2019年07月27日
プロジェクト管理と日常生活 No.599 『いじめ問題対策の最終手段は”探偵”!?』

これまで学校のいじめについてはプロジェクト管理と日常生活 No.299 『「あってはならぬこと」発言の裏には・・・』などで何度となくお伝えしてきました。

そうした中、5月16日(木)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でいじめ問題対策の最終手段として“探偵”について取り上げていたのでご紹介します。

 

子どもへのいじめによる不幸な事件が相次ぐ中、本当に何が起きたのか、真相や実態が見えにくくなっています。

そんな中、今意外なところに相談が殺到しています。

それは探偵です。

東京・世田谷区にある探偵事務所、T.I.U総合探偵社には20人ほどの探偵が不倫やストーカー、ブラック企業など、社会のあらゆるいざこざを調査しています。

代表の阿部 泰尚さん(42歳)、通称“いじめ探偵”は15年間で600件を超えるいじめの相談に向き合ってきました。

 

いじめに遭っているのに先生や学校が助けてくれない、行き場を失くした相談が最後にたどり着く駆け込み寺になっています。

阿部さんは次のようにおっしゃっています。

「僕ら(探偵)に頼らないとどうにも出来ないと。」

「そんなところまで来ちゃっているんですよ。」

 

阿部さんは探偵独特の方法でいじめと向き合います。

相談を受けて飛んだのは山口県です。

高等専門学校に通うA君は、複数の同級生から突然殴られたり、眉毛を無理やり剃られるなどのいじめに遭いました。

追い詰められたA君は睡眠薬を大量に服用し、自殺を図りました。

学校は第三者委員会を立ち上げ、調査を開始、中間報告ではSNSでの悪口や暴言などは認められたものの、自殺未遂につながった深刻ないじめは認めないまま調査が終わりそうになっているといいます。

 

阿部さんは、保護者を通じて学校に事実確認をしようとしましたが、間に立った弁護士から取り合ってもらえませんでした。

答えないなら実力行使、得た情報を写真や学校名とともにネット上で拡散、世間の目を集めて問題と向き合わざるを得ない状況を作っていきます。

更に学校周辺に張り込み、自らの存在を敢えてアピール、学校関係者にプレッシャーをかけます。

世論に訴えるため、マスコミも活用、地元のテレビ局と新聞社を集め、問題と向き合おうとしない学校の姿勢を糾弾しました。

この会見の場で阿部さんは次のようにおっしゃっています。

「ここまで異常な自治を行っている学校はないです。」

 

阿部さんの会見後、学校といじめの問題を地元のテレビ局が報じました。

そして遂に調査の継続が決定したのです。

こうした状況について、阿部さんは次のようにおっしゃっています。

「ふたを閉めたい人たちばっかりなので、それが衆人環視のもとでふたが閉められない状況をまず作れれば、一つ目的が達成出来たということですね。」

 

阿部さんはいじめの問題を動かすため、法律を犯さないギリギリのラインで活動しているということです。

なお、いじめ探偵、阿部さんの活動に1年間密着し、いじめの現実を見つめたNHKスペシャル「いじめと探偵」が5月19日(日)に夜9時から放送されます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

No.3876 ちょっと一休み その623 『医師、日野原 重明さんの残された貴重な言葉 その3 命とは何か!』でもお伝えしたように、人の命は尊いものです。

しかし、相変わらず無くならない学校でのいじめ、そして学校側の不十分な対応による被害者の自殺が後を絶ちません。

 

今回のケースでも、複数の同級生から突然殴られたり、眉毛を無理やり剃られるなどのいじめに遭ったという事実があったのに、学校が立ち上げた第三者委員会がなぜ自殺未遂につながった深刻ないじめを認めないまま調査を終わらせようとしたのか甚だ疑問です。

番組では、度重なるいじめを受けたA君が担任に相談したのか、そして担任はどのように対応したのかといった、第三者委員会を立ち上げる前段階については取り上げていませんでしたが、常識的に考えれば、何度かA君やその家族の方が学校に相談していたと思われます。

それでも納得のいく対応がなされなかったからこそ最終手段として“探偵”にお願いすることになってしまったのです。

T.I.U総合探偵社だけで15年間で600件を超えるいじめの相談に向き合ってきたということは毎年平均40件以上の相談が寄せられていたということになります。

この事実は、それだけ被害者側から見ると学校側のいじめへの対応が不十分なケースが多いということを物語っています。

 

さて、プロジェクト管理に限らず、何か問題が起きた場合の対応策の基本プロセスは、現状把握、問題点の分析、対応策の検討、再発防止策、コンティンジェンシープランの5つです。

 

今回のケースでは、“探偵”の出番が被害者本人が自殺した後でしたのでコンティンジェンシープランと位置付けられ、最善策とは言えません。

もし被害者本人が自殺に追い込まれる前に“探偵”への依頼がなされていれば、A君の命は救われた可能性が高いからです。

 

では現実問題として、いじめ対応策の観点から見て、学校側の体制に問題はないのでしょうか。

アイデアよもやま話 No.4287 教員にも必要な「働き方改革」!でもお伝えしたように、教師はただでさえ多忙の状態が多いのです。

ですから、深刻ないじめに真摯に対応したくてもそれほど時間を割けないというのが現実だと思います。

更に、教師は学科を教えるプロではあってもいじめ対策のプロではありません。

ですから、根本的ないじめ対応策として、学校側には以下のような体制が必要だと思います。

・教師に対する一般的ないじめ対応策の研修

・担任教師にいじめへの対応を一切任せるのではなく、学校全体として対応する体制を構築すること

・学校内でのいじめ対応策がうまく行かない場合にアドバイスを受けられるように、教育委員会単位などでいじめ対応策のプロのカウンセラーを設置すること

 

一方で、学校側から生徒に対して、いじめはよくないこと、そしていじめを受けた場合、あるいは自分の周りでいじめが起きている場合は速やかに担任教師に伝えることを常日頃徹底させることが必要です。

同時に、保護者に対しても、自分の子どもにいじめの事実が認められた場合には速やかに担任教師に伝えることを依頼しておくことが必要です。

 

このように“いじめ撲滅”に向けて生徒、保護者、学校、教育委員会という枠組みの中でそれぞれがどのような対応をすればいじめを減らすことが出来るのか、あるいはいじめが起きた場合に速やかに適切な対応を取れるのかを追求し続けることが必要だと思うのです。

そして、自分の子どもがいじめに遭って、どうしても学校側の対応に納得のいかない場合の最終手段として、今回ご紹介したように“探偵”への依頼を検討すべきだと思います。

くれぐれも自分の子どもがいじめに遭って自殺にまで追い込まれる前に最善を尽くして欲しいと思います。

子どもが自殺した後で、その原因や経緯を調査しても、子どもが生き返ることはないのです。

また、被害者の子どもが自殺する前にいじめを食い止められれば、加害者の子どもがその後の人生を罪の意識で苛まれることも救うことが出来るのです。


 
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