2019年07月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.600 『バイトテロ対策』

3月13日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でバイトテロについて取り上げていました。

そこでプロジェクト管理の観点からご紹介します。

 

定食チェーンの大戸屋の店内で撮影された動画ですが、マスクで顔を隠したアルバイト従業員がズボンを脱いでお盆のようなものを使ってふざけている様子が映されています。

この動画の発覚を受け、大戸屋は3月12日、全国の店舗を一斉休業して研修を行い、3月13日に営業を再開しました。

休業による損害はおよそ1億円にも上るということです。

バイトテロとも呼ばれるこの問題に企業はどう向き合えばよいのでしょうか。

 

営業を再開した大戸屋、ランチタイムには普段の賑わいが戻っていました。

3月12日の一斉休業で異例とも言える全国一斉での研修、どんな改善策を打ったのでしょうか。

従業員たちに配られた書類を見てみると、以下の文面があります。

 

「食を通じて社会に貢献する」という私たちの使命と存在意義を見つめ直す日としたいと思います。

 

食を扱ううえでの基本的な心得をゼロから学び直すなど、研修は合計4時間に及びました。

大戸屋ホールディングス 経営企画部の高田 知典部長は次のようにおっしゃっています。

「基本に返って誠実に徹底してやっていくということが一番大事でして、特効薬はないと思いますので、食を扱った商売の本質を教育出来るように努めていきたいと考えております。」

 

今年に入ってから相次ぐ不適切動画、横浜のセブンイレブンでは男性アルバイト従業員がおでんのシラタキを口いっぱいに入れ、すぐさま手に吐き出す映像を投稿、一方大手飲食チェーンのバーミアンでは厨房で調理をする男性が中華鍋の炎でたばこに火を点けました。

大手回転寿司チェーン、くら寿司では魚の切り身をごみ箱に入れた後、再びまな板に戻していました。

各社が厳しい対応を取る中、くら寿司の運営会社はアルバイト2人を解雇したうえで法的措置を取ると発表しました。

多発する不適切行動に対し、当社が一石を投じるとしています。

 

こうした中、活況に沸くサービスが登場しています。

セキュリテイ対策を専門に扱う株式会社エルテス(東京都千代田区)では8年前からインターネットでの炎上の予兆を事前に検知するサービスを提供しています。

今回の一連の騒動を受け、問い合わせが通常の2倍に増えました。

菅原 貴弘社長は次のようにおっしゃっています。

「既に今回の騒動で炎上してしまったとか、同業他社で炎上したのを見て対策をしたいという問い合わせが増えています。」

 

エルテスではAI(人工知能)を使ったシステムがSNSや掲示板などから顧客企業に関する書き込みを抽出します。

それらをネガティブ、ポジティブ、ニュートラルの3種類に分類、危険度の高いネガティブな書き込みは専門スタッフが更に分析をし、炎上につながる前に企業に知らせます。

例えば過去に炎上の起きたことのある飲食チェーンの分析画面では、普段は数百件の投稿件数がたった一晩で1万8000件に上昇、内訳を示す円グラフはネガティブを示す赤一色になっています。

 

実は近年の炎上にはある特徴があります。

菅原社長は次のようにおっしゃっています。

「今回はインスタグラムとかTikTokとか動画系のメディアが発信源なんですけども、そういった動画が消える機能があるんですけども、それが(消える前に)保存されていて拡散されているという・・・」

 

実は今回の大戸屋のケースでは、問題が発覚したのは2月16日ですが、動画が撮影されたのは昨年夏〜年末にかけてでした。

従業員は動画を撮影後、インスタグラムのストーリーというシステムに投稿、ストーリーは投稿後24時間で自動的に消去される仕組みのため投稿した動画はインスタグラムからは消えました。

しかし自動消去されるまでの24時間のうちに第三者が動画を保存、今年2月になってツイッターに再び投稿されました。

つまり一度でもインターネット上に出回った動画は完全に消えることはないため、リスクになり続けるというのです。

菅原社長は次のようにおっしゃっています。

「まずは(SNSの)ルール設定、(緊急時の)体制構築、そして常時モニタリング、この3つをやられた方がいいんじゃないかなと思います。」

 

