2019年06月23日
No.4362 ちょっと一休み その674 『三重県松阪駅前の商店街でのトラブルに見る法律の運用の考え方』

4月14日(金)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で三重県松阪駅前の商店街でのトラブルについて取り上げていたのでご紹介します。

 

三重県の松阪駅前の商店街では4月14日、15日の2日間、半年に1度のバーゲンセールを行うのですが、今危機的状況に陥っているといいます。

書き入れ時を前に商店街が恐れているのが、歩道に出ている看板やのぼり旗は法律違反だと、商店街中を注意して回る、自称89歳の男性、人呼んで“正論おじいさん”です。

この男性は次のようにおっしゃっています。

「法律を守らなきゃ終わるよ、」

「日本は法治国家なんだから。」

 

なぜこの男性はトラブルになってまでも頑なに注意を続けるのでしょうか。

4月13日、番組のカメラの前で次のようにおっしゃっています。

「ここは点字ブロックだから、絶対に(モノを)置いちゃいけない。」

「(自分が片付けた後を見て、)これ見ると分かるでしょ。」

「キレイでしょ、ビューティフルですよ。」

 

「(境界線への独特の拘りについて、)普通の家だったら(私有地を)越境なんかしちゃいけないよ。」

「(誰かが)所有権を持ったら、そこに入っちゃいけない。」

「だから、今の北方四島だってそうでしょ。」

「日本が入っちゃったら、入っちゃいけないって言われちゃうじゃない、ソ連に。」

 

「(看板を壊すなどの自身の行動について、)私は思うんだけど、ゴミとしてやればいい。」

「(道に)あったらゴミだ、旗もゴミ、置いてあるのはみんなゴミ。」

 

「(自身が横断歩道でない所を横切っている動画について、)こっちの点からこっちの点を通ったって、別に悪いことはない。」

「それなら柵を作りなさいと。」

「(柵が)なければ、一向に(道路を横切っても)差し支えない、通ったって。」

 

更に都合のいい持論を展開します。

「(自分は)日本の最高官庁の役人だった。」

「相談しに来るのは、みんな弁護士ですよ。」

 

かつては官僚だったと語る男性、弁護士の相談を受けるなど、“法のプロフェッショナル”だったといいます。

商店街の人々とはこのまま折り合いをつけることが出来ないのでしょうか。

当然商店街の人々は話し合いでの解決を望んでいます。

商店街のある男性は次のようにおっしゃっています。

「何でこんなに市民同士がけんかしないとならんのかなといつも思いますね。」

 

また、別の女性は次のようにおっしゃっています。

「小さな町だから仲良くしたらいいのにね。」

 

「落ち着いて1回お話される機会があったら、(話し合いに)出てもらえるかと言ったら、出てもいいって。」

 

当の本人は次のようにおっしゃっています。

「そうよ、私だって逃げないもん。」

 

男性も話し合いには前向きです。

近々商店街の人々と解決に向けた話し合いの場が持たれる見込みだといいます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

この男性の言い分は、全体としては屁理屈の連発だと思います。

ですが、1つだけあらためて法律のあり方を考えるきっかけを与えてくれています。

それは、商店街などでよく見かける、歩道に出ている看板やのぼり旗の扱いです。

確かに歩道に出ている看板などは、歩行者、中でも目の不自由な方にとってはとても迷惑になります。

そして、もし歩道に出ている看板などが原因で目の不自由な方や高齢者が転倒して怪我をされるようなことがあれば、それをきっかけにその周辺では一時的に看板などの置き方に注意を払うようにはなると思います。

また、歩道にゴミ袋が散らかっている状況は街の景観を損ないます。

しかし、一方で商店街の看板やぼり旗は街の賑わいを感じさせますし、自分の行きたいお店が遠くからでも分かり易くなります。

 

なお、この男性の援護をするわけではありませんが、ご存知のようにシンガポールではこうした街の景観についてとても厳しい罰金制度があります。(詳細はこちらを参照)

例えば、以下のようなものがあります。

MRT(電車)内での禁止事項(飲食など)

  最高1000ドル

•鳥へのエサやり

最高1000ドル

•ゴミのポイ捨て

初犯は最高1000ドル、再犯は最高2000ドル+清掃作業など

•喫煙場所以外での喫煙

  最高1000ドル

•ツバや痰を吐いた場合

  最高1000ドル

 

なぜシンガポールには罰金制度が多いのかですが、シンガポールは、英語・中国語・マレー語・タミル語と、公用語が4つも設定されている多民族国家です。

これらの多くの民族を統制するために多くの罰金制度が敷かれているといいます。

旅行者ももちろんルールを守らなければ罰金を払わなければなりません。

逆に言うと、罰金制度があるおかげで、シンガポールの街並みが綺麗に保たれているとも言えます。

 

さて、法律に関しては、こうした問題は他にもいろいろあります。

例えば、クルマの制限速度についてですが、以前あるテレビ番組で若い女性警察官が「1キロでも制限速度を超えていれば、スピード違反として取り締まります」とおっしゃっていたのをいまだに覚えています。

もし、この女性警察官の考えているように厳密に取り締まったら、ほとんど全てのドライバーはクルマに乗るたびにスピード違反で検挙されてしまいます。

そこで、一般的にスピード違反を取り締まる警察官は制限速度が時速60キロの道路を65キロ程度で走行しても違反として検挙することはありません。

せいぜい時速80キロ程度の走行での検挙となります。

もし、制限速度が時速60キロの道路を時速65キロ程度で走行していてスピード違反で検挙されるようなことがあれば、社会的に大変な議論を呼んでしまうと思われます。

 

ということで、街中の看板にしても、クルマの制限速度にしても、厳密に取り締まったらとてもギスギスした息苦しい社会になってしまいます。

しかし、だからと言って放置していたら街の景観を壊してしまったり、事故が発生し易くなってしまいます。

こうしたことから、法律の実運用にあたっては、単に厳密に法律に照らして取り締まるのではなく、社会通念、あるいは常識に基づいての運用が求められます。

例えば、商店街の歩道での看板設置については、商店街の組合などが自主的に看板の置き場所が歩行者の迷惑にならないかなどをチェックして、設置するようにすれば、少なくとも一般の方は不便を感じず、事故の発生にもつながらないと思います。

 

またクルマのスピード違反についてもごくたまにですが、明らかに時速150キロ以上は出しているのではないかというクルマを高速道路で見かけることがあまりますが、間違いなく事故のもとになります。

では、こうしたクルマをどのように無くすかですが、ネット検索していたら、イギリスでは

スピード違反は取り締りカメラで撮影後、罰金が科せられるといいます。(詳細はこちらを参照)

これも時速10キロ程度のオーバーで取り締まったら、ほとんど全てのクルマが検挙されてしまいます。

ですから、恐らく時速30キロとか40キロオーバー以上のクルマが取り締まり対象だと思われます。

 

いずれにしても、将来監視カメラが普及して、ほとんど国内全ての地域が監視されるようになれば、歩道に飛び出した看板や高速道路を猛スピードで走るクルマ、あるいは危険走行を繰り返すクルマを識別出来るようになります。

そうした看板やクルマについて注意を促すようなメッセージを該当するお店やクルマに発信するようになれば、それだけでも事故防止の対策としてとても有効だと思います。


 
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