康久理事は、今回の取り組みで杉をより身近に感じてもらいたいといいます。

榊原さんは次のようにおっしゃっています。

「林業に携わる人がどんどん減ってきている、お金をもらってやる仕事としては採算が中々合わないという、何かしらアクションを起こしていくことで山や林業に目を向けてもらうことも必要じゃないかなと思う。」

 

ケーキの材料は間伐材のかたちを整える時に出てくる、いわゆるおが屑です。

家畜の寝床などにするため、安く買い取られています。

しかし、これを食べようと発案したのが静岡理工科大学の志村 史夫名誉教授です。

志村さんは次のようにおっしゃっています。

「天竜の製材所に行った時に、そこから出される「かんな屑」と「おが屑」、「屑」という名前は私はそれ以降使わないことにしているんだけど、あまりにもきれいで「かんなくず」に関しては“花かつお”みたいじゃないですか。」

「実際、私はその日「おがくず」をもらって帰って来て、暖かいご飯にかけて、醤油をかけて食ったんだけど、食えるもんじゃないわけさ、あのままじゃね。」

「ただ、木の中身はセルロースなので、食えないはずはないし、どうしたらいいかということでいろいろ工夫して・・・」

 

何とか食べられるようにしようと「おが屑」を煮沸した後、すり潰してパウダー状にしました。

この製造工程は特許を取得しています。

そして、こだわりは、あくまでも食べるためには“自然乾燥”した木とだといいます。

時間はかかりますが、人工的に乾燥させたものと違って、香りは損なわれないといいます。

志村さんは次のようにおっしゃっています。

「今まで廃材として捨てられちゃって、邪魔者扱いされたような木がしゃれたパウンドケーキとかになったら木もびっくりするでしょうね。」

「木が食うか何かの役に立ったら非常にいいことで・・・」

 

杉の木のケーキということですが、花粉症に何らかの悪影響を及ぼすことは全くないといいます。

 

さて、林業従事者は1966年あたりからぐんと減ってきています。

こうした状況について、番組コメンテーターでクレディ・スイス証券の市川 眞一さんは次のようにおっしゃっています。

「こうした弊害が出ているのは、単位面積当たりの木の量が1960年代に比べると今3倍くらいになっているんですね。」

「これは森林管理がうまく出来てなくて、間伐が進んでいないということなんですね。」

「そういう意味では人(林業従事者)が減った影響が出ているんだと思います。」

「ただ、今ようやく良い兆しが出て来ているのは、国際的に木の格が上がっているので、日本の木材にもチャンスが出て来ておりまして、自給率も2002年を底にして上がって来ているんですね。」

「そういう意味では、いろんな用途が広がっていくことによって林業が復活していくといいなと思いますね。」

「(森林が管理されれば間伐材も出る、それを経済的にどう扱うかということではという指摘に対して、)そうですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今生きている私たちは、大変な種類の料理を味わうことが出来ます。

でもその一つひとつの食材は名の知れない人たちの発見によるものなのです。

中には、その毒により命を落とした人もいるのです。

今回ご紹介した“食べられる木”もこうした延長線上の一つと言えます。

 

また、“食べられる木”は単なる食材としてだけでなく、森林から出る間伐材を活用する取り組みにもなります。

ですから、今後とも“食べられる木”の食材としての種類を増やし、しかもそれぞれが他の食材にはない味わいがあれば、林業の活性化に大いに貢献出来ると思います。

ですから、志村さんの発見を契機に、他の方々による更なる“食べられる木”の新たな食材としての発見が続くことを願います。


 
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