実は過去にも不適切動画の投稿が頻発したことがありました。

しかし企業が対策を取り沈静化させても、今回のように繰り返されるのです。

労働問題に詳しい専門家によると、根本的な原因の一つにアルバイト従業員が職場に満足していないことがあるといいます。

NPO法人ほっとプラスの藤田孝典代表理事は次のようにおっしゃっています。

「今はアルバイト、パート、非正規の人たちが中心で業務を回しているということが一般化していますので、だとすると今の処遇なり待遇が業務内容に見合わないのじゃないかなと思います。」

「自分が頑張ってやりがいを持ったり、働いていることが正当に評価されるシステムがあればベストだと思いますね。」

 

では企業はアルバイト従業員とどう向き合えばいいのでしょうか。

コーヒーチェーンのタリーズでは、アルバイト向けに接客やコーヒー作りの腕を競う「バリスタコンテスト」を実施、赤松 笑さんは3年前全国のファイナリストに選ばれました。

赤松さんは次のようにおっしゃっています。

「コーヒーのプロだという目で見られてしまうので、下手なことは出来ない。」

「レベルアップがしていける会社なのでとてもやりがいを感じております。」

 

アルバイトの権限拡大も進めてきました。

斎藤さんは社員が行ってきた商品や材料の発注を任されています。

また大学3年生の北島 弓月さんはコーヒーセミナーの講師を任されたことがあります。

北島さんは次のようにおっしゃっています。

「社員から認められたり、お客様からも一番美味しいとか言っていただけることが励みになってもっと頑張ろう、もっと頑張ろうと・・・」

 

アルバイトに社員と同様の仕事を任せて責任感や職場への愛着を高めることが彼らの不適切な行動を結果的に防ぐという構図になっています。

タリーズコーヒージャパンの加藤 大輔さんは次のようにおっしゃっています。

「あなたじゃないと出来ない仕事だよと伝えることによって、全員がそのような意識を持って臨んでくれているのではないかなと思っています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず相次ぐ不適切動画、バイトテロ問題の発生原因を以下にまとめてみました。

・仕事への不満やストレスの発散

  正社員に比べて低い給与やその他の処遇

  与えられた仕事に対する責任に比べて、低い給与

  きつ過ぎる仕事

・他の不適切動画への対抗意識

・自己顕示欲

・動画投稿サイトにおける再生回数に応じた収入

 

中でも仕事への不満やストレスの発散が最も大きいと思われます。

なぜならば、仕事には不満はないけども、仕事以外の不満やストレスがあるということであれば、不適切動画以外の方法で発散させるケースが多いと思うからです。

 

次にバイトテロの今後のリスク対応策を以下にまとめてみました。

・帰属意識の向上や不適切動画防止などを目的とした新人研修や定期的な従業員研修

・「働き方改革」の狙いでもある、非正規社員にも正社員と同等の処遇を与えること

・非正規社員からも仕事における不満の声を取り上げる制度を構築し、その声に真摯に対応すること

 

リスク対応策を実施しても、バイトテロの発生が無くなるという保証はありません。

そこでバイトテロ起きてしまった場合に備えて以下のようなコンティンジェンシープランが必要になります。

・エルテスが提供しているようなインターネットでの炎上の予兆を事前に検知するサービスを受けて、被害を最小限に食い止める対策を講じること

・くら寿司の運営会社のように、バイトテロを起こした従業員は解雇したうえで法的措置を取ること

 

いずれにしても、バイトテロによるインターネットでの炎上は、その企業にイメージダウンや売上減といった大きな被害をもたらします。

同時にバイトテロを行った従業員が法的措置を取られた場合、その後の人生に大変なマイナスを及ぼします。

そればかりでなく、今後ともファミレスなどの飲食店でバイトテロが頻発するようなことがあれば、多くのお客も安心して料理を食べることが出来なくなってしまいます。

ですから、バイトテロは無くさなくてはならないのです。

そのためには、やはり実効性のある「働き方改革」が必須なのです。


 
